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第三五話 隣村 二

 サマンダがオローナの横に歩み寄って優しく話し掛ける。


「オローナさん、私はサマンダ。軍医をしている者です。この寒さの厳しい季節にあの小屋の中で何日も過ごした、と聞きました。健康状態の確認のため、診察をさせていただけますか?」

「ええ、お願いします」


 オローナは少しだけサマンダを不審の目で見たものの、すぐに診察を了承した。


 オローナは一見して病人だ。鼻を(すす)り、痰が絡んだ咳をしている。


 サマンダもラシードも軍医なのだから、持って回った言い方は不要だ。優しい応対さえ心がけていれば、比較的病人からの信頼は得やすい。




 男たちを家の外へ出し、私とサマンダだけでオローナの診察に当たる。服をはだけたオローナの肌を見て、私は一瞬息を呑む。オローナの胸、腹、二の腕、肌という肌、至る所にびっしりと赤いブツブツが浮かび上がっていた。発赤疹が生じている範囲だけでなく、赤くなっていない場所も皮膚が不自然にボコボコと隆起している。


「痒くはないですか?」


 私と違ってサマンダはオローナの肌を見ても動じずに診察を続ける。


「いえ、全然。こんな感じでたまに肌荒れができますけれど、すぐに治るんですよ」


 こんなひどい皮膚症状をオローナは『肌荒れ』程度にしか認識していない。


 サマンダはオローナに服を着直させると、今度は口の中を覗き込む。変性魔法マジックライトの光で私はオローナの口の中を照らす。


 口腔粘膜は広く(ただ)れ、ところどころ深く掘れた潰瘍がある。皮膚症状も粘膜症状もひどい有様だ。これは明らかに病気だ。少しばかりの不摂生でこうはならない。軍医ではない私でも、そう断言できる。


 身体所見を取り終えたサマンダが軍医としての意見をオローナに述べる。


「オローナさん、あなたはすぐに治療が必要です。しかし、ここでは薬が準備できません。私たちと一緒にバダテンに行きましょう」

「いやです。私は“グライアス”を食べるためにここに来たのです。目的が達成できるまでは、この村を離れるつもりはありません」


 命令にも近い軍医の指導にオローナは耳を貸さない。理解の悪いオローナにサマンダはその後も色々と交渉を行うものの、オローナは意見を変える様子がない。


 これは無理にでも連れて行くしかないか、と実力行使が脳裏にちらつき始めたところで、屋外から間の抜けた呑気な歌声が聞こえてきた。


 余所者(よそもの)であるオローナが村内で揉め事を起こしているのに、この歌声の腑抜け具合、どう考えても声の主は村人ではない。おそらく、()()鹿()()が戻ってきたんだ。




「中尉、私が行ってきますね」


 サマンダにオローナの見張りを任せ、私は家の外に出た。


 そこには、アリステル、ラシード、フラン、そしてその三人に囲まれるひとりの釣り人風憲兵がいた。


「ど、どうしたんですか、みなさん怖い顔をして。軍人のご様子ですけれど、どこのどちら様か、フラン、説明してくれない?」


 事情を呑み込めない男性釣り人風憲兵がフランに助けを求める。


 こいつは、そんなことも知らないのか。可哀想なフラン……。


「その前に、あなたが引っ提げているその魚。それが幻の魚と言われるグライアスなのでしょうか?」

「そう、と言えばそうなんだけど、でも違うんですよ。何日も粘ってやっと釣れたのがこれだけど、これはまだ小さいんです。もっとサイズが大きくないとグライアスとは呼びません。このサイズだと“イアス”ですね。グライアスのなかでも大きいやつは人の背丈を超えるんですよ。あっ、分かった。皆さんもグライアスを釣りに来たんでしょう? 私、実はいいポイントに心当たりがあるんです。でも、魔物が巣食っているせいで、そのポイントに行けないんです。一緒に魔物を倒しませんか?」


 男は私が質問した以上に丁寧に犯行を自供する。


 ……駄目だ。こいつは釣り人風憲兵どころではない。良く言って、憲兵風釣り人だ。本業は釣り人、憲兵が副業のこの税金泥棒は憲兵業務を部下のフランに全て押し付けて、ひとり楽しく幻の魚釣りに勤しんでいたのだ。だが、その職務怠慢が今回は功を奏したか。


「そのグライアスは私たちに提供してください。オローナをバダテンに連れて行くための交渉材料にします」

「だーかーらー、これはグライアスではなくてイアスですって。それに、どっちにしてもダメですよ。これはやっと釣り上げたんですからね。少しだけなら切り身を分けてあげてもいいですけれど」

「では、職務放棄と見做(みな)してよろしいのですね」

「えっ? どどど、どういうことでしょう……?」


 憲兵風釣り人は周回遅れで私の本気度を理解し、やっと憲兵の顔に戻って私たちの話に耳を傾け始めた。




    ◇◇    




 村に戻ってきた釣り人はヨナターン・ポヒラー伍長、フランと共にバダテンから派遣された憲兵だ。フランから見れば上司にあたる。


 ヨナはバダテンに到着すると、事情聴取もソコソコに揉め事の中心人物であるオローナを檻に閉じ込めた。拘束、監禁根拠は特に無く、敢えて言うなら、『そうしたほうが楽だったから』だそうだ。


 そして、後の憲兵業務全てをフランに託し、幻の魚、グライアスを釣るため何日も村のほとりを流れる川へ通い詰めていた。どれくらい釣りに本気で入れ込んでいたかというと、フランがバダテンの憲兵団に応援を要請し、その結果として私たちアリステル班がここに派遣されたことすら知らなかったほどだ。呆れるほどの熱中ぶりである。


 ヨナは川辺で何度もそれらしき魚影を見つけ、垂らした釣り糸にはアタリも来ていたが、なかなか釣れず、今日になってやっと釣り上げることができた。




 さて、これは職務放棄だろうか? それはヨナのこれからの決断次第だ。


 すべてはオローナをバダテンに連れて行く餌にするためだった。諸方面の安全を確保したうえで、事案の中心人物の任意同行を促す交渉材料にするため、グライアスを釣り上げた。ヨナは怠惰な憲兵風釣り人などではない。平和に事案を解決に導くべく、実直に憲兵業務に従事していたのだ。




「――そういうことにしたほうが世界は平和だと思いますよ、ポヒラー伍長」

「はい……私は実直な公僕です」


 ヨナはしょんぼりとしながら私の“解釈”に同意した。


「オローナひとりでは食べきれない大きな魚です。少しだけなら、実直な伍長に切り身を分けてあげてもいいですけれど」


 私がそう言ったら、ヨナは少しだけ笑顔を取り戻した。全く、真面目に仕事をしてほしいものだ。


 ああ、不良憲兵のせいでラシードとサマンダの卒業試験に手出し口出ししてしまった。核心には触れずに伍長からイアスを徴発しただけだから、ギリギリセーフだろう、と自分で自分を納得させる。




 ヨナとイアスの帰還により状況には少し変化が生じた。これら新情報を卒業試験受験者に開示するため、下手なことを言わないようにフランに言い含めてから、フランをオローナの見張りに行かせ、屋内でオローナを見張っていたサマンダを私たちのところへ連れて来る。


「中尉、グライアスに近い魚、幼魚のイアスが手に入りました。オローナはすぐにでもバダテンへ連れて行けるかもしれません」

「ありがとー、ラムサス」

「サマンダ、診察の結果は?」


 ラシードがサマンダにオローナの病状を尋ねる。


「あれ、“バラ毒”ですねー。第三期までいっちゃってるー。性器の診察はしてないですけど、他にも性病持ってるかもー。後は普通の冬季気管支肺炎を併発している感じかなー」

「なら、やっぱりヴィポーストじゃなくてヒトだな」


 ヒトという種族が罹患する病気とドレーナやヴィポースト等のヒト型吸血種が罹患する病気は異なる。どちらにも共通にみられる病はあるが、バラ毒のような特徴的な病気を見るだけで、少なくとも吸血種でない、と軍医たちは簡単に判別できる。


「オローナは嘘を言っているんじゃなくて、妄想に取りつかれているんですねー。自分が誇り高いヴィポーストだ、っていう妄想にさー。多分名前も出身も妄想の産物ですよ。バラ毒の精神症状なのか、それとも元々そういう精神疾患を抱えてるのかなー?」

「三期だと、()バラ療法に要する期間は内服数か月だ。薬の碧素(へきそ)はバダテンに戻って手に入れるとして、村人をどこまで治療するかだな」

「潜伏期間があるから現時点で村人のバラ毒を診断するのは難しいですねー。でも、オローナには今第三期の症状が出てますから、この村で彼女と肉体関係を持った人はいないんじゃないかと思いますー。噛まれたランドンと、その妻だけ薬を飲んでもらえばいいかとー。他の村人さんたちは、気管支肺炎の薬だけ、ここでちゃちゃっと調合して配っておきましょうー。お金の問題があるから、ここの村に来ている修道士の宗派を調べておかないと。東天教かなー、紅炎教かなー?」




 ラシードとサマンダは試験官のアリステルに確認を取ってから、村人たちの診察に回り始めた。


 冬だというのに大人たちは屋外作業に出払っている。家屋の周りにいるのは、まだ仕事はできないが遊びまわるくらいはできる子供と、家の中に籠もりがちの老人くらいだ。


 ある意味でこれは好都合だ。村民全員に(こぞ)って集合されると、今度は診察する軍医が足りない。日中は子供と老人の診察を行い、夜になってから再び一軒一軒を訪れて大人たちの診察をした。


 サマンダの予測どおり、オローナと性接触を持った村人もバラ毒の症状を呈している村人もおらず、成人小児ともに訴えとして挙がるのはありふれた気管支肺炎の症状ばかりだった。




 村内に流行している病を確定させた後、村人から提供された薬草を使って気管支肺炎用の飲み薬を作り、有症者に配布する。


 ネチャス夫妻には、後日自分たちでバダテンを訪れてバラ毒の治療を受けるように説明した。たまに釣り上げられるグライアスの副収入で金銭的には困窮していないようだったので、経済的事情で治療が受けられない、ということはなさそうだ。


 ラシードたちが行ったのはあくまでも説明であり、強制力を伴う命令ではないため、夫妻が治療を受けに行かない可能性は残る。しかし、軍医二人は治療を行わずにバラ毒が三期、四期と進行した際にどうなるかをきちんと説明した。正常な皮膚の喪失、眼の障害、様々な神経麻痺、痙攣、太い血管の変形、最後に待つのは廃人化と死だ。バラ毒という病気の深刻さを理解してなお夫妻が治療を受けずに病気を発症したならば、それは夫妻の責任だ。


 気管支肺炎の薬の配布、バラ毒治療の必要性の説明という形で病気への対応に一区切りつけた私たちは、イアスを交渉材料にしてオローナをバダテンへ連れて行こうと試みた。しかし、オローナは手強かった。


 オローナは私たちが提示するイアスを見て鼻で笑うと、気障(きざ)ったらしく舌打ちして人差し指を左右に振る。


「その大きさだと、グライアスとは呼べません」


 妄想下にありながら、なぜかそういうところだけは見識がしっかりしている。


 伝染病に罹患していることもあり、オローナが危険なのは間違いないとしても、檻に閉じ込めたり、無理矢理別の街まで連行したりするほどのものか、と言われると、そこまでの犯罪には手を染めていない。


 この場所で実際に噛み付いたのは口頭で契約を完了したランドンだけであり、他の人間には無断で噛み付いていないからだ。


 できればオローナを納得させ、穏便にバダテンへ連れていきたい。


 ラシードたちはそんな甘い目論見を立てていた。試験官のアリステルはラシードたちが述べる方針を聞いても何も言わない。




 その日はそのまま村の民家にお邪魔して宿泊することになった。もはや交渉材料にはなりえないグライアス未満の魚であるイアスを、自分たちの食材として調理する。村人たちはそれなりにイアスを食べる機会がある、ということで、アリステル班とフラン、ヨナの六人で分け合う。


 食卓に並んだ塩焼きのイアスからは少し川魚っぽさのある匂いの湯気が立ち上っている。温かいうちにイアスの白い身を口の中へ放り込む。


 口の中に入ったイアスは全然臭くない。ただの魚の風味があるだけだ。いや、それどころか……。


「すっげー美味ぇ!!」


 横で同時に食べ始めたラシードがイアスの味に感動して叫ぶ。近所迷惑な人だ。


 ラシードはポーラの手料理にもこれだけはっきりと賛辞を呈したことがない。それだけラシードはイアスに深く感動している。


 かくいう私も驚きが隠せない。イアスはメチャクチャ美味しい。調理役はヨナが自主的に買ってでたため、捌き方、焼き方、味付けは全てヨナ任せであり、どのように調理したか目をほじって見ていたわけではないけれど、確か身の両面に塩をまぶしてテキトーに焼いただけのはずだ。特別な調理、加工は何もしていない。


 塩を振って焼いただけの川魚がここまで美味しくなるのか?


 イアスの身は舌で軽く圧力を加えるだけで柔らかくホクホクとほぐれ、濃縮された旨味を惜しげもなく口一杯に広げていく。旨味が物凄く強いのに脂っこさなど全くなく、ほんの少しの苦味が爽やかな香りと一緒に鼻の奥へと抜けていく。


「あー、美味しいけれど、イアスだもんなあ。やっぱり食べるならグライアスだよ」


 アリステル班がイアスの味に感動している横で、釣り人風憲兵は玄人っぽく辛口評価を述べている。


「グライアスはこれよりも美味しいんですかー?」

「当然さ。同重量に換算しても、グライアスはイアスの数倍の値がつく。市場はグライアスの価値をそう評価しているし、希少性だけでなく、純粋に味だけ見ても私も市場評価に同意する」


 批評するヨナは喋り方がさっきと違う。()()は人間に口調まで変えさせてしまうらしい。こいつは筋金入りの憲兵風釣り人だ。


「そうまで言われると、グライアスを食べてみたくなるな……」


 ラシードはヨナの語りを聞き、イアスの身をじっと見ながら、まだ見ぬグライアスの味に思いを馳せている。


 今ばかりはラシードの単純さを馬鹿にできない。私もかなり心揺さぶられてしまっている。もし、ラシードが欲望に忠実な()()をしだしたら、私もそれに乗っかりたい、という気持ちがある。ほんの少しだけ……。




 私とラシード、そしてサマンダの思惑が交錯する。無言のせめぎ合いから、ポーたんは何も“メッセージ”を拾ってこないけれど、私には分かる。多分私たちは今、全員同じことを考えている。


 欲望を口に出す“提案者”になる可能性が最も高いのはラシードだ。“提案者”になる可能性はラシードよりは低いけれど、喋りだしたら上手な持っていき方をしそうなのがサマンダだ。私が“提案者”になることはない。私はこういうことに関しては不弁舌だし、何よりも私の立場が軽挙妄動を許さない。私には立場があるのだ。冷静沈着、クールな情報魔法使い、という築き上げてきた立場が……。




 班員三人の鼎立(ていりつ)は、静観を決め込むと思われていたアリステルの号令であっさりと崩れた。


「よし、明日一日はグライアス釣りに費やすことにしよう」

「えええっ!? いいんですか班長?」


 ラシードは精一杯真面目な顔を作ってアリステルに聞き返すが、頬が目一杯緩んでいるせいでとんでもなく気持ち悪い顔になっている。


「一日を費やすことでオローナに任意同行してもらえるなら、時間の浪費にはあたらない。私はそう思うよ。それに、皆、グライアスを食べてみたいんじゃない? 私は食べてみたいな」


 そう言ってアリステルは優しく笑う。


 ポーたんがアリステルの言葉に反応し、“メッセージ”を読み取る。


 これくらいならば鈍い私でも小妖精の助けなしに理解できる。


 アリステルは職務としての妥当性や、自分がグライアスに興味を持ったようなことを語っている。でも、本当は任務に明け暮れる私たちに一日だけ休暇をくれたのだ。


 私たちにはまだまだやらなければならない任務がある。こなすべき課題が待ち構えている。しかし、オルシネーヴァとの停戦前と違い、『課題』の前に『喫緊の』という修飾語がつかない。


 思えばダニエルの研究室から首都に戻って以来、全力疾走が続いていた。ここら辺で一日くらい休みをとってもいいはずだ。それを咎める人間がどこにいよう。


 確かに、どれだけ詭弁を弄してもグライアス釣りは厳密には職務怠慢だ。これはある意味アリステル班の弱みを作りにいくようなものである。しかし、この弱みを握るのはヨナとフランだけだ。そもそも私たちはフランたちを手伝うためにこの場所にいる。フランはもとより、最も糾弾されるべき人間である憲兵風釣り人のヨナが後日、私たちの行動に難癖をつけてくるとは考えにくい。




    ◇◇    




 翌日、私たちはフランにオローナの見張りを任せ、本物のグライアスを釣り上げるためヨナ(いち)押しの釣りポイントへ出発した。フランとオローナの構図は両者の間に檻が無くなっただけで、ヨナに仕事を押し付けられていた時と変わらないのが申し訳ない。


 ごめん、フラン。あと一日だけ辛抱して。


 家主のランドンには事情を説明し、フランと一緒に家に残ってもらっている。オローナを見張るのは憲兵がひとりと一般成人男性がひとりだ。これでオローナがドレーナやヴィポーストなどの本物のヒト型吸血種であれば、並の憲兵としての戦闘力しかなさそうなフランだと実力的に太刀打ちできない可能性がある。けれども、オローナはただのヒトの女性だ。特別な戦闘訓練は積んでいないようだし、病魔に冒され体力が落ちている。精神状態のほうも妄想下にありはしても、これといって暴力性向はない。見張り二人で大きな問題はまず起きないだろう。




 私たちを先導するヨナが先輩風を吹かせながらグライアスについて高説する。


「グライアスは水の綺麗な場所を好む。昔は隣村近辺以外でもよく獲れたらしいけれど、段々と生息域を減らしていった。あまりにも美味しすぎたからだ」


 ヨナは、自身と私たちとの階級差をまるで意識しない対等以上の言葉遣いをしている。憲兵と軍人という違いはあっても、これは基本的にあってはならないことだ。両者の階級は共通だし、少しずつは軍と憲兵間での人事異動だってある。ヨナから見て私たちは広い意味での部署違いの上役なのだ。堕落した公僕は社会常識にも欠けている。


 ヨナは憲兵ではなく釣り人として私たちの上に立ち、前を歩いているのだ。これでこちらの班長がアリステルのような優しい人間でなかったら、ヨナは殴られたうえで激しい叱責を受けてもおかしくない。アリステルどころか、階級的にはアリステル班で一番下である私ですら、ヨナよりもずっと上位の階級だ。私がヨナを叱責しても良さそうには思うが、班長であるアリステルが苦笑いしている中で、出過ぎた真似はできないか……。




「私は昨日、グライアスの大きさに達していないあの魚をイアスと呼んだが、地域によってはイシェクと呼ぶ。グライアスが他の場所にも生息していた、という何よりの証拠だな」


 こんな馬鹿なことをあれこれ考えても私の精神衛生が悪化するだけだ。講釈を垂れるヨナを、ハズレのガイドと諦め、頭を空っぽにして後ろを歩く。


 水質がどうとか、竿が何だとか、冬場の釣りは難しくて仕掛けの工夫が凄くて、とか好き勝手に喋っているヨナのことを全員無視しているかというと、アリステルとラシードは案外普通に聞いて受け答えをしている。


 ポーたんはその様子に何も反応を示さないから、二人は愛想でヨナに返事しているわけではなく、本当にそれなりに興味があるようだ。男からすると好奇心をそそられる話題なのかもしれない。




 村からほどない場所を流れる川にぶつかると、今度は流れに沿って道無き道を進む。植物の密度が低下している冬場だからこそ、そこまで歩きにくくないが、夏場だと鬱蒼(うっそう)と茂る藪に阻まれ歩みが遅くなりそうだ。


 川の合流地点が見えてきたところでヨナが足を止め、無言で前方の川岸を指差す。指示する先に見える赤い異物によく目を凝らす。あれは……。


「レッドドラウナーだ……」


 ラシードが異物の正体を小声で呟く。ヨナから事前に聞かされていた、『グライアス釣りに適したポイントに巣食っている魔物』だ。


「ブルー種が強い他の魔物と違ってー、ドラウナーはレッド種が最強なんだよねー」


 青は強い、という魔物のルールにも例外がある。そのひとつがドラウナーだ。水辺でよく見かけるヒト型に近い魔物で、人間の水死体がアンデッド化したもの、などという俗話もあるけれど、人間の死とは無関係に繁殖する、正真正銘、生きている魔物だ。


 ドラウナーは陸上だとそれほど強くない。油断さえしなければ、ハンターではなくとも、普通の軍人や憲兵だって倒せるだろう。


 ただし、レッドドラウナーとなると討伐難易度は上がる。魔物討伐に慣れていない軍人や憲兵ではなく、ハンターに任されるべき領分だ。それも、実力の低いカッパークラスのハンターでは駄目で、シルバークラス以上の戦闘力が要求される。


 陸上に誘き出して倒すのが常道であり、無理をして水中で戦ってしまうとゴールドクラスのハンターでも逆に命を落とすことになる。


 少し探しても目に映るレッドドラウナーは一体だけだ。ドラウナーは小さな群れを作るから、ここからは見えずとも周囲に他のレッドドラウナーがいる可能性を常に考慮しなければならない。


 それにしてもこのドラウナー、随分と(くつろ)いだ様子だ。野生に生きる魔物とは思えない。フィールドに生きる魔物にあるまじき傲慢な有り様が、この付近にレッドドラウナーを脅かす存在がいないことを暗に示している。


 この個体の体色はボルドーやワインレッドのような落ち着いた赤ではなく、シグナルレッドやカーマインといった、ダイレクトに色覚に訴えかけてくるキツイ色合いだ。こんな目立つ色をしていたら、よほど強くなければフィールドでは生き残れない。


 寛ぐ様はドラウナーの強さを何よりも雄弁に物語っている。敵として手強いのは間違いない。しかし、油断している、ということでもある。


 およその強さを調べるべく、隙だらけのレッドドラウナーに向けて魔力量測定魔法ディスコーティアスステアリングを行使し、内在する魔力量を調べる。


「魔力量を人間で表すなら、ゴールドクラス下位から、緩めに見積もってゴールドクラス中位というところです」

「ふーん……。それなら、普通のレッドドラウナーってことになるな」


 ラシードはすこぶる平然とそう言った。その発言からポーたんが“メッセージ”を耳聡く拾う。ここしばらく歯応えのある魔物と交戦していなかったラシードは、適当な腕試しの相手を見つけたことで戦意が高揚し、その逸る気持ちを隠すために、あえてそっけない物言いをしている。


「ドラウナーってことは、あそこに見えているヤツ以外にも仲間がいるはずですよー。ひとりで行くとか言い出さないでくださいねー、大尉」


 私に何を言われずともサマンダはラシードの内心に察しがついている。危険を冒しがちなラシードの身を案じ、無闇に単騎突撃するとか言い出さぬよう先回りして禁止した。


 そんなサマンダの言葉に私は少しだけ後ろめたさを覚える。なぜならちょっとだけ、ラシードひとりでレッドドラウナーを倒してくれたら助かるなあ、という邪念を抱いてしまったからだ。もちろんこれはあくまで私の煩悩のひとつに過ぎず、丸々私の本心ではない。そんな危険な真似を実際にさせるつもりも提言するつもりない。


 ラシードに戦闘を押し付けたい理由、それはみなまで言わずとも誰でも知ったことだ。


「あー、臭ーい。こんなに離れてるのにねー」


 漂う悪臭にサマンダが顔をくしゃくしゃに(しか)める。


 そう、ドラウナー種は破壊的なまでの悪臭がある。魚介の茹で汁と食残を暖かい場所に放置したような生ゴミ臭さに排泄物の悪臭を混ぜ合わせたような、あらゆるものの鼻をバキバキにもいでしまいそうなとんでもない臭いだ。本当はアンデッドではないのに、水死体のアンデッド呼ばわりされるのも納得の臭さである。


「ドラウナーだったらまだ良かったのに。レッドドラウナーは魔法を使うもんねー」


 ドラウナーという種に限って絶対習得してはならない類の攻撃魔法をレッドドラウナーは使いこなす。相性的には最凶と言ったところか……。レッドドラウナーの攻撃魔法は、何を犠牲にしてでも必ず回避しなければならない、危険極まりないものなのだ。


「いつもどおり、俺が先頭で突っ込む。サマンダは俺の後ろにポジションして、他のレッドドラウナーが出てこないか警戒しつつ俺をサポートしろ。ラムサスは……あれ? 班長、ラムサスは戦闘力として考えていいんですか?」

「それは構わないよ。私もラムサスも、ラシードとサマンダの作戦と指示に従う」

「なら、ラムサスはトリオの最後尾を担当だ。サマンダが新しいレッドドラウナーを見つけたときは、攻撃魔法を俺の方へ放たせないように牽制してくれ。班長は少し離れて全体の動きを見ながら周囲の警戒をお願いします。もしも俺たちが危なくなったら加勢をお願いします」


 了解しました、と私とサマンダは作戦を了承し、アリステルも黙って頷く。


 レッドドラウナーではなくドラウナーであれば私の水魔法(アイスボール)で倒すこともできただろう。現状、私が行使できる魔法の威力では、たとえあの個体の急所に痛烈命中(クリーンヒット)しても、一撃死にはまずならない。属性的にも相性は不良、この作戦では牽制に使うのが精一杯だ。


「ラシードの作戦どおり、私はポヒラー伍長(  ヨナ  )とここで待機している。ドラウナーがあまりに大量に出てくるとか、異常な強さの個体が出てきたら、要請を待たずに勝手に加勢させてもらうよ」

「はい、そのときはお願いします」


 アリステルには後方で待機してもらう。もしもアリステルの助力を必要とするときは、アリステルは魔力を使って闘衣を展開することだろう。


 エルリックは、魔力を使っても大丈夫かもしれない、とは言っていた。それはどこまでいっても推測にすぎず、確実な答えは誰も持っていない。アリステルの手を煩わせないように軽々とレッドドラウナーを討伐するのがこの場における唯一無二の解だ。臭気を厭って窮地を招く、などという愚を犯すつもりはない。さっきのはあくまでも一時の気迷いだ。




 先頭のラシードは気配を殺してソロリソロリとレッドドラウナーに近付いていく。その後ろをサマンダが歩き、私はサマンダの更に後ろを追尾する。


 私のすぐ目の前にいるサマンダが足音も気配もあまりしないのに対し、二つ前のラシードからは足音がそれなりに聞こえてくる。気配も完全には殺しきれていない。


 こうやって改めて並べて比較してみるとサマンダの隠密はやはり上手い。サマンダはアリステル班結成当初から隠密行動が上手かった。生まれ持った才能とジバクマ軍の初歩隠密技術、そしてワイルドハント仕込みの中高等隠密技術が混じり合い、今のサマンダができあがった。能力的に、サマンダは軍医と暗殺者を兼任可能な恐ろしい人物となっている。


 なんだかんだ言っても、ラシードの隠密行動は決して下手ではない。軍人としては十分合格点だ。サマンダと比べるから粗が目立つだけである。


 では、私はどうなのだろう。自分の気配がどれだけ殺せているのかは、自分だと分かりづらい。足が土を踏む音、枯れ草、枯れ枝を揺らす音、武具が奏でる金属音や衣擦れの音はとてもよく聞こえるけれど、自分が立てている音だから自覚しやすいだけで、絶対的な音量はラシードよりもずっと小さい……と思いたい。




 どれほどの距離までレッドドラウナーに忍び寄るか。それは、そのまま即座に攻撃が当てられる距離までだ。


 だが、見かけ上、寛いではいてもそこはやはりフィールドに生きる魔物だ。接近半ばにしてレッドドラウナーがこちらの存在を察知する。


 がばと立ち上がってラシードを真正面に見据えたレッドドラウナーは、野鳥とも爬虫類とも異なる独特の雄叫びを上げる。


「仲間を呼びました!」


 今の雄叫びはこちらを威嚇するためのものではない。戦闘前の戦意高揚(アップリフト)と群れの仲間に向けて送った危険信号だ。小妖精が読み取った“意図”を班員へ伝える。


「そいつらが出てくる前にっ!!」


 雄叫びを上げたレッドドラウナーは仲間の出現を待たずに爪を振りかざしてラシードに襲いかかってくる。陸上にもかかわらず、レッドドラウナーの動きは敏速だ。


 ラシードは長く汚れた爪を軽く避けて剣の反撃を見舞う。


 鋭く重い剣撃は、水死体呼ばわりされる醜い魔物の身体に深い傷を与えるものの、強い魔物だけあって一閃とはいかない。


 ラシードは続く二手目で前肢を片方落とし、三手目でドラウナーの頭部を切り落とすことに成功する。


 首を断たれたレッドドラウナーの胴体が地面に倒れ込む。


 辺りを見回すと、水面から複数のレッドドラウナーが顔を出していた。


 見える敵だけに注意を傾けてはならない。


 ラシードが水面から徐々にせり上がってくるレッドドラウナーに向き直るのに対し、サマンダは油断なく全方向に注意を向けている。川縁(かわべり)を見ても、他に魔物が姿を現す気配はない。


 今のところ、新たに出現しているのは川面から顔をのぞかせている数体のレッドドラウナーだけだ。魔物の数と配置的に私たちは囲まれてこそいないが、レッドドラウナーの数は更に増えるかもしれない。


 目の前の敵を倒すことに没頭していると、気付いた時には周囲をぐるりと大量のレッドドラウナーに囲まれていた、などということになりかねない。視野は常に広く持つべし。


 ふと、アリステルが心配になって一瞬だけ後ろを振り返る。こちらを打守るアリステルの近くにはいかなる魔物の姿も見当たらない。いるのは足手まといの馬鹿釣り人だけだ。あちらは問題ない。私たちはこちらのことだけに集中してよさそうだ。




 視線を川方向へ戻すと、レッドドラウナーは岸のすぐ近くまで迫っている。魔法の射程だ。向こうが攻撃を繰り出す前にこちらから叩く。


 先程から練り上げていた魔力でアイスボールを構築し、岸に最も近い一体へ向けて放つ。照準はきっちり合わせられていたものの、魔法構築から見られている状態では当たるわけもなく、レッドドラウナーは私の渾身の魔法をスイッと簡単に避ける。水辺に生きる魔物だけあって、陸上よりもずっと俊敏な身のこなしだ。


 アイスボールはそのまま水面に衝突し、水飛沫が虚しく舞い上がる。


 アイスボールがレッドドラウナーに肉体的損傷を与えることはなかったものの、それでも遠距離戦を躊躇わせる効果はあったのかもしれない。ドラウナーたちは銘々、ヌラリと川縁に上がってきた。


「仕留め損ねても浅瀬まで追うなよ」


 一番無茶な戦い方をしそうなラシードがパーティーリーダーとして危険行動に禁令を発して剣を構え直す。


 現れたレッドドラウナーは四体、こちらは三人。誰かが複数体を分担しなければならない。


 ラシードは迷いなくレッドドラウナー二体を相手取って戦い始める。


 それに遅れることなくサマンダと私も一体ずつを担う。


 私はともかく、サマンダはレッドドラウナーを一体丸々倒しきるのは厳しいかもしれない。


 班員の戦闘力に基づいて展開を予測し、自分の分担である一体を、一撃で決めるくらいの気持ちで攻撃する。


 力を入れて踏み込んだ瞬間に初めて気がつく。


 思ったよりも足元の状態が悪い。冬場だからもっと固いかと思ったのに、いざ足を踏み入れてみるとズブズブに泥濘(ぬかる)んでいるではないか。


 軟らかすぎる足元のせいで動作に腰が入れにくい。


 私の初撃はレッドドラウナーに簡単に弾かれ、逆にこちらを狙う爪を躱すために無様に泥濘(ぬかるみ)の上で身体を回転させながら避ける羽目になる。


 私に体勢を立て直す機会を与えまいとするかのようにドラウナーは次々に爪の連撃を繰り出してくる。


 不格好な身体捌きと剣を使った防御で爪攻撃をなんとか防ぐも、崩れた体勢を泥濘の上でなかなか上手く戻せない。そうこうしているうちに、水面にまた一体、新しい個体が音もなく赤い顔を出す。


 ええい、面倒な!


 新しい一体を見つけたことで焦りが生まれる。この追加の一体が私たち三人のどの戦闘に加わったとしても、そこから班が一気に崩されかねない。


 ラシードは二体を相手取ってレッドドラウナーを倒しきれずにいる。


 サマンダは守りからカウンターのチャンスを窺う確実な手段を取ろうとしている。相手に隙が生じるのを待つ形であり、急いでどうこうなるものではない。


 本当は一番余裕のある私が目の前の一体をすぐに倒しきるべきだった。こいつはそんなに強くない。倒せる。




 しかし、急いで倒さなければ、という焦りが剣を鈍らせ、倒せるはずのレッドドラウナーをどうしても倒しきれない。逆に無理に伸ばした剣を躱されて反撃の爪を受けそうになり、またもや体勢作りからやり直しを強いられる羽目になる。


 まずい……。


 新しい一体が陸に上がったところで、他のレッドドラウナーとは格が違うことに気付く。


 身体が他の個体よりも二回りほど大きい。この大物は、数人がかりで慎重に戦うべき強い敵だ。本能がガンガンに警鐘を鳴らす。




 焦りは無用、冷静さを取り戻せなければ死ぬ……!!


“死”という目に見えぬ事象が形を持って鎌首をもたげ、舌をチロチロと伸ばして私の身体の上を這いずる。不快な感覚は皮膚を突き破って腹の底で数回渦を巻いた後、背筋へと抜けていく。その瞬間から一気にドラウナーの攻撃が『見える』ようになる。


 急に(のろ)くなったドラウナーの爪を躱す。


 爪に身体を引き裂かれることを恐れるあまりに大きく避けてはならない。大きな動作には大きな隙が付いて回る。


 恐怖をねじ伏せて爪をギリギリで避け、代わりにできた体勢の余裕でカウンターを叩き込み、臭気の根源であるレッドドラウナーの胴を一振りで両断する。


 下半身との接続を失って地に落ち行く上半身に止めの一撃を叩き込み、完全に絶命させる。




 これで私は手が空いた。あの新しい一体は私が倒す!! 


 倒した一体の絶命を確認して大物に向き直った瞬間、その大物が口から何かを放出してきた。


 魔法だ!




 放たれた魔法はラシードでも私でもなく、サマンダの身体を直撃する。


 水衝撃(アクアショット)をモロに受けたサマンダは、小さな叫び声を上げながら吹き飛ばされ、泥濘の上へ倒れ込む。


 それまでサマンダと戦っていたレッドドラウナーは無防備な姿を晒す獲物に喜び勇んで飛びかかる。


 そうはさせない!


 咄嗟に突風(ガスト)を作り、レッドドラウナーの背中へ放つ。


 倒れたサマンダに気を取られていたレッドドラウナーはガストによってバランスを崩し、その場でよろめいてたたらを踏む。


 その間に私は一気に距離を詰めると、上段から剣を振り下ろす。


 レッドドラウナーの体勢は十分に戻っていない。つまり、私は躱される心配をせずに思いきり大振りできる。


 魔力を乗せたバッシュの一撃がレッドドラウナーの身体に綺麗に入った。致命の一撃だった。




 大物は!?


 対象の絶命を確認してから後ろを振り返ると、こちらへの追撃を食い止めるためにラシードが丁度大物へ斬りかかるところだった。


 サマンダが魔法攻撃を受けてから私がレッドドラウナーを一体倒す間に、ラシードは二体のレッドドラウナーを倒しきったのか。大概にしてほしいほどの成長っぷりだ。


 泥だらけのサマンダを引き起こし、負傷の有無を確認する。


「私は大丈夫。大尉の加勢に行こう!」


 軍医が問題ない、と言っているのだ。大きな怪我はしていないのだろう。


 エルリックから訓練をつけられたとは思えないほど派手な戦闘音を立てるラシードに再び向き直る。


 押されているか、よくても拮抗しているだろうと思われた戦いは、ラシードが一方的に押していた。


 ラシードよりも一回り大きな体躯をしたレッドドラウナーの振り回す長い腕と爪を、ラシードは簡単に押し返す。私が立っている場所と同じく、ラシードの足元もしっかりと泥濘んでいる。足元は不安定で上半身はしゃかりきに力を込めているようにも見えないのに、ラシードの剣は軽くレッドドラウナーの攻撃を弾き返す。


 ラシードは手数の二、三割を守りに費やし、残る七、八割で猛烈に攻めている。レッドドラウナーがラシードを上回っているのはリーチだけだ。手数の多さ、一撃の重さ、見切りなど、リーチ以外の全てにおいてラシードに分がある。


 ラシードの剣が大物の身体に次々と金創を刻んでいく。攻勢の凄まじさたるや、私に攻撃魔法による遠距離支援を全くさせないほどだ。


 瞬く間に浅瀬へ追いやられた大物が剣の勢いに負けて激しく飛沫を上げ、その場に倒れ込む。慌てて身体を起こそうとするも、頭部を持ち上げたところを狙いすましたようにラシードの剣が撃たれる。


 大物の首はたわい無く浅瀬に転がった。

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