表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

9

ソリはふらつきながらも氷の大陸を後にし、彼らの家路へと向かう。

「これ、何で溶けないの?」

段々と暑くなってくるが、氷が溶けている様子はない。

「秘密」

夏丞にとってはいいのだろうが、メリ、クリは重さの変わらないソリを引き、バランスを失いながらで大変そうだ。

「お、重い」

「重ーい!飴なんかじゃ安いぞ!!」

それでも何とかソリは進む。だが、ここで思わぬ事態に遭遇する。

「もしかしたら、ヤバイかも」

「ヤバイ、ヤバイ!!」

メリ、クリがある場所で騒ぎ出した。

「何がヤバイんだ?」と、雪太は首を傾げる。

「オレ達、雷雲の中に入ったみたいだな。早く抜け出さないと危ないぞ」

常に冷静な夏丞だが、この時ばかりは険しい顔をしていた。

「本当にそう思ってる?」

険しい顔をした夏丞の手には、スプーンとかき氷が握られていた。

ゴロゴロと黒い雲の中で、雷が唸っている。数秒事に、ピカッと光る。

「メリ、クリ早く出ろよ!」

雪太は焦って声をかける。

「早くしてるよ!」

「重いんだよ!」

メリ、クリからは汗が噴き出していた。

「兄貴!この際、仕方ないからコレ捨てちまおうよ!!」

雪太は氷の塊に手をかける。すると、その手を素早く夏丞が掴む。

「氷じゃない。お前だ」

「え?」

この瞬間雷が光り、二人の顔をくっきりと照らし出した。

訝しげな顔をしている雪太は、夏丞の表情をうかがう。

夏丞の顔は、冗談を言っているようには見えなかった。

「オレより、氷かよ!!この悪魔っ!!」

再び雷が光る。

夏丞は無言で雪太をクリの方に押しやり、ソリから押し出した。雪太はバランスを崩し、どさっとクリの上に尻餅をつくように乗る。

夏丞は自分を睨み据えている雪太を無視し、クリとソリを繋ぐ綱を外し始めた。

「お、おい、何やってんだ?!」

クリは、夏丞の行動に慌てる。

夏丞は綱を外すと、

「クリ、行け!」とクリの体を叩いた。クリは訳がわからなかったが、夏丞の真剣さと気迫に押され、駆け出す。

「お前はしっかり掴んでろよ!」

夏丞は、遠ざかって行く雪太に向かって叫んだ。

「あ、兄貴!何でオレを…」

夏丞の行動に、驚き戸惑っていた雪太だが、すぐに危ない状況下にまだいる夏丞に気付く。

「兄貴も早く逃げろ!!」

ソリを引いていないクリの足は早く、大分遠くになってしまった夏丞に叫んだ。

その時だった。雷が一番光ったかと思うと、細く鋭い稲妻が夏丞の居るソリに直撃した。

「兄貴ーっ!!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ