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A 喰える
第2ROUND開始!!
「イヤアーッ!!助けてーッ!!!」
逃げる雪だるま、追い掛ける白だるま。
「あいつ、バカだな」
「うん、やっぱり空っぽだ」
何度目かに目の前を通過する雪太(ただ今、スノーマン)を冷静な目で、傍観し続けるメリとクリ。
「ゆきんこって、暇潰しには持ってこいだな」
楽しそうに、かき氷を食べる夏丞の姿がそこにあった。
かき氷は雪太という要素が入り、いつも以上に美味しく感じられる。やはり、食事は楽しく食べなければ美味しくないと、夏丞の心に刻まれる。
「マジで勘弁してーっ!!」
雪太の叫びは虚しく、氷の大陸に響いていた。
三時間後。
「空っぽ喰われなかったな」
「やっぱり美味くないんだよ。残念だな」
引き千切られたりした着ぐるみはボロボロ、息絶え絶えの雪太に、優しさのないメリ、クリの言葉が降り懸かる。
「ゆきんこ、帰るぞ。そのままそこにへばり付いていたんなら、いいけどな」
冷たいなんて関係なくなって、氷の地面に雪太は倒れていた。
「が、がえ゛り゛ま゛ず」
雪太は顔だけ上げて言った。
「じゃあ、早くソリに乗れ」
「よいしょっと」
雪太はソリの中の物におされつつ、何とか身を納める。
「………」
気にしないようにとしていたが、どうも性分らしく、それはできないらしい。
「あのぉ、冷たいんですけど。これ、持ち帰るんですか?」
雪太は自分を圧迫している氷の塊を指して言う。
「もちろん」
夏丞は頷く。
「四次元ポケットに入れてくれませんか?」
「溶けちゃうだろ」
そうなんだ…。冗談で言ったのに。
「出発するよ」
「飛ぶよ」
メリ、クリは声をかけ、ソリを引く。
「う゛っ、重っ」
「カースケ、氷で重い」
さすがに、メリ、クリでも人間二人、プラス抱き抱えるのがやっとの氷の塊は重い。
「頑張れ」
夏丞の激励の一言。
「ちえーっ」
「氷分何かくれよ」
催促するメリ、クリ。
「はい」
メリ、クリは口の中に何かをほうり込まれた。
「ん?甘い」
「飴かよー!子供だましだあ!!」とクリは叫んでいたが、
「おいら飴スキ」と、メリはにこーっと笑った。
「メリ、文句言えなくなるじゃん」
「おいら、文句ないもん」
クリは溜め息をつくと、メリと一緒にソリを動かし出した。