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6

夏丞は雪太が削った氷をかき氷機にセットすると、削り始めた。

シャリ、シャリと涼しげな音が聞こえてくる。

皿にこんもりと、雪のようにサラサラになった氷が乗った。

夏丞はそこに、イチゴシロップをかける。氷は、シロップの重みでその身を沈ませる。

そこにスプーンを差し入れ、たっぷりとシロップのかかった氷を口に運ぶ。

「美味い!」

夏丞、ご満悦である。

雪太でも、見た事があるかないかくらいの、夏丞の邪気の無い嬉しそうな笑顔がそこにあった。

「そういえば兄貴って、大のかき氷好きだったけ」

父親に勘当されて家を出た夏丞とは、会う事はほとんどない。その年月で、すっかり自分の兄の好物を忘れてしまっていた。

いい兄貴とは言えないが、たった一人の兄弟だ。久しぶりに元気そうな姿を見て、今目の前で自分が苦労して取った氷でかき氷を美味しそうに食べているのを見れば嬉しいし、やっぱり憎めないなと思う。

それがちょっと卑怯だと思ったりもするが。

「まったく、寒い所に来てわざわざかき氷食ってるなんて、兄貴変わってるよな」と、雪太は3杯目に突入しようとしている夏丞を笑って言う。

「本当はな、お前を食ってみようかと思ってたんだ」

シャリシャリとかき氷機を動かしながら、夏丞は言った。

「は?」

「お前、雪だるまになってたんだろ?シロップかけてみたらどうかなと思ってさ」

悪戯っ子のように、夏丞は笑う。

そう…これが、夏丞が帰郷したワケ。雪太の背中にゾクリと寒気が走った。

「オレ、死んじまうかもしれねぇーし、もとに戻って欠けてたらどうすんだよ」

「オレに都合の悪い事は何一つ起こりはしないよ」

サクっと氷をすくう。

血の気が引きました。

「でも、残念だなぁ。ゆきんこ元に戻ってんだもん」

夏丞は本当に、残念そうな顔をする。おまけに、溜め息まで付けて。

「さ、探そうよ!何か一つでもあるハズだよ!!」

雪太は今はスノーマンではないのに、何故だか必死に夏丞に食いつく。どうやら、あまりの衝撃発言に混乱しているようだ。

「んー」

夏丞はかき氷を口に運びながら、考えてみる。

「………」


サク、モグモグ


「…………」


シャリ、シャリ


4杯目。


「……無いんデスカ?」


サク、モグモグ


「…あ!」

夏丞は突然、声を上げる。

「あった?!」

雪太は期待に、目を輝かせる。

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