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「…せやかて、あれはゆきんこやろ。何で、カースケが出てくんねん」
「ゆきんこは、オレの所有物だ。それは、オレに借りを作った事になる」
雪太は愕然とした。
オレって、物扱い!?しかも所有物!?オレに、自由はないのかあっ!?
「んな無茶苦茶やでほんま〜。相変わらず、変な理屈捏ねよりよるな」
相手は呆れたように溜め息をつくと、
「ええよ。タダはいややけど3割まけてやるわ」と、言った。
「いや、2割」
「なんでやねん!これでも値切りよるんかいっ!!」
電話の向こうで、ガタンという音がした。きっと、テーブルか何かをひっくり返したのだろう。
「じゃあ、交渉成立♪またな」
「ちょ…待ってやこ…」
プチ。
夏丞は、電話を容赦なく切った。
兄貴って凄すぎる。あいつに、値切り成功(?)するなんて…。
雪太は変なところで夏丞を感心していた。
「じゃあ、トンマのところへ行くぞ」
「へ?」
雪太は間抜けな声を出す。
「オレも…?」と、雪太は自分を指差す。
「もちろん。所有物であるお前も来るんだよ」
そうか…オレは所有物…って、納得できるかボケーッ!!
爽やかな笑顔に、うっかり納得しそうになってしまった。
「兄貴、日本語間違ってるよ」
雪太は夏丞を睨み据える。
「全然」
夏丞は雪太の襟首を掴むと、引きずるようにして家を後にした。
雪太に選択権など、自由などなかった。
「あらあら、仲がいいわね」
「あいつ、結局何しに来やがったんだ?」
父親は腕を組みながら、眉間にしわを寄せ、二人の後ろ姿を見送っていた。
「それにしても、せっちゃん連れてかれちゃったけど、いいのあなた?」
「ハウッ!?」
マリアの言葉で気付く父親。
「あいつにゃあ、まだまだサンタの心得ってもんを教えなきゃならんのに!あのクソ坊主〜!!」
「大丈夫よ。お腹が空いたら帰って来るわ」
「マリア…」
マリアの一言で、ガクッと父親の力は抜けてしまった。
トンマから無理矢理値引きし、ソリを手に入れた夏丞は、手綱を握り締めていた。
「兄貴、今から何処行くんだ?」
夏丞の後ろに大人しく腰を据えている雪太は、夏丞に尋ねる。
「今回の目的といったところかな」と、夏丞は笑顔で答えた。
「メリ、クリ、北極へレッツゴー!!」
夏丞は楽しそうに、掛け声をトナカイにかける。