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連載(完結済)「Xmasの贈り」の番外編となっていますので、まだ本編を読まれていない方は、先にそちらを読まれる事をお勧めいたします。
青い瞳の彼は居た。
純粋そうな色の瞳なのに、彼の本質が邪魔しているのか、全く善人には見えない。かと言って、悪人という程容姿が悪いわけでもない。寧ろ、整った顔立ちをしている。
彼は久しぶりに、自分の生まれた町へと帰って来ていた。彼の中に、郷愁という感情はない。
だが、帰って来た。何故かというその理由は後にわかるだろう。
「やあ、ゆきんこ」
ゆきんこは、ドキりとした。
自分をゆきんこと呼ぶのは、幼なじみの彼とあの悪魔ぐらいである。そして今、この声はその後者であるに違いない。まぁ、前者であってもいい事はないのだが。
幻聴であって欲しい。
ゆっくりと振り向くゆきんこ。
爽やかな笑顔を見せる彼に、青ざめるゆきんこ。
「な、な、な、何で帰って来た!!?」
ゆきんこは彼と同じ青い瞳を大きく見開いて、驚いていた。
「ゆきんこ、その口の利き方はないだろ?」
彼は笑顔のまま、自分とは違う白髪の頭をわしづかみにし、力を込めた。
「いでででっ!!」
涙目になるゆきんこ。
「オレが帰って来たんだ。ちゃんと迎えないとダメだろ?ナァ、ゆきんこ」
更に、力を込める。
「いででででで…あ゛、あ゛だま゛がヅブレ゛ル゛」
涙がボロボロと零れるゆきんこ。
「たいした脳ミソ入ってないだろ?」
容赦のない攻撃はまだ続く。
「も゛う゛、許じで」
ゆきんこギブアップ!
試合終了のゴングが鳴った!!
彼は尚も力を込め、一瞬離したと同時に、強烈な鉄拳を振り下ろした。
「ふげっ!!」
ゆきんこノックダウン!!
ゆきんこはしばらく頭を抱え、うずくまって痛みを耐え忍んでいた。しかしなんとか、涙が溢れそうな潤んだ瞳で彼を見上げた。
「兄貴、お帰りなさい」
彼を目の前にして、本来言わなければいけない正しい言葉。
「ただいま」
満面の笑みを見せる兄貴と呼ばれた彼。
そう、彼らは兄弟。
そして、彼らの名は…
兄が冬風夏丞
ゆきんこという呼び名を持つ弟が、冬風雪太
「よう、親父」
「てんめーっ!何しに帰って来やがった!!勘当されたクソ坊主が家の敷居跨ぐんじゃねぇっ!!」
「勘当されたからって、家に入っちゃいけないってのは可笑しいだろ?もう、他人なんだ。帰って来たんじゃなく、訪ねて来た。オレは、客人だぜ?」
激怒する父親にこうも屁理屈を正論のように述べられるのは、この世で夏丞だけだろう。