刀の作り方
「ゴボボ……!?」
まずい!
水中で私は身動きが取れなくなった。
打ち付ける滝に抵抗できず、更に息ができない。
このままでは窒息死してしまう!
「がはっ、はぁっ、はぁっ……」
私はまたしてもグラスを外し、その場から難を逃れた。
気がついたら時刻は朝の5時を回っており、2時間
後には郵便局に向かわなければならない。
「しまった…… 今から少しでも寝ておこう」
私は急いでベッドに入り、部屋の明かりを消した。
翌朝は起きるのがかなりしんどく、今日からは時間を決めてゲームをしないとな、と思った。
仕事が6時に終わり、私は行きつけの本屋に立ち寄った。
ここは自分の家の最寄り駅付近にあり、人が行き交うのがやっとのスペースしかない小さな店だが、私にとっては居心地がいい。
中に入ると、この本屋の店長がカウンターに座っていた。
「おっ、健ちゃん。 お疲れっ」
ちなみに店長の秋ちゃん (本名は秋田)は、私の高校の時の同級生だ。
「お疲れ。 ちょっと秋ちゃんに聞きたいんだけどさ、鍛冶屋が主人公の小説とか、知らない?」
「鍛冶屋? 結構マニアックなとこ行きたがるねぇ。 時代ものの小説にならあったと思うけど…… あ、1つあった!」
秋ちゃんは立ち上がり、意外なコーナーへと歩いて行った。
「これは確か鍛冶屋の話だよ。 健ちゃんは全く読まない類の本だと思うけど」
その本は、俗に言うライトノベルと呼ばれるものだった。
元貴族ですが、鍛冶屋始めました。 と言う、何やら長いタイトルの本である。
「主人公は貴族なんだけど、戦に負けて別な国に亡命して、そこから鍛冶屋を始めるんだ。 文は普通の小説よりくだけてて、好き嫌いはあると思うけど、内容は面白いんだ」
……秋ちゃんの勧めなら、買うしかあるまい。
私はその本を購入し、家でゲームを始める前に少し読むことにした。
小一時間経過し、鍛冶屋の仕事内容を多少なり把握することができた。
刀を打つには、たたら場と呼ばれる製鉄所で、炭と鉄の混ざった鉄を作る所から始める。
炭は木炭を粉末にした物で、鉄は砂鉄を用いる。
これらを投入後、しばらくしてからたたら場を崩すと、玉鋼と呼ばれる刀の元となる金属が中から現れる。
この金属の固い部分と柔らかい部分を選別する。
これは、刀の軸と刃で使う鉄が異なる為で、軸は割れにくい鉄、刃は割れやすい鉄を使う。
私は小説を閉じ、グラスを手にした。
「後は、やってみれば分かるだろう」