再起動
ガタゴトと揺られ、私は目を覚ました。
「かなりうなされていましたね。 そろそろ街に到着しますが、別れ際にお名前を聞かせてもらえますか?」
こ、ここは……!
一番始めの馬車の中ではないか……
本当に、データを消去されてしまったのか。
私はグラスを外した。
もう、ゲームに戻ることはあるまい。
その日から、私はゲームのない日々に戻った。
「おっ、今日はハンバーグか。 ご馳走だな」
ゲームのことを考えずに食卓につくのなど、一ヶ月ぶりくらいだ。
ご飯を食べながらテレビを見ていると、突然息子が質問をしてきた。
「ねぇ、今日もやらないの?」
「……何をだ?」
妻が慌てた様子で口を挟んできた。
「あっ、ハンバーグに卵入れれば良かったかな? そういうの、あったわよね?」
「ああ、ウズラの卵を入れるやつだな」
……しかし、今の質問が気になるな。
息子の方を向くと、つまらなそうな顔でご飯を食べている。
「僕、もういいや。 ご馳走様」
そう言って、足早にリビングへと戻った。
「……マコトのやつ、元気がないな」
「私もご馳走様」
気が付くと、私は取り残されていた。
「ふぅ~っ……」
風呂に入り、一日の疲れを癒やす。
湯船に浸かりながら、私は明日から暇な時間を何に使おうかと考えていた。
「久しぶりに、本でも読むか」
秋田書房に行き、平積みされている新刊コーナーでも見に行こう。
湯船から上がり、バスタオルで体を拭く。
ふと違和感を覚え、鏡を見る。
「……?」
いつもと違う自分が映っている気がする。
やけに若い。
これは…… 20代の頃の私か?
「おい、腰抜け」
鏡の私に、突然そんなことを言われた。
「な、何だと!」
しかし、既に鏡にはいつもの私しか映っていなかった。
部屋に戻ったものの、私は少し不愉快な気分に浸っていた。
家族から冷たくされ、挙げ句、自分にまで暴言を吐かれたのだ。
「私が何をしたと……」
部屋に置かれているP〇4に目が止まった。
みんな、私がゲームを投げ出したことに対して、不満を持っているのか?
「だが、魔女を倒す方法がない……」
私は目を閉じ、ゲーム内であった出来事を思い返した。
その中で、魔女を倒すための鍵はないだろうか?
しばらく考えた後、私は閃いた。
「あ、あるぞ! 魔女の力を封じる手立てが……!」
私は慌ててP〇4を起動し、グラスをかけた。




