空へ
「待ってくれっ!」
先ほどの役に立たない兵士がやって来た。
「襲撃したやつらの中に、弓使いがいる。 そいつの放つ矢は、どういう訳か、鎧や盾をすり抜けて体に刺さるんだ。 このまま飛空艇に突っ込んだら、やつの餌食になる可能性が高い」
……何だと。
弓使いがいる、というのは厄介だ。
エリオットは飛べるかどうかも分からないのに、空中で矢をかわせるか? といえば、かなり怪しい。
「……情報提供ありがとうございます」
「ああ、検討を祈る!」
そう言って、少しだけ役に立つ兵士は持ち場に戻って言った。
「聞いたか、エリオット」
「……面倒クセーナ」
物質を透過する矢、となると、盾を構えて飛んでも意味は無い。
人に刺さるという性質上、盾になるのは空を飛ぶことのできる生物。
鳥か、ドラゴンだ。
「エリオット、いつも街を旋回しているドラゴンたちがいる。 彼らに協力を仰ぐんだ。 もし頼んでくれるのなら、焼き肉奢ってやるぞ?」
「ヤ、焼キ肉食イテーッ!」
眼前には、飛空艇が滑空するために作られたと思われる道が伸びている。
助走を取るには十分な長さだ。
「フゥー……」
セナが焚き付けてくれたおかげで、エリオットのやる気はある。
後は、飛び方のコツを教えてやればいい。
「エリオット、私からアドバイスがある」
「ソンナモン、イラネーッ」
いや、気合いだけでは絶対に飛べん。
「飛びたいなら聞くんだ。 空を飛ぶのに必要なのは、揚力と呼ばれる力だ。 翼を水平にして走り、徐々に翼を起こすことで、揚力を得ることができる。 宙に浮き上がれば、後は翼の角度調整で自由に飛べる!」
「……」
エリオットは黙って走り出した。
意外なことに、私の言った通りに、翼を水平にしている。
エリオットが空路を駆ける。
そして、気づいたら体が宙に浮いていた。
「いいぞっ!」
「エリオット、すごいじゃないっ!」
一度飛び立つと、後は簡単だった。
エリオットは得意になって翼を羽ばたかせ、旋回しながら上空へと飛び立った。
……私はそこで気が付いた。
風圧で前がまともに見えず、振り落とされれば命はない。
ゴーグルと、エリオットの体と自分の体を繋ぎ止めるものが必要だった。
「オイ、オ前ラ! 俺二協力シタラ、コノオッサンガ、焼キ肉奢ルゾ!」
「本当カ?」
なんだと!?




