覚醒
式典の会場はパニックに陥っていた。
空にはクジラのような形をした船が飛んでおり、どこかに向かっていた。
地上にいる兵士は、どうすることも出来ず、ただこの惨事を眺めているだけだ。
「く、追わなければ……」
「どうやって追うんだよ……」
……あの飛行船を追えるのは、どうやら私たちだけのようだ。
しかし、こんな所でエリオットのあの巨体を見せれば、逆に捕まりかねない。
先に衛兵に話を通してからの方が……
「エリオット! あれを追うわよ!」
マリーさんが叫び、エリオットは体を変化させ、巨体を晒した。
会場に別な脅威が現れ、更に混乱が広まる。
……流石の私もマリーさんにキレてしまいそうだ。
「衛兵っ! 私たちが飛行艇をなんとかもするかわりに、このことには目をつぶってくれ!」
「そ、それは…… 私の一存では決められん。 なぁポール、こういう時、マニュアルには何てあった?」
「……いや、俺に聞かれても」
……もういい。
後でどうなるか分からないが、やるしかない。
マリーさんがエリオットに跨がり、私も体に足をかけ乗り込む。
「よし、行きましょう!」
しかし、エリオットは飛び立とうとしない。
「ど、どうしたの?」
「……前カラ背中ニ違和感ガアル」
そういえば……
エリオットは生まれる前に矢で背中を射貫かれた。
あれが影響しているのか?
「そんな…… あなたドラゴンでしょ!」
「……」
その時、背後から声がした。
「助走を取って、強く踏み込んで跳び上がれ。 そこから目いっぱい羽ばたかせるんだ。 お前なら飛べる!」
そう言ったのは、後から付いてきたセナだった。
「お前がもし飛べたら、この街で最速の俺が勝負してやる!」
……セナ、君にはトラウマがあり、空を飛ぶことが出来ないハズだ。
だが、もしエリオットが自分の傷を克服し、空を飛ぶことができれば、セナに勇気を与えることになるかも知れない。
「……ヤッテヤルヨ!」




