事件
ゲーム内に入ると、まず空が見えた。
私は仰向けに倒れており、頭を動かすと鈍痛が走った。
「うぐ……」
ハンマーで殴られた際の痛みが残っているらしかった。
もしあの時、グラスを外していなかったらどうなっていたのだろう……
更に、何やら周りが騒がしい。
無理やり頭を起こして確認すると、鎧を着た兵士がギャラリーを押しとどめていた。
「これ以上近づくな!」
「殺人ですって……」
ギャラリーからそんな声が聞こえる中、私のすぐ隣で、コートを着た刑事風の男がブツブツと呟いていた。
「死因はハンマーによる一撃。 なぶり殺しのトムか……」
私は死んだことにされているようだ。
というか、実際さっきまで死んでいたのだろう。
少し気まずい空気だが、私は起き上がった。
「……うおっ!?」
刑事風の男がのけ反る。
死体が起き上がれば、当然の反応だろう。
しかし、何と説明するべきか……
「どうやら、気絶していたようです。 ご迷惑おかけしました」
「馬鹿な……」
男はかなり困惑していたが、頭の手当をするためにまず病院に連れて行く、と言われた。
「傷が完治したら、事情聴取だ。 犯人を追わねばならん」
この後、私は馬車で病院まで搬送され、手当を受けた。
しばらくベッドで安静にしていると、先ほどの男が入ってきたので、ことの次第を説明し、頃合を見計らって私は病室を抜け出した。