死闘
私が正門に向かい走っていると、背中を押され、転倒した。
「なっ!?」
石に躓いた訳ではなく、エリオットが翼で突風を引き起こしたのだ。
エリオットは、朽ち果てた城壁の一部を鷲づかみにすると、それをむしり取り、こちらに投げつけてきた。
ドオン! と耳元で衝撃音が鳴る。
狙いは私から外れたものの、正門に命中し、扉が塞がれてしまった。
「親に物を投げつけるとは、何事だ!」
……と言いたい所だったが、次のモーションを見てまずい、と思った。
エリオットが息を深く吸い込んだからだ。
そして、黒に近い紫の煙が広範囲で吐き出された。
私は息を止めた。
しかし、異変が起きた。
「……!?」
私の衣服が溶け出したのである。
この煙は吸い込むだけで無く、触れるだけでもマズい。
煙をかき分け前に出ると、私の体は横に吹き飛ばされた。
どうやら、尻尾で横殴りにされたらしい。
幸い、毒ガス地帯からは抜けたものの、グラスをかけたまま手痛い攻撃を食らってしまった。
私は草の上で悶絶した。
「があっ……」
骨が折れる、というのはこういう感触なのか……
どうにかこらえて立ち上がると、視界にあるものが映った。
ジェットパックで城の上に向かうあの老人だ。
「アークコアを手に入れるつもりか……」
……あのジェットパックでエリオットの背中に飛び移れば、攻撃を防げる。
そのまま、エリオットに呼びかけるのだ。
「約束を放棄するわけにはいかん」
エリオットに乗って、魔女に会いに行き、セナと勝負するという約束。
そして、ちゃんと謝るのだ。
殴ってすまなかったと。
「こんな痛みなど、関係ない!」
私は垂直に切り立った城壁にしがみつき、隙間に爪をかけて強引に上り始めた。
「グアッ」
爪が剥がれ、血が腕を伝う。
それでも、無理矢理登っていく。
こんな指の痛みなど一瞬で終わる。
しかし、エリオットを殴ってしまったという後悔は一生消えることはない。
どうにか城の窓から中に入ると、あの老人を探した。
「……!」
開け放たれた2枚扉がある。
その中に入ると、老人の姿はなく、ジェットパックと衣服類だけが無造作に床に置かれていた。
そして、眼前には、燭台とその上に置かれた球体があった。
「アークコアか!」




