雛の名前
街に向かう途中も雛は騒ぎ続けた。
「ハラヘッター! 肉クレーッ!」
肉?
昆虫か野菜ではないのか……
「うるっさいわね! ちょっと大人しくしてなさいよ!」
しかし、この後も一向に静まる気配が無かったため、私は雛に殻をかぶせた。
「ふぅ…… ところで、マリーさん。 この雛に名前を付けませんか?」
マリーさんは馬車を操作しながら、名前かぁ、と言い、いくつか案を出した。
「かっこいい名前つけたげよっかな! 例えば、ギョエ蔵とか?」
……それは、かっこいいのだろうか?
雛の顔を覗き込むと、白目を向いて痙攣している。
そんなに嫌か。
「ダメ? じゃあ、カサブタでどう?」
……質感を名前にしてしまうのはどうなのか。
流石にちょっと可哀想だ。
「エリオットにしよう」
「えー、そんなの面白くないじゃん!」
ギョエ蔵、カサブタ、エリオットの中なら、エリオットが幾分かマシだろう。
こうして、雛の名前も決まった。
街に到着し、馬車にマリーさんとエリオットを残し、セナの所へと向かった。
しかし、すぐに異変に気が付いた。
「屋根の上にドラゴンがいない……」
扉をノックすると、セナが現れた。
「……今度は何のよう?」
私は、まずセナの現在の状況を聞いてみた。
「うちのドラゴンは、空気を読んで逃げたよ。 ほとぼりが冷めるまでは戻ってこないと思う。 もしかして、俺のことが心配で来たわけじゃないよね?」
私は事情を説明した。
ドラゴンの雛を飼うことが出来なくなり、飼育の経験のあるセナに、面倒をみて欲しいと。
「……罪になると分かってて、受け取るわけにはいかないよ。 それに、あなたはもうドラゴンの親なんだ。 育児放棄する気?」
……その通りだ。
最初に見られた瞬間から、私が育てなければならないのは決定してしまったのだ。
それに、何故名前などつけてしまったのだろう。
余計離れにくくなってしまったではないか。
「飼育のことなら、相談には乗るから」
「……分かりました」
馬車に戻ると、マリーさんとエリオットの姿がなかった。
「なっ、一体どこへ!?」
街の大通りを見回すと、女性と、フードをかぶった子供の後ろ姿を発見した。
子供は何やらギャーギャーとわめいている。
そのフードから、尖ったくちばしが見えた。
「ま、まずいっ!」




