侵入者
夕方、馬車で屋敷に戻ると、温室の扉の工事が完了していた。
早速、私はセナに言われた通り、温室内に土の土台を用意し、バケツで水を汲んで万遍なく湿らせた。
温室内は暖房のような設備がないのにも関わらず、外気に比べて暖かい。
1000マネーで購入したガラスの温度計を土に差し、25度の適温を確認した。
「後は、運び出せばいい」
私は召使い2人に協力してもらい、卵を運び出し、土の上に乗せた。
「ありがとう。 ところで、この温室はどうしてこんなに暖かいのでしょうか?」
2人に尋ねると、若い女性の召使いがこう言った。
「この付近には火山があって、地熱を利用しているんです。 ちなみに、珍しい植物を育てるのは旦那様の趣味で、この設備を作るのにかなりの資金を投入したって噂ですよ。 この卵にだって多額の資金を費やしているんでしょう?」
……1000万マネー。
ここの主は趣味のためなら金に糸目はつけず、召使いには不評なのかもしれない。
「でも、このドラゴンはいい買い物だろ? もし飼い慣らすことができたら、よそはウチに手出し出来なくなるぜ?」
今度は若い男性の召使いが答える。
そんなにうまくは行かないわ、と女性が反論する。
「2人とも、ありがとう。 この卵を孵すのに土を適温に保たなければならないので、私は今日からここで寝泊まりします」
土台が地熱を吸収し、温度が25度を超えてしまう。
水をかけて温度を調整しなければならない。
2人が出て行った後も、私は温度計を睨んでいた。
時刻は深夜。
温室内で座っていると、どうしてもウトウトしてしまう。
そんな中、私はカサリ、という音を聞いた。
「……誰だ?」
枯れ葉を踏んだ音だと思われる。
しかも、続け様にカサリ、という音がした。




