セナの家へ
翌朝、ゲーム内に入ると、買い出しのための馬車に同行し、街へと向かった。
私は大通りで、適当な通行人を呼び止め、375マネーで情報を聞き出した。
街の西側にある住宅区に、赤いドラゴンの住まう家があるとのことだ。
「……あれか」
遠目から見てもすぐに分かった。
住宅区は似たような家が連なっているが、その内の屋根の一つに、ドラゴンが堂々と居座っている。
家の前まで来ると、ドラゴンはうっすらと目を開け、私のことを見下ろしてきた。
しつけが行き届いていれば、この前みたく炎で焼かれる危険は少ないはずだが……
「……セナさんのお宅ですか?」
じっと見据えられる。
もしかしたら、うたた寝している所を起こしてしまったのだろうか?
すると、こちらが拍子抜けするような態度で、ドラゴンが話しかけてきた。
「メッズラシー、オ客サンダ。 チョット待ッテテネ」
ドラゴンは爪で窓を開けると、お客さんだから対応して、と言った。
しばらく待っていると、扉が開いた。
「……俺になんのようですか?」
出てきたのは、猫背でやせ細った青年だ。
目にクマができており、失礼ながら、少し病んでいるようにも見える。
彼がセナか?
「初めまして、アオモリと言います。 ドラゴンの飼育に関して伺いたいのですが」
「……入って」
部屋の中に通されると、床にはゴミや服が散乱しており、空気も淀んでいた。
「卵は手に入れたの?」
「はい。 持ち主は違うのですが…… 卵の管理とヒナの飼育を教えていただけませんか?」
「……卵は25度をキープした土の上に乗せる。 逆さまにすると、ヒナが出てこれなくなるから気をつけて。 土には水分を含ませてあげるのがいいよ。 卵が水分を吸うと、割れやすくなってヒナが出てくるときの手助けになるから。 孵ってからは、野菜か昆虫を与えるのがいい。 人の食べるものは消化できない場合があるから。 あと栄養のバランスも気をつけて」
私はゲーム外でメモを取り、礼を言って部屋を出た。
そのまま帰ろうとすると、突然ドラゴンに呼び止められた。
「……アオモリサン、モシ良カッタラ、今度セナト勝負シテモラエマセンカ?」
……勝負?
「セナニハ、心ノ傷ガアルンデス」
話によると、セナは元々活発な子供だったらしいが、ある事故をきっかけに、心を閉じてしまったとのことだ。
「制御ヲアヤマッテ、建物ニ衝突シタンデス。 ソノ時、僕ハ重症ヲ負ッタ」
……なるほど。
優しい心の持ち主なのだろう。
このドラゴン以上に、深い傷を心に負ってしまったに違いない。
「僕ハ、セナニモウ一度元気ニナッテモライタイ」
「……分かりました。 もし、私がドラゴンに乗れるようになったら、彼を連れ出してみます」
「約束デスヨ」




