屋敷へ
彼女の名前はマリーと言うらしい。
「じいや達は先帰ってて! 私は走って屋敷まで行くから」
「かしこまりました、マリーお嬢様」
ちなみに、このじいや、と呼ばれた年輩の男性は、この家に代々仕えている執事であり、召使いを取り仕切る者とのことだ。
私は馬車に乗せられ、彼女の住まう屋敷へと向かった。
「初めまして、アオモリと申します」
「じいやです。 あなたの役割はドラゴンの飼育です。 必要な物があれば、他の召使いに用事させますので、お申し付け下さい」
当然だが、ドラゴンの飼育などやったことがない。
後で街に戻り、ドラゴンを育てたというセナに話を聞くのが良さそうだ。
卵が孵るまで時間はあるだろう。
「……それより、なぜマリーさんは走って帰るんでしょうか?」
「複雑な事情がございます」
執事の話では、マリーさんには許嫁がいて、その相手と結婚をしなければならないらしい。
相手は有力な貴族なのだが、マリーさんの方が嫌がっている。
そこで、顔合わせの時に決闘を申し込んだのだそうだ。
「男たる者、決闘を申し込まれたら受けて立つべし。 このような家訓があり、マリーお嬢様はそれを利用したのです」
なるほど。
だから鍛えている、という訳だ。
「では、ドラゴンを買った理由は……?」
「……その点に関しては、お答えできません」
私は、もし決闘に負けた場合、どさくさに紛れて相手を消し炭にするつもりでは? などという笑えない冗談を思い付いたが、そこまで外道では無いだろう。
1時間程馬車に揺られ、ようやく屋敷に到着した。
「では、ドラゴンの卵を荷から降ろしましょう」
執事は召使いを呼びつけ、3人で落とさないよう、慎重に移動させた。
卵のサイズは私の身長ほどもあり、中々重い。
「このままどこへ?」
「一旦温室に移動します。 このまま真っ直ぐです」




