竜現る
それにしても、具体的なことをほとんど言わないで行ってしまったな……
とにかく、この角笛でドラゴンを呼んでみることにしよう。
宿屋を後にし、空を見上げる。
ゲームスタート時に確認した通り、ドラゴンが群れをなして飛び回っている。
「……ここで使うのはマズいだろうか?」
もし街中にドラゴンが降りたったら、騒ぎになる恐れが少なからずある。
私は街を南に進み、何もない草原地帯にやって来た。
口に角笛をあてがい、息を吸い込む。
「せーの……」
スピー。
「む、中々難しいな……」
しかも、よく角笛を見ると、リコーダーのように左右に穴が開いている。
「気づいたようだね」
……!
振り返ると、キツネの顔をした子供がいた。
「オイラはフォックス。 天才クラリネット少年だよ」
……私の後を着いてきたのだろうか?
自分から天才という辺り、あまり可愛くはないな、と思ったが、話を聞いてみることにした。
「いつもパパのクラリネットを借りて練習してたんだけど、踏んづけて壊しちゃったんだ。 で、代わりに何か無いかなと思ってたら、おっちゃんを見つけたわけ」
「これはクラリネットではないが…… 要領が同じなら、試しにやってみるか?」
「えー、自分でやりなよー」
と言いつつも、角笛をひったくられ、角笛の演奏が始まった。
ブォー、という野太い音色で、メロディが奏でられる。
自分から天才というだけあって、中々うまいな、と思っているど、ズゥン! という地響きがした。
「……どわあっ」
フォックス少年も思わず尻もちをつく。
私たちの目の前に、赤く巨大な竜が降りたった。
「ワシヲ呼ンダノハ、オ前カ?」
言葉が通じるのか?
私は、魔女に会いに行きたい、と説明した。
「……フザケルナ。 何故貴様ゴトキヲ乗セテ運バネバナラン」
「おっちゃん、竜はプライドの塊だよ。 自分が認めた人しか乗せないんだから。 この国でも竜に乗れるのはセナって人だけだし」
……では、どうすれば認められる?
「条件を教えてくれ」
「無イ」
目の前の竜は、何やら大きく息を吸い始めた。
「あ、やば……」
竜は、ゴウッ、と炎を吐き出した。
目の前が真っ赤に染まった。




