表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ヒロインを殺した攻略キャラ

勢いで書いた

いつもの事なので反省はしていない

乙女ゲームに転生して都合よく逆ハー作れて幸せに暮らせましたとさ

なんてなるわけないよね

攻略キャラを半端に攻略するからこうなんのって話

我が国の王子殿下は愚者である

きっと「心優しい彼女が何故、殺されなければならなかったのか」と嘆いているだろう

彼女に扱いやすい男としてしか見られていなかったというのに

我が国の将来の教皇は愚者である

彼の信仰先は神から彼女に移っていた

偶数を崇拝していれば傷付くことはなかった

我が国の騎士は愚者である

彼が剣を預ける相手は彼女ではなかったろうに

なんとも尻の軽い忠義者だ

我が国の伯爵は愚者である

幾多の女を泣かせてきて今更、真実の愛に目覚めたと寝言をぬかす

彼女はお前と同族だ

どいつもこいつも見ていてイライラさせてくれる


最近、事件が起こった

不幸で嘆かわしい事件だ

生きているだけで害悪となる男爵家の令嬢が何者かに無惨に殺されていたのだ

死に顔はそれはそれは壮絶な表情で、普段の権力者に媚びへつらう様子からは想像できないほど醜い顔だった

犯人は彼女に恨みがある人間に違いない

王子殿下の婚約者あたりが有力候補だろう

男爵家の令嬢ごときに婚約者を寝取られありとしない罪で公開処刑

他にも男爵家令嬢は恨みをあちこちで買っている

誰が犯人でも驚かないね


まぁ、犯人は俺なんだけどね


俺は平穏を望んでいた

あの女は俺の平穏に土足で踏みいってきた

好意的なふりして下心しかない

耳障りのいい言葉ばかり並べて本心は出さない

そんな女に靡く馬鹿の気がしれない

あの女が好き勝手すれば冗談抜きで国が滅ぶ

だというのに将来、この国を引っ張っていく権力者諸君が揃いも揃って男爵家令嬢に(うつつ)を抜かしている

嘆かわしい

嘆かわしいあまりに元凶を惨殺してしまった

後悔はしていない

いい仕事をしたと思っている

だが、男爵家令嬢にぞっこんだった間抜け共は決して無能な訳ではない

誰があの女を殺したか

そろそろ勘づいた頃だ


「失礼」


研究室に客人が現れる

ノックもせず入室するとは礼儀がなっていない

が、気分がいいので歓迎しよう


「やぁ、啓蒙な神殿。何用かな?」


「こんにちは狂った魔術師殿。彼女を殺したのは貴方ですね」


いきなり本題

しかも断定系

彼にしては話が早い

良いことだ


「その答えに何の意味があるね?」


「彼女の無念を晴らすことができましょう」


敵意とか殺意とか騎士と違って引きこもりの俺には察知できないが、今の彼は間違いなく殺気を俺にぶつけている


「敬虔なる使徒が復讐!あぁ、なんて嘆かわしい!彼女は信仰深かった君すら変えてしまうのか!」


「貴方は彼女が死んでなんとも思わないのですか?貴方も彼女に救われた一人でしょうに」


「救われた?救われただと!?こいつは滑稽だ!賢い君なら気付いているはずだ。彼女は真の意味で君を救っていない。彼女の言葉は耳触りの良いだけの心にもない虚言だったと、全部、嘘だったと」


見当違いもいいところだ

俺はあの女に救われたことなど一度もない

寧ろ、あの女は俺から大切なものを奪っていった

だから、俺も奪ってやった

あの女が一番大切な、自分の命を


「……それでも、彼女は私を救ってくれたのです」


「人を決して救わぬ偶像と違ってか」


「神を愚弄するのですか」


「人間が作り出した自分に都合良い存在を敬えというほうが俺には無理だね。そんなことより彼女だ。君は賢い。神に祈らずとも彼女に依存せずとも生きていけるだろう?」


「……」


「だんまりか。まぁ、予想通りだ。さて、君はどうする。愛していた彼女を失い、復讐のために神の教えに背くのか?」


「私では貴方に敵わない。王子殿下や伯爵、騎士殿が貴方に罰を与えるでしょう」


「あぁ、そうだろうね。そうだろうさ。明日にも彼等は俺を殺しに来るだろう。証拠もないまま俺を殺すだろう。実に滑稽だとは思わないか?」


「貴方は狂っている」


「あの女の思い通り馬鹿になってたお前等こそ狂ってるさ」


将来が約束されている神官殿は無言で俺を睨み、研究室を出ていった

俺はそれを見送った

有能な者達を駄目にしていたあの女はもういない

この国は平穏を取り戻すだろう

俺という仇を討つことで

国を挙げて俺を殺そうとするだろう

王子殿下は国を纏め挙げて俺を裁くだろう

騎士殿は国の軍を指揮権を握り討伐に出るだろう

伯爵は市民を煽動し、国民を味方に付けるだろう


「これは、平穏は望めないなぁ」


笑いが込み出る

俺は平穏を望んでいた

なのに、今は楽しくて仕様がない

誰のせいで俺は変わってしまったのだろう


『私はヒロインなのよッ!?なんでこんな目に遭うのッ!?選択肢は間違えてないッ!そもそもこんなルートなかったじゃないッ!こんなのおかしいわ!おかしいわ!おかしいわ!おかしいわ!』


何もかも、あの女の最期があまりにも滑稽だったのが悪い



魔術師がどうなったのかは皆様のご想像にお任せします

前日譚も後日談も皆様が作るのです

想像するのです

お兄さんはそれを読みたいです(なんでさ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ