4.
今日は、クリスマス。
病院内でクリスマスパーティーがあるらしい…
僕は行く気無かったんだけど、叶が
「にぃにと行く~」って可愛く言うもんだから今日は勉強を止めてクリスマスパーティーに行くことにした。
クリスマスパーティーはみんなの体調を考えてお昼にある。
僕らはお昼ご飯を食べてすぐに、急かす叶をなだめながら、手を繋いでロビーに向かった。
兄貴には、
「無理するなよ。楽しんでおいで~」って笑顔で送ってくれた。
「メリークリスマス。今日は楽しんでね」ってサンタさんが登場した。
叶は目をキラキラと輝かせて、
「にぃに、前行こう~前!!」って僕の袖を引っ張った。
だから僕は
「行っておいで」そう言って、前に駆けていく叶に笑顔で手を振った。
「今からサンタさんからプレゼントがあるよ~。良い子のみんなは前においで」ってサンタさんが手招きした。
「にぃに、にぃに」って叶は僕と一緒に行きたいみたいで、僕の元に戻ってきた。
「はいはい。行こうな」そう言って僕は叶と手を繋いで、小さい子ばっかり居るサンタさんの前に行った。
「メリークリスマス。はい、プレゼント」そう言ってサンタさんは叶にプレゼントを渡した。
僕にも渡そうとしたけど、恥ずかしくて断った…
病室に戻りながら、僕は
「叶、楽しかった?」って話しかけた。叶は
「うん!にぃにありがとっ」そう言って笑ったから、僕は凄く幸せな気持ちになれた。
叶はテンションが上がったみたいで、貰ったプレゼントをぶらぶらさせながら走ってエレベーターのボタンを押しにいった。
「か~な、走ったら危な…ほら大丈夫?」叶は僕が言ったそばから派手に転んだ。
叶が泣き出しそうになっていたから、心配で走って叶のそばに寄って行った。
「叶大丈夫?」僕は叶の目線に合わせて膝を曲げた。
叶は目をくりくりさせて、僕を見つめていた。
何で転んだのか分からないみたいで…
そんな叶が可愛くて、僕は笑いながら叶を抱きしめた…時だった。
いきなり胸の締めつけられるような痛みが僕を襲った。
息も苦しくなって、僕はそのまま床に倒れこんだ…
幸い軽い発作で、すぐに薬を口に放り込んだからだいぶ楽になったけど、叶をびっくりさせたみたいで、叶は
「にぃに、にぃに…」って泣いていた。
そのせいか軽い人だかりが出来ていて、その中にはサンタさんも居た。
僕は叶をそっと包み込むと、
「びっくりさせてごめんね。にぃにもう大丈夫だから」そう言って笑った。
「大丈夫ですか?先生とか呼んで来ましょうか?」サンタさんにそう言われて、僕は断った。
あんまり大事にはしたくなかったから…
でも歩くのはきつそうだったから、近くにあった車いすを持ってきてもらうことにした。
僕がその車いすに座ると、サンタさんは
「病室までお送りしますよ。どこです?」って言って、車いすを押し始めた。
僕はありがとうございます!!ってお礼を言ってから、病室の場所を伝え、まだ泣き止んでいない叶を膝の上に乗せた。
「叶ごめんな、びっくりさせちゃった?」僕がそう言うと、叶はこくんと頷いてそのまま僕を見上げた。
(可愛い~)なんて思ったのは置いといて、
「にぃにもう大丈夫だよ。ごめんね~」そう言って叶を抱きしめた。
「悠…くん、どうしたの!?えっサンタさん?」僕が病室に着くなり、兄貴は色々な事に驚いていて、僕は笑いそうになった。
「えっとね…サンタさんには、ここまで送って貰ったの」多分兄貴があんまり気にしていなさそうなことから教えてあげた。
だからかな?兄貴に、
「それはそうだろうけど…悠くん、何がおこったの?」って怒り気味に聞かれた。
(ちょっといじわるだったかな…?)
「さっき発作おきた」僕がそう言うと、兄貴はさっきの怒り顔から一変、心配する主治医の顔になった。
「もう大丈夫なのか?…って大丈夫じゃないね」そう言って兄貴は僕を車いすから下ろし、ベッドに寝かせた。
「大丈夫…薬飲んでもう苦しくないから」僕がそう言うと、兄貴は
「薬は一時的なものだって言ってるだろ?兄貴は悠くんを心配してるんだぞ!?ほら叶ちゃんも…」そう言われて叶の方を見ると、叶はサンタさんの白い髭を触って遊んでいた。
兄貴は叶の名前を出せば僕が分かってくれるって思ってるんだよ…
僕が叶にぞっこんだから…
「はいはい、分かりました~。大人しくしてればいいんでしょ?大人しく…」僕はそう言って、布団に丸まった。
そんな僕にサンタさんは
「メリークリスマス」そう言ってプレゼントを渡した。
「えっ僕に!?」
「そうだよ、開けてみて?君には少し子供っぽいかな?」そう言われたので、僕は貰ったプレゼントを開けた。
中には戦隊もののタオルが入っていて、僕は
(子供っぽいよ…)そう思いながらも、なぜか目からは涙が溢れていた。