第五話
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どうして僕がまだ生きているのかなあ。
想が帰った後、僕は虚ろな目をして窓の外を見た。
最初にこの病気にかかったのは僕だ。最初に死ぬのも僕だと思っていた。
それが妥当だと思っていた。だけど、僕は今でもこうして息をしている。
「…………なんて、そんなこと思ったら皆が怒るか」
クスッと笑う。
皆の怒っている顔も声も容易に想像できて、なんだか可笑しかった。
――杜希。
「…………?」
不意に、聞き慣れた声が僕を呼ぶ。
……幻聴? 聞こえるはずのない声に僕は大いに戸惑った。
――杜希にーちゃん、聞こえる?
「……陽斗?」
『じゃーんっ! 皆いまーす!!』
『杜希、久しぶり』
『昨日ぶりだな!』
「皆……? なんで?」
ああ、そうか。僕も死ぬのかな?
皆が、迎えに来てくれたのかな。……あはは、なんて幸せ者だろう。
『あのね!! 杜希にーちゃんに話があるんです!』
『そう、残念ながら迎えに来たわけじゃないぜ』
『ああ、でも……半分来たってのも正解? まだだけどね』
迎えじゃない? 話ってなんだろう。
僕が不審そうに皆の方を見ると、皆はニコッと笑って言った。
俊がふわりと僕に近づく。
それから僕の耳元にそっと口を寄せて言った。
「…………!!」
皆が僕を見て悪戯っぽく笑う。
『後は杜来に任せるからね。ちゃんと届けてね』
『杜来にーちゃん、任せました!!』
陽斗と裕也がにっこり笑って僕にソレを渡す。
ああ、早く届けないと。
届かなくなるとか、本当にありえないから。
思えばずっとそうだった。
想はそういうやつだ。
何も言わない、何も教えてくれない。皆と一秒でも多く大切な思い出を刻むために。
皆が気を遣ってしまわないように、普段通りでいられるように。
それに甘えていた僕らも僕らだけど。
……確かにそれに僕らはどれほど救われただろうか。
伝えなくちゃ、溢れるから。
身体の奥底から、衝動が駆け抜ける。言葉がもう喉元まで来てる。
言わなくちゃ、大切なことだから。
『行って来い』
俊に背中を押されて僕は駆け出した。
伝えるんだ、想に! 皆の悲しみを一人で抱え込んでいる、馬鹿な兄に!!
「待ってて、想。絶対間に合わせるから」




