表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/27

金色魔獣

エリクシルの金色魔獣


人族と魔族の間で大きな戦争が続いていました。

人族が暮らすアクセル王国と魔族が暮らすフェン王国。

その中ここ、エリクシルは戦争に負けつつあるアクセル王国の領地の一つである。

徐々に下がっていく前線の中ついに目の前まで魔族が押し寄せてきています。

エリクシルの領主は困りました。いつまでも続く戦争により、領民が疲弊していたのです。常に物資も金銭もカツカツでいつ潰れてもおかしくありませんでした。

ですが、エリクシルを超えられるとアクセル王国の聖地と言われる場所、コタテが近くすぐに制圧されてしまいます。それだけは塞がないといけません。

土地は枯れ、領民の表情は死に、いつエリクシルが滅んでもおかしくない状況でした。

エリクシルの土地に空からある物が降ってきたのです。鎧をまとった獣が。兵士5人分はありそうな金色の獣が。

こんなときに魔物が!!と兵士は焦りました。だが、その獣はこう言いました。

「後は任せろ」

短く一言、そう言うと最前線に飛び込みました。

金色の獣は己の一本一本が大剣のような爪でフェン王国の兵士を切り裂き、槍のように尖った尻尾の先端で貫き、牙の生えた顎で全てを噛み砕きました。

体を返り血で赤く染め、突き出された剣を砕き、矢を鎧で弾き、まさに一騎当千、いや一騎当万と言っても差し支えがないほどの戦果をあげました。

1日でフェン王国の兵士は大きな損害を与えました。そんな損害を与えた獣をエリクシルの兵士は、領民は、領主は恐れ石を投げつけました。

だが獣は笑いました。そしてこう言いました。

「また今度」



それから数年間はフェン王国からの侵攻はありませんでした。

アクセルの王国は戦争を無くすために尽力を注いでいたため、アクセルから侵攻するという事はありませんでした。

徐々に戦争は終わったという感覚が広がってきた時です。

フェン王国は大規模な軍を、その上『魔王』と自身を名乗る全身鎧の大きな魔族が5体の龍を従え侵攻してきたのです。

少しブレスを放つだけで土地は抉れ、人は弾け飛び、絶望としか言いようのない状況でした。

そこにまた現れたのです。金色の獣が、今度は大きな剣を携えて。

獣は吠え、己の体躯よりもずっと大きな龍に襲いかかり、切り裂きます。

ブレスがこれば後ろの人間達を守る為に己の右腕で防ぎ、右腕が無くなったら胸や背中で防ぎながら左手で剣を振るい続けます。

金色の鎧は砕け、見るからに満身創痍とわかる中魔獣は龍を倒し切ります。

そのとき魔王はこう問いました。

「貴様、なぜそこまでして人間を守るのか??」

そう言うと魔獣は笑いながら、

「そっちの方が面白いに決まっているだろ??

魔族と人族が手と手を取り合って過ごす方がこんな糞と血の世界より断然いいだろ」

と言い切ります。その言葉に魔王は何かを突き動かされたようで、

「ならば私を倒してみろ!!全ての責任は私が取る!!

私が倒れれば貴様人族の勝ち、貴様が倒れれば私ら魔族の勝ちだ!!

都合はいい話かもしれんがもしお前らが勝ったならばせめて私以外の魔族を生かしてくれ!!侵攻もその他も全て私のせうだ!!私の責任だ!!」

そう言うと魔獣は、

「ならこっちも約束してくれ!!もし俺が負けたのであれば、虐殺や蹂躙をすないと!!」

「良かろう!!まずは対等の条件にしようではないか!!」

そう魔王は言うと自分の手で自分の右腕を引きちぎります。そして自分に何度も何度も拳を叩き込み、着ていた鎧の大半を砕きました。

「「いざ尋常に!!!」」

魔王も魔獣も左手に握った剣で戦いを始めます。

純粋な力と力のぶつかり合い、血は飛び散り、破片が飛び交い、砕けつつある剣で一歩も譲らない攻防を繰り広げる。地上で、空中で、交わりあう二人の姿に人族も魔族も目を奪われます。

二人の剣の舞に心を掴まれ、武器を落とす者も少なくない。

兵士は、領民は、領主は後悔をしました。魔獣に石を投げつけた事を、そして始めました。応援を。

声でなく様々な音が入り混じります。

防具を叩いて太鼓に、槍に服を巻きつけ応援旗に、体に血で『頑張れ!!』と書く者もいる。

「なぁ魔王!!これほどまでずっとこの瞬間が続けばいいなと思う時はあったか??」

「無いに決まっている!!今、この瞬間が最高に楽しい!!」

「俺もだ魔王!!」

もはや刃の部分などない剣で殴り合う。

「何故お前は侵攻を始めた!!」

「私は昔、平和な国にいた。だが気づいたらこの世界で生まれた。

産んでくれた両親は戦争に巻き込まれて死に、友人も次々と死んでいった」

二人の動きが止まる。

「私はな??前のとこでは人間だったのだよ。だが生まれ変わって魔族となった。

そのせいで、憎み切れないのだよ、人間を。

邪魔をするのだよ、平和で幸せだった人間の時の記憶が。

ただ復習の為に力を振るった方がどれだけ楽だったろうかいつも思うのだ。だが、それが出来ないのだよ。

だから俺は戦争を終わらす為に戦争を始めたのだよ」

「そっか...なら尚更負けられないな!!」

魔獣は笑う。

「俺もな、平和な国で生まれ育ったのだよ。そしてある人物から助けてくれ、最善の結末でこの戦争を終わらせてくれって言われたんだよ。

誰だと思う??この世界の神様だよ」

剣を捨て、天を指差して言う。

「サイタマケンチチブ出身の勇者志望、金色魔獣。

世界を救う為にお前を倒す!!」

魔王も剣を捨て、天を指差して言う。

「ヤマナシケンオオツキ出身の魔王だ!!

世界を統一する為にお前を倒す!!」

二人は同時に走り出し、拳を握りしめ、同時に胸を貫く。

「グッバイ、心優しき魔王よ。来世では仲良くしてぇなぁ」

「グッバイ、勇者金色魔獣よ。チチブとオオツキは一生仲良くできねぇよ」

二人は同時に倒れました。

金色魔獣の鎧は消え、体が小さくなり、満ちた顔をして息を引き取った青年が、魔王の鎧は消え、体が小さくなり、満ちた顔をして息を引き取った角の生えた青年が現れる。



この日を持って、魔族は全面降伏をし、人族の王達はもちろん沢山の反対もあったがそれを押し切り、賠償金もなにも取らず、常に平等の関係でいようと約束しました。




「お疲れ様でした〜」

「お疲れですわ」

図書館でメルルがこの世界で一番有名な本を朗読してくれた。

俺がメルルに

「なんかご本読んで読んで〜」

とせびった為である。

この世界に来て1ヶ月、その間何してたって??

朝起きて、朝練中の騎士団に稽古をつけて朝飯食って、メルルの魔法講座を受けて(一切進歩していない)昼飯食って、やる事無いからメイド服来てメイドさんのお手伝いをして夕飯食って風呂入って寝る。

そんな生活を延々送ってる。何故メイド服を着るかって??

いやまぁ、200人の教官とか普通に考えて無理じゃん??だから四日目あたりから朝練は隊長格などを訓練し、そこからうまいこと汲み取って残りを訓練してもらっている。

そんで魔法のトレーニングというか魔力操作は一切進歩していない。

魔力量がアホほどあるせいか微調整が全くできず、数個水晶玉をパーンしてからは板に様々な線を引いて、魔力が通ると光る、魔力を操作すると思い描いた線が光るようになっている。

かなり安く、3歳から練習できる物である。つまり、俺の魔法技術は3歳ぐらいということだわ。

午後からはメルルも仕事がある為暇だな〜て思っていた時コルネとコロナという双子メイド(9歳)が洗濯物を運んでいたんよ。

それでピーンと来て、いたずらに大きいサイズのメイド服ちょーだいと言ったら二人は協力してくれて俺の入るサイズのメイド服とニーソと女物のパンツとウィッグを貸してくれた。

ちなみに過去に数回女装経験ある為化粧はばっちしである。お手軽にクソ生意気高校生から体がゴツいメイドに大変身。

早速メイド長がいる場所に向かうと途中でフランチェスカやメルルとすれ違う。

「あなた、見慣れない顔ね」

「はっはじめまして....」

フランチェスカは挨拶を、その背中に隠れて小さい声でメルルが挨拶する。

「新人メイドのブービーちゃんでーす!!どや、わかんねぇだろ!!」

ニッコリしながらピースをすると二人はブッと吹き出す。

「何をしていますの!!」

「何してるの...」

「暇だからメイドの仕事でも手伝おうかと思ってメイドになってるんよ。

ちなみにこれら全てはコルネ、コロナ姉妹に用意してもらったから盗んではないぞ!!」

胸を張って言う。シリコンの胸が自己主張をする。

「私よりも胸が大きい」

ジッとメルルが見つめてくる為、

「偽乳には見栄と虚構しか詰まっていない、真なる乳の前にはひれ伏すのみ。

それに貧乳も並乳も巨乳もみんなおっぱいでいっぱいで素晴らしい物!!

じゃ、アディオス!!」

メルルは右腕を振り上げため、身体能力をフルに発揮して逃げる。右腕を上げる=攻撃態勢に移行である。

ちなみにフランチェスカは俺のセリフで顔を真っ赤にしていた。



メイド長のいる部屋の前でノックをする。

「入りなさい」

そう言われた為、

「新人メイドブービーちゃん登場!!ご主人様へ萌え萌えキュン!!」

「ブフッ!!」

口に含んでいた紅茶を吹き出すメイド長。

「ブービーさん、いったい何を...」

「暇だからメイドのお仕事のお手伝い〜」



そんな一幕があり、現在は主に裁縫と料理を担当している。

裁縫は前の世界で得意だったし料理はあまりやった事がなかったからせっかくだしって感じである。

つまり、1ヶ月基本的に遊び倒して金もらっている最高の職場である!!尚、メイドさん達や騎士の皆さん及び領主一家は俺のメイド姿を気に入り、後日部屋のクローゼットにメイド服一式&女物の下着が大量に入れられていた。



「と、まぁお前も知ってると思うがこんな感じやね、最近の出来事は」

「うんうん、説明及び感情表現は支離滅裂、話は脱線ばっかで通常運転すぎて安心だな」

夜中、布団の中幼女神と通信をする。客人を床で寝かし続けるのはさすがにマズイっしょって事で誰かが街で庶民用布団を買ってきてくれた。

「まぁ、なんで急にこんな事を言ったのかもうわかってるだろ??」

「お話の金色魔獣と魔王が転生勢って事でしょ??大正解〜」

「そりゃ秩父と大月とか話に出てきたらなぁ...

ちなみに何で二人を別々のサイドに置いたんだ??」

「怒らないで聞いてくれる??」

「あぁ、大丈夫だ」

そう言うと幼女神は少し深呼吸を繰り返して、

「世界を動かす為だよ。

世界って刺激がないと今の状態で満足しちゃって動きが全くなくなるんだよ。そうなるとどんだけ高度な文明だって徐々に滅んでしまうんだ。

それを防ぐ為に例えば大災害などをこちらの手から引き起こすんだよ。

疫病が流行れば疫病克服の為に世界が動くだろ??大きな地震が起これば復興の為に世界が動くだろ??

しかもその動きは今後長いこと続くよね。予防や予測に。

まぁ当然差別が起きたり、戦争が起きたりするのだけどね。しかもその影響で世界が滅んじゃう時もあるんだよ。

でもね、ただの滅亡か、緩やかな滅亡か、それとも少ない犠牲で世界が回り続けるのか。

そんな選択肢を突きつけられた時、君ならどれを取る??」

「まっ、俺なら三つめだな。滅亡なんて最も面白く無いし、それにこれまでずっとそうしてきた」

「だろうね、だから言い方は悪いんだがあの秩父と大月には犠牲になってもらった。その分手厚いアフターケアもしたし、この話をしたよ。そして許してもらった」

「じゃぁ何で俺はこっちに飛ばされたんだ??魔王と共倒れしろとか??」

「いんや??隔離世界と言っただろ??

お前の今の状態、というよりお前の実が危ないんだ。

不足の事態すぎていつ何が起きてもおかしく無い。爆発するかもしれない、一人でひっそりと消えるかもしれない、世界ごと消滅するかもしれない。そのような事態はどうやっても防ぎたい、あの世界が崩壊するのは余りにも惜しい」

「まぁ自分のせいで故郷爆発とか一番胸糞悪いからなぁ...

そんで結局俺は今まで通り遊び続けていいのか??」

「いいよ、でもできたらもし世界征服とか世界崩壊とか狙う連中がいるならブチのめして欲しいな??

ここまで話しておいてアレだけどいらない命なんて無いからね。

消え続ける命を見続けるのは好きでは無い」

「あいあいさー。あと一つだけ聞いていい??」

「どうぞ、答えれるところまでなら」

「あの糞野郎とキモオタはどうしてる??」

「二人とも元気に異世界に行ってるよ。

片方は神様の気紛れで、もう片方は勇者としてね。

かなり好き勝手に世界を動かしているよ」

「あいつらは幸せか??」

「君は今、幸せか??」

「あぁ」

「ならそういう事だ。安心したまえ」

「つかさっきからなんなのその喋り方、すごい違和感」

「最近銀河英雄が出てくる本にハマっちゃって〜」

通信を切って寝た。

すごい、真面目回と行きたかったけどついつい最後まで持たなかったイリンです。

本当は主人公魔法得意マンしたかったのですが半田ごてでの作業が上手いこといかなさすぎてついついやっちゃいました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ