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大江戸? 転生録 ~ファンタジー世界に生まれ変わったと思ったら、大名の子供!? え? 話が違わない? と思ったらやっぱりファンタジーだったで御座候~  作者: 鳳飛鳥
知の都と東方料理 の巻

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九百六十九 志七郎、皆の技能を知り組分け終わる事

『剣術(草部(くさかべ)一刀流)五』『槍術(鷹千(たかせん)流)五』『鍬術(大根(おおね)流)五』『戉術(坂田流)五』『十手術(無二流)五』『薙刀術(弁慶流)五』『短弓術五』『砲術五』『弓術(払魂(はらたま)流)五』『騎馬術五』『騎乗戦闘術五』『投擲術(手裏剣)五』『忍術(生田目(いため)流)五』『錬玉術五』……等など列挙して居るだけでも日が暮れそうな程の技能が水晶に浮かび上がる。


「こりゃすげぇな……此方は見事な遊び人(ガダバウト)だ。どれか一個でも六まで上がってりゃサムライと言い張れなくも無いんだが……全部五ってのは流石になぁ? しかしこんだけの技能を全く偏り無く五で揃えてるってのも別の意味ですげーわ」


 武光は生まれ持った技能の有る『加護持ち』でこそ無い物の、習った物事を人よりも圧倒的に簡単に覚える事が出来る万能の秀才とでも言うべき才能を持っている。


 技能レベル五、火元国風に言うならば五段と言うのは、その技術に置いて一人前の基準と成る数値で有り、道場なんかでは『奥伝』に至る為の試験を受ける事が出来る一つの目安とされている数値だ。


 学んだ技能の全てで其処に至っていると言うのは確かに凄い事だろう、けれども……確かに支部長さんの言う通り、一人前に至った時点で満足してしまいその先へと踏み込む努力をして居ないと取られても仕方が無い数字と言えるかも知れない。


「うむ、こうして数字で見ると余は確かに……一人前と言える程度の技術を身に着けたと言う時点で満足してしまって居たやも知れぬ。先ず此処から余が伸ばすべきは折角学会へと留学して居るのだから精霊魔法からであろうな」


 一つの技を極める道では無く、相手に有利を取れる技術が有ればソレを使う……と言うのが武光の今の戦闘方針(スタイル)らしく、器用万能と言えば言えなくも無いが数値上では器用貧乏の範疇に入る様だ。


 ちなみに西方大陸(フラウベア)の冒険者は、一つでも六に至った技能が有ればソレで一流を名乗る基準に成るらしい。


 とは言えソレはこうした都市国家に住む者の基準で有り、未開拓地を切り開く事を目的とする超一流と言えるのは主技能が十を超えている者が、多数集まって徒党(クラン)を組んでやっとの事だと言う。


「次はそっちの嬢ちゃんの番だな……おお、やっと此方の冒険者の基準に当て嵌まる者が出てきたな」


 続いて(ラム)の鬼切り手形を水晶に翳すと、支部長さんはやっとマトモな物を見た……と言わんばかりの表情でそんな台詞を口にする。


 表示されている技能は『短弓術七』『騎馬術九』『騎乗戦闘術七』『罠狩猟四』『家畜飼育八』『馬術調教七』『解体三』『料理三』『読書四』『算術四』『精霊魔法三』と、流石は騎馬民族出身と言う感じだ。


「うむ、コレならば立派に弓騎兵(ホースメン)を名乗るには十分な数字だの。レベルも十九は歳の割には高いが高すぎると言う程では無い」


 一般的な冒険者のレベルと言うのは年齢=レベル位で推移するのが普通らしく、十代前半で三桁に届いている俺が異常扱いされるのは当然の事なのだろう。


 なお武光の方はレベルに付いては言及して居なかったが、彼奴は彼奴で五十一と此方の大陸の冒険者ならば一流所と言って良い数字らしい。


 なので逆にそのレベルまで行って居て、サムライに至らない事に驚いたと言うのが本音の様だ。


「とは言え幾ら弓騎兵と言っても近接系の技能が全く無いのは宜しく無いのう。せめて短剣(ダガー)の扱い位は覚えて置いて損は無いぞ?」


 蕾は一応弓とは別に腰に短剣を下げては居るが、ソレは技能に有る通り解体用に使っている物である。


「んだなー解体用の短剣は普段から持ってる訳だし、ソレを得物として扱える様にしとくのも悪い()っちゃ無ぇだらなぁ。うんお花先生の(とこ)に短剣術教えてくれる人居ったら習うだよ」


 一応、彼女の持つ短弓術の中には矢を手で持って扱う近接戦闘技術が有る事は、稽古の場で見ているので知っては居るが、ソレは飽く迄も弓の間合いの内側まで入り込まれた時に使う最後の手段としてである。


 ソレを行う為に最後の矢を恒に残しておく事を考える位ならば、素直に短剣を扱う技術を学ぶ方が建設的だろう。


「ちなみにだが弓騎兵ってのは狩人(ハンター)の上位職では有るが、他の基本職との複合じゃぁ無い純粋な意味で上位に有る職業(クラス)で、馬を維持する経費まで含めて考えりゃ普通の冒険者にゃぁ殆ど居らん珍しい(レア)職業じゃぞ」


 ……火元国では騎獣の中では一番扱いやすく維持費も安いとされている馬だが、小普請組ではソレだって買うのも飼うのも難しい程度には値の張る物で有る。


 特に戦場へと乗り入れる事が出来る様な、戦闘用に調教された軍馬ともなれば、その維持費は一人扶持程度では全然足りない程だ。


 猪山藩(ウチ)で仁一郎兄上が調教した軍馬は、兄上が馬比べや戦場で乗る物以外は、家臣に希望者が居れば格安で払い下げられるが、そうでない場合には他所に売り出されるのだが、その時に付く競り値は時には千両(約一億円)を軽く上回る事も有ると言う。


 流石に其処までの名馬を買う必要は無いにせよ、戦場でもビビらずに戦える馬ならば安くても五十両(約五百万)は出さねば買う事は出来やしないし、ソレが人よりも大量の食餌を必要とするのだから、維持管理費するだけでも馬鹿に出来無い出費に成る。


 その辺の事情は西方大陸(此方)でも然程変わらないらしく、一般の冒険者で馬持ちと言うのは中々居らず、稀に精霊魔法使いで馬型の霊獣と契約して居る物が居る程度なのだと言う。


「次のお嬢ちゃんは……うぉ? ガチガチのニンジャだの。コレもまた此方じゃぁ珍しい職業じゃな。一応西方大陸にも、アマクサシティって場所の近くにゃ忍術を教える隠れ里ってのが有るらしいって噂は聞いた事ぁ有るし、実際あの辺ならそこそこ見るがね」


 蕾の職業別けが終われば次はお忠だが、此方は此方で『忍術(生田目流)七』『体術六』『投擲術(手裏剣)七』『罠狩猟七』『剣術(忍者刀)四』『組討三』『解錠術四』『追跡四』『尋問二』『拷問耐性四』等々と当に忍者らしい技能が列挙されている。


 彼女の忍術が生まれ育った御家の流派では無く、御庭番衆の流派で有る生田目流なのは、家に引き取られてから学んだ術の方が圧倒的に多いと言う証左と言えるだろう。


 なお彼女の(レベル)は二十四と蕾より少し高いのだが、此れは武光の手足として江戸で悪事を働いて居た悪徳商人や悪役人なんかを探ったりする事で得られた経験の差が出たと言った所だと思われる。


 火元国では忍者とは忍術使いの中でも『忍衆しのびしゅう』に所属する者を指す呼び名で乱破(らっぱ)素破(すっぱ)とも言われるが、此等は基本的に蔑称として扱われており、余程の事が無ければ口にしては行けない言葉と言う扱いだ。


 対して忍衆に所属しない野良の忍術使いや、お忠の様に武家に所属する忍術使いは、忍者とは呼ばれず前者は『忍術使いの鬼切り者』後者は『忍術使いの武士』として扱うのが通例である。


 ……まぁお忠の場合は猪河家の養子(やしないご)では有るが正確に言えば武士階級の者では無いので、武士としては扱われないが忍者と呼ばれる事も無い。


 この辺はサムライと侍が外つ国と火元国で扱いが違うのと同様に、ニンジャと忍者も別物だと認識するべきなのだろう。


「ああそうそう、ニンジャの嬢ちゃんを連れてアマクサシティに近づく様な仕事は取るなよ? 彼処のニンジャ達は非常に排他的でな、他所のニンジャが来ると殺されこそしない物の野郎は裸に剥かれて盛り場に、女は裸に剥かれた後に宿屋へポイってな感じらしい」


 ……ああ、うん、成る程、以前忍衆同士が争った場合の決着方法に付いて見聞きする機会が有ったが、その際に聞いた『依頼が打つかった時に決着方法』である『閃』と呼ばれる戦いを、余所者には容赦無く仕掛けてくるって事だな。


「成る程、そのアマクサシティと言うのが彼奴等の縄張りと言う事で御座るな。まぁ他所の忍衆が根を張る縄張りに踏み込めばソレを排除しようとするのは、火元国でも良く有る事に御座る、御助言感謝致す」


 元とは言え彼女は一つの忍軍を統べる頭の娘だったんだから、忍衆同士の決闘である閃や縄張り戦に付いて知っていても不思議は無い。


「んで、此奴等が(レッド)の婆さんの弟子で、相応の仲間と仕事を見繕って欲しいって話で合ってるな? んじゃ面倒事はサクッと終わらせるに限る……んだが、悪いが今日は一寸丁度良い仕事が()ぇんだわ。暇なら豚鬼(オーク)でも狩って来てちょ」


 そう言う支部長さんの口ぶりは本当に済まなそうな物で、嘘の気配は全く無い物に見えるし、俺の刑事だった頃の勘も騙そうとして居る気配を察知する事は無かった。


「そう、じゃぁ仕方ないわね。じゃぁこの子達を投入出来そうな依頼が有ったら私の所まで連絡して頂戴な。其れ位の融通を効かせてくれる程度の貸しは有った筈よね?」


「アンタにそう言われてNoと言える奴は此の街にゃぁ居ねぇよ。ソレこそ市長だって本気でアンタを怒らせる様な真似は出来ねぇてぇの。んじゃ此奴等のお守りも出来そうな信用出来る連中も纏めてピックアップして置くから二、三日待っててくんな」


 本当に間が悪かっただけなのだろう、支部長さんはお花さんにそう言うと、執務室が有るのだろう上階へと続く階段へと向かって踵を返し歩きだすのだった。

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