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大江戸? 転生録 ~ファンタジー世界に生まれ変わったと思ったら、大名の子供!? え? 話が違わない? と思ったらやっぱりファンタジーだったで御座候~  作者: 鳳飛鳥
知の都と東方料理 の巻

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九百六十八 志七郎、冒険者の基本職を知り組分けされる事

「なんじゃなんじゃ、朝っぱらから随分と煩いのぅ。(レッド)の婆さんが来たならサッサと此方に案内すりゃ良いじゃろが」


 俺またなんかやっちゃいました? と言いたく成るような空気をぶち壊し、そんな台詞と共に姿を現したのは、猿系と思しき獣人故に一目で年齢を言い当てるのは難しいが、ソレでも可也の高齢を思わせる白髪に覆われた者だった。


「あらシーゲル、態々貴方の方から出てくるなんて珍しいわね? 何時から支部長の腰はそんなに軽く成ったのかしら? 私が来た位じゃぁ絶対に執務を中断してまで出てくる様な人じゃぁ無かったのに」


 年老いた猿が見るからに高級感の漂う白いジャケットを纏い、高そうな葉巻から紫煙を燻らせる……そんな姿を想像して頂ければ恐らくその容貌は伝わるだろう、シーゲル支部長と言う人物はそんな姿をして居た。


「儂の腰が軽く成ったなぁ火元国から、今までじゃぁあり得ない程の留学生が来る様に成ってからじゃよ。あの連中は殆どが冒険者組合(ギルド)が提示して居る職業(クラス)に当てはまらねぇんだから、受付嬢(ギルドガール)達だけに対応を任せる訳に行かんのよ」


 曰く冒険者と言うのは基本的に一党(パーティ)徒党(クラン)単位で行動する者達で有り、その殆どが一芸特化の専門家(スペシャリスト)で自分に出来ない事は仲間と協力して切り抜けると言うのが普通なのだそうだ。


 しかし火元国の武士は『武芸十八般全てに秀でてこそ(まこと)の武士』と言う思想が強い事も有り、その多くが様々な技能を持つ万能家(ゼネラリスト)で有る事が多い。


 だが冒険者組合に所属する者達は万能家を嫌う傾向が有るのだと言う、何故ならば一芸専念で鍛えて来た者に比べて、有れも此れも……と様々な技術を摘み食いする様な形で鍛えて来た者の大半は万能家と言う程に成る事が出来ず器用貧乏で終わるからだ。


 冒険者組合では主と成る技能とソレに関連する技能だけをトコトン鍛え、ある程度一芸に秀でた……と言える(レベル)に達してから、追加で補助と成る技能を二つ三つ身に付けさせると言うのが主流の育成方法なのだと言う。


 故に多数の技能を摘み食いしたような技能構成の者は『遊び人(ガダバウト)』と呼ばれ、冒険者の鼻摘まみ者……と言う様な扱いを受けているらしい。


「遊び人が必ずしも悪いって訳じゃぁ無ぇんだがの。儂だって現役の頃は遊び人扱いだったが、其処から腐らずに努力を続けて様々な技能をきっちりと実用出来るレベルまで鍛え上げた結果、儂はサムライを名乗る事が出来る様に成ったんじゃしな」


 侍と言うのは火元国では武士の別名でしか無いが、外つ国に置いてソレは『実用レベルの技能を複数持つ万能家』のみが名乗る事を許される特別な職業なのだと言う。


「火元国から最近来た連中はソレまでの武装商人(ポチテカ)連中とは違って、二つ三つの武術に加えて精霊魔法も使えるわ、料理やら楽器やらの芸能系の技能も持ってるのが普通だからなぁ、アレを遊び人扱いしちゃ可哀想よホントに」


 武装商人と言うのは商人(マーチャント)の上位職で、商売に必要と成るだろう『交渉』や『鑑定』なんかの技能に加えて、高い戦闘技能を持つ者がそう区分されるのだと言う。


 其処から更に精霊魔法を高い水準(レベル)で扱える様に成った者は『魔導書の主(ブックマスター)』と言う職業に変わるのだそうだ。


 冒険者組合で設定される職業は基本と成る十の職業が有り、戦闘系が『闘士(ウォーリアー)』『狩人(ハンター)』『武道家マーシャル・アーティスト』の三つ、魔術系が『魔法使い(マジシャン)』『神官(クレリック)』の二種類、技術系が『学者(スカラー)』『盗賊(シーフ)』『商人(マーチャント)』『生産者(プロデューサー)』の四種、そして其れ等全てに含まれないのが『遊び人』とされているらしい。


 そうした基本職の必須と言える技能を十分に身に着けた上で、他の職業に区分される技能を追加したり、同じ職業の技能を更に深く追求して行く道を選ぶ事で、上位職と呼ばれる物を名乗る事が許されるのだそうだ。


 例えば先程上げられた武装商人と言う職業は、商人として一人前に成った上で闘士の技術をある程度学んだ者だけが名乗る事が出来る物と言う事に成る。


 同様にお花さん一門の名乗る魔法格闘家(ウォーザード)は、魔法使いに武道家を足した物と言う事に成るし、魔法騎士マジックナイトは魔法使いと闘士を合わせた物と言える訳だ。


 この技術習得の順番は必ずしも決まった順番が有る訳では無く、闘士として修練を積んだ後に学会で魔法を学んでも良いし、逆に学会で勉強した後に武器の扱いを学んでも、両方が十分に実用的と言える範疇であれば魔法騎士を名乗る事が出来るのだ。


 そんな法則(ルール)で運営されている冒険者組合に所属する冒険者達だが、当然各基本職と其処から派生する様々な上位職と成る為の教育技術(ノウハウ)は蓄積されており、態々其処から外れた技能習得を行って行く遊び人派生職を選ぶ者は変わり者扱いされる訳である。


「まぁ火元国の鬼切り奉行所は冒険者組合と相互協力協定を結んで居るが、その辺の法則まで共有してる訳じゃぁ無いからのう。とは言え器用万能を指してサムライと称するのは火元国から昔来た留学生のイエヤス・トクガワに因んでの事じゃしなぁ」


 此処でも伝説を世の中に刻み込んでいるんだな家安公……。


 まぁ俺が知るだけでも流派は分からないが『素手格闘』の技術を持ち、難喪仙から学んだ『剣術』や『槍術』に加え、『精霊魔法』も扱えるし『料理』の腕前も割と高いと言う話だったな。


 ソレに向こうの世界で義務教育を終えて居たので有れば、『算術』なんかの学問系の技能を持っていても不思議は無い……まぁ、江戸城天守閣に描かれていた姿を鑑みると所謂ヤンキー系っぽい格好だったし勉学系技能がどれ程だったかは分からんがね。


「んで……若い娘が出しちゃアカン様な大声を上げる程の者と言うのは、どれ程の!? レベル測定不能に剣術(刀)が十四、抜刀術が八、逮捕術八、体術十二……って技能レベル十越えが有るなんて英雄級の大者じゃねぇか!?」


 水晶に表示されている技能は『拳銃術十二』『指揮八』『読書十五』『算術六』『捜査四』『推理四』『尋問四』と、初祝の際に判明して居た物も殆どが順当に成長して居る様で有る。


 更に其れ等に加えて『錬玉術三』『精霊魔法八』『西方大陸語五』『北方大陸語五』『伝承知識五』なんてのが新たに生えていた。


(レベル)測定不能ですか? 鬼切り手形にはちゃんと百八って表示されてますけれど?」


 火元国で使われている格と冒険者組合で使われているレベルが同じ物だとすれば、手形に表示されている通りの筈である。


「ああ、此処の水晶は安物でね、三桁を超えると表示出来なくて測定不能に成るのよ。だから私も組合証(ギルドカード)を更新しようと思ったら、此処じゃぁ無くて態々スプリングベルの本部まで行かなきゃ成らないのよねぇ」


 世界樹の枝を剪定した際に出た木片を使って作られていると言う鬼切り手形は、成長すれば即時的リアルタイムにその場で上がった格が表記されるが、冒険者組合発行の組合証は貢献度に合わせた金属で作られており更新しなければ表記内容は変わらないのだ。


「三桁超える奴なんざぁお前ら妖精族見たいな長命種族以外じゃぁ、本当に英雄様とか勇者様なんて言われる様な奴だけなんだよ! 支部長に任命されシーゲルの名乗りを許された儂ですら引退前は八十八だったんじゃぞ!?」


 シーゲルと言うのは冒険者組合支部の中でも地域の中核となる支部の長にだけ与えられる名誉名とでも言うべき物らしい。


 よくよく見れば胸の衣嚢(ポケット)には名札が付いており、其処に書かれた名は『サウザント・リーフ・シーゲル』と成っている、恐らくは『リーフ家』の『サウザントさん』と言うのが本名なのだろう。


「まぁこの子は加護持ちだし、英雄の卵だと言っても過言では無いわね」


 どうやらこの水晶は万大社にお布施を払って能力を表示してもらうのとは違い、加護や異能の類までは見る事が出来ない様だ、その点で異能を表示して居た口入れ屋の水晶は此処の物よりも高価な物を使っていると言う事だな。


「加護持ちって……かぁ~! 儂が支部長して居るウチになんでそんな厄介なのがこんな田舎町にやって来るかね。頼むから余計な騒動だけは起こさないでくれよ! もう二年もすりゃ後任に席を譲って楽隠居する積りだったんだからな!」


 嫌な物を見たと言わんばかりに顔を顰めそう言うと支部長だったが、残念ながらソレは叶う事の無い願いと言う物だろう、なんせ俺が騒動を起こすのでは無く、騒動の方から俺を目掛けてやって来るのだから……。


 今生に生まれ変わってこの方一ヶ月以上平穏無事と言える期間が続いた事は無い、此方の大陸へとやって来る為に乗った船の上でさえ、何度か沈没を覚悟する程の大嵐に見舞われたのだ。


 船長の吉人きっど殿は『この季節にこんな嵐は有り得ない』とか言っていたし、俺に与えられた死神さんからの試練だった可能性は零では無い。


 そんな事を考えている内に俺はサムライと言う職業を告げられ、武光と立ち位置を変わる様に指示されるのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 歳上(うえ)は祖父に兄姉、歳下(した)は武光みたいな規格外ばかりだから、本人も自己評価が高くならなくて、あんまり普段は意識しないけど、英雄の卵というか界渡りの英雄なんだよね。 こうして、客…
[気になる点] >連玉術三 錬の誤字だっけ? 一括で見たらここ含め3か所あるみたい
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