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大江戸? 転生録 ~ファンタジー世界に生まれ変わったと思ったら、大名の子供!? え? 話が違わない? と思ったらやっぱりファンタジーだったで御座候~  作者: 鳳飛鳥
知の都と東方料理 の巻

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九百六十七 志七郎、冒険者組合へと向かい娘さん絶叫する事

 お花さんの案内で連れて行かれた冒険者(アドベンチャラーズ)組合(ギルド)ワイズマンシティ支部の建物は、想像していたよりも五倍……いや、十倍位は大きな建物だった。


 俺的には前世(まえ)に数えるのも馬鹿らしく成る程に読んだ物語に出て来る様な『酒場』と『宿屋』を合わせた様な広間(ロビー)に依頼を張った掲示板と受付が有ると言う様なモノを想像して居たのだが……着いた建物は鬼切り奉行所より更に大きく立派な建物だったのだ。


 外観としては向こうの世界で言う『お米の国』とも称される西側最大の国に有る『白い家』を想像(イメージ)すると概ね間違っていない感じである。


「あの……お花さん、此処が本当に冒険者組合の建物なんですか? たかが一職能組合の建物にしては余りにも大きいし豪華が過ぎると思うんですが?」


 コレが大店が多数所属する商業組合の建物だと言うならば未だ理解が出来るのだが、荒くれ者の巣窟で有り一歩間違えば与太者の住処だと言っても間違って居ないだろう冒険者組合の建物だとは一寸思えなかった。


「あらそう? 冒険者組合は国に縛られず世界中に支部を持つ国際組織よ? 此の位の建物は持っていて当然じゃ無いかしら? 勿論、何処の都市国家でも此処まで大規模な建物を持っている訳じゃぁ無いけどね。でも此処は西海岸最大の都市だから……ね?」


 と、そんな言葉から始まったお花さんの話を纏めると、他の職能組合の大半が各都市国家毎に組織された物なのに対して、冒険者組合はスプリングベルと言う国に有る本部を中心に世界規模で展開された組織で下手な国よりも大きな力を持つのだと言う。


 その組織力は精霊魔法の総本山とも言える精霊魔法学会が鼻息で吹き飛ぶ程に巨大な物で、匹敵する組織が有るとすればソレこそ世界樹に住まう神々の中でも最も尊き八大神を崇める宗派位の物なのだそうだ。


 ちなみに俺達猪山藩の者達は基本的に氏神である『天蓬大明神』の氏子と言う事に成っているが、宗教組織として言うならば八大神を中心とした『世界樹教』の分家の分家のその末端……と言う様な扱いに成るらしい。


 そー言や天蓬大明神様って何を司る神様なんだろ? 詳しく聞いた覚えが無いな……大根(おおね)流鍬術の開祖だと言う事を考えると武神? それとも農神?


 長年猪山で暮らした事の有るお花さんも知っているかも知れないが、何となく藩主の子がそんな事も知らんのか? と思われるのも不味い様な気もするし、火元国に帰ったら父上か母上にちゃんと聞いて置こう。


「成る程な……冒険者組合と言うのは我が禿河幕府よりも巨大な組織だと言う事か。いや、考えて見れば可笑しな話では無いな。火元国で言えば鬼切り奉行所と口入れ屋を合わせた上で、国を相手に丁々発止にやり合う必要も有ると言うのならばその規模にも成るか」


 お花さんの説明で納得の声を上げた武光、その辺は流石は自称とは言え次期将軍を名乗るだけ有って、(まつりごと)に関しては俺よりも深く教え込まれている部分が有る。


 冒険者は魔物(モンスター)を相手に戦ったり、未開拓の土地を切り開くのが仕事である以上、有事の際には戦力として使われる可能性の有る者達と言う事だ。


 しかし冒険者組合が国家に対して強く出る事が出来ない程度の組織だと、国家間の戦争にも強制徴用され(えん)(ゆかり)も無い冒険者同士が殺し合わねば成らないと言う状況に陥る訳である。


「実際、組合が今の規模に成る前は色々と酷かったらしいわよ? 流石に私も生まれる前の話でその辺の事は本で読んだりしただけだけどね。まぁ当時は逆に冒険者側も依頼で行った村でやりたい放題した挙げ句山賊に転職……なんて事もよく有ったそうだけどね」


 今でこそ『大丈夫! 冒険者組合の冒険者だよ!』と言う宣伝文句(キャッチコピー)が世界中何処でも通用するし、ソレを通用させるだけの実績と実力の有る組織と成っているが、昔は相当酷かったらしい。


「まぁ、その辺の事を詳しく知りたいなら、ソレこそ図書室(ライブラリー)のマインちゃんに聞いて見れば良いわ。脚色無しの史書から娯楽小説として脚色しまくった名作まで色々紹介してくれる筈よ」


 ああ、うん、彼女ならば確かに色々と詳しい本を用意してくれるだろう……けれども色々と容赦の無い描写がガッツリ載っている本を選ぶ可能性が有る。


「武光達に史書は未だ早いから、彼女に本の相談をする時には絶対に軽め《マイルド》な奴と指定して借りるんだぞ!」


 俺は中の人が居るから耐えられたが、幾ら英才教育を受けて居るとは言え武光達は精神的には未だまだ子供だ、彼等がこの間の様な物を読めば無駄に心的外傷(トラウマ)を負う可能性は決して低くない。


「お、おう。兄者がそう言うなら、そうした方が良いのだろうな。うむ、司書殿に本を選んで貰う際にはそう言わせて貰おう」


「さて、そろそろ中に入りましょうか。未だ早い時間だから問題無いけれども、もう少しすれば依頼を受ける冒険者や、依頼人で入り口がごった返す事に成るからね。出来ればその前には話を終わらせて起きたいわ」


 武光が頷いたのを見て此方の話が一段落したと見たのだろう、お花さんはそう言うと大きな両開きの扉を押し開けて中へと俺達を先導する。


 扉を潜り抜けた中には、一寸高めな宿屋(ホテル)の広間を思わせる内装の空間が広がっていた。


 ぱっと見る限り冒険者らしき者達の姿は無く、少し奥に有る帳場(カウンター)に受付嬢と思わしき女性達が数人居るだけだった。


 此処も想像して居たのとは大分違うな……何となく「冒険者組合に子供ガキが何の用だ?」とか言って中堅辺りで頭打ちを感じ燻っている様な荒くれ者に絡まれる様な場所だと思っていたんだが……いや、此処はもしかしたら依頼人向けの窓口なのかもしれない。


 ソレならこうした広々として居て尚且つ成金趣味に成らない程度に豪華と言える内装で整えてあるのも理解出来る。


「はろー、シーゲルは居るかしら?」


 と、広間を見渡しながらそんな事を考えていると、お花さんは顔見知りと思しき受付嬢の一人に向かって気安く声を掛けながら帳場へと歩み寄る。


「此れは赤の魔女様ウイッチ・オブ・レッド! お久しゅう御座います。はい、支部長ならそろそろ執務室にいらっしゃる筈です。直ぐに面会のお手続きを致しますね!」


 どうやらシーゲルと言うのは此処の支部長の名らしい、と言うかそんな立場の人間を呼び捨てに出来るのは流石は学会でも最強(クラス)の魔法使いだと言う事だろうか?


「そうね、お願いするわ。あ、ついでだから貴方達にも紹介して置くわね。この子達は私の新しい直弟子達よ。此れから暫くは此の街で活動する予定だから見知って置いて頂戴ね」


 そう言う立ち振舞は傲慢不遜……と言うには一寸違うが、ソレでも明らかにお花さんは彼女達を自分より格下の存在として扱っている様に見える。


 恐らくは学会の様な『完全な身内』向けの対応では無く、『冒険者としての彼女』が『組合の職員』に対して向けるのが今の様な『強い魔法格闘家(ウォーザード)』としての姿なのだろう。


 この辺は俺だって町人相手に武士として振る舞わねば成らない状況であれば、強い自分を演出する事も有るのでその辺は理解出来る。


「はい! 赤の魔女様のお弟子さんで茶の(ブラウン)法衣(ローブ)を纏う方一名にグリーンが三名ですね。私は組合の受付嬢(ギルド・ガール)のフレイア・ショコラと申します。フレアって呼んで下さいね。では組合証(ギルドカード)を確認させて頂いても宜しいでしょうか?」


 人間と変わらない顔に兎の耳を持つ獣耳族(ビースチャン)のフレアさんは、年の頃は見た目から判断するに恐らくは二十歳(はたち)少し届かない位の年頃だろう。


「俺達は冒険者組合の所属では無い、だが火元国で使われている鬼切り手形で相互利用出来ると聞いている……此れで良いだろうか?」


 言いながらガンベルトから手形を外し彼女へと手渡す。


「はい、問題御座いません。では当支部での仕事及び一党(パーティ)斡旋の為、技能情報を確認し職業(クラス)を設定させて……なんじゃこりゃぁぁぁあああ!」


 そんな事を話ながら受け取った鬼切り手形を鬼切り奉行所や口入れ屋に有った様な水晶玉に翳すと……彼女は年頃の娘さんがしちゃいけない表情かおで叫び声を上げたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] なろうのテンプレ的展開だけど、今までの研鑽を考えれば順当ですね。
[良い点] まぁ元々、警察官としての人生分の技能持ちに加えて、この世界特有の氣、錬金術、精霊魔法に加護からくる試練を乗り越えて成長してれば、受付嬢さんがしちゃいけない表情にもなるよねって話。 [気にな…
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