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大江戸? 転生録 ~ファンタジー世界に生まれ変わったと思ったら、大名の子供!? え? 話が違わない? と思ったらやっぱりファンタジーだったで御座候~  作者: 鳳飛鳥
精霊魔法学会での生活 その始まり の巻

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九百五十五 志七郎、予定が変わり資格試験受ける事

 今日は本来の予定ならば俺達経験者組は、お花さんの引率で冒険者組合(ギルド)に顔を出し、そのまま火元国の『整備された戦場』と此方の戦場の違いを体験する筈だったのだが……彼女に今朝の件で早急に動く必要が出てきた為にソレはお流れと成ってしまった。


 では何もする事が無く暇をして居るのかと言えばそう言う訳では無い。


「はい、時間終了です、答案用紙を伏せて下さい。ではサクッと採点しますので少しの間待っていて下さいね―」


 俺達はお花さんに写本させて貰った『呪文書(スペルブック)』に乗っていない魔法が記載された呪文書が納められいる『呪文図書室(スペルライブラリー)』に入る為に、その資格が有るかどうかを試す筆記試験(ペーパーテスト)を受けていたのだ。


「なぁ兄者、問四の三なんだが……魔力と魂力(こんりょく)は同源で有りその強さは常に等しい、と言う解釈で有っていただろうか? だとしたら彼処の回答はバツだよな?」


 お花さんに精霊魔法や西方大陸(フラウベア)語に北方大陸(ロドム)語を習い始めて長い俺にとっては割と簡単な試験だったが、彼女との付き合いが其処まで長い訳では無い武光達にはそこそこ難しい問題だったらしい。


「ああ、其処はソレで合ってる筈だ。お花さんの講義では魔法も氣も根底は魂力だが、ソレを魔力に変換する才能は人それぞれ適正が有るって習ったしな」


 基本的に氣功使いで有る事が当たり前である火元国の武士は、多少の個人差は有れども只人に比べれば圧倒的に高い魂力を持っているのが当然で、ソレが有るからこそ魂力をそのまま出力する氣が扱えるのである。


 しかしだからと言って武士が誰しも、同じく魂力が能力の源泉で有る様々な術や魔法を扱う『術者』に成れるのかと言えばそうでは無い。


 術者として大成するには、魂力を別の力に変換する為の才能で有る『魔力』と一般的に呼ばれる能力が高い必要が有るのだ。


 幸い俺達経験者組はお花さんから太鼓判を頂ける位に魂力も魔力も高いらしく、特に忍術も扱う事が出来るお忠はこの面子の中でも更に飛び抜けた魔力を持っていると言う。


 但し魂力や魔力が低いからと言って、魔法や術を身に付ける事が出来ないのかと言えば、必ずしもそんな事は無い。


 単純な威力を必要としない様な支援系や補助系に分類される魔法を中心に使用する事で、其れ也の効果を見込む事が出来るのだ。


 実の所、お花さん達が専門として居る『魔法格闘術』は、元来魔力や魂力の低い魔法使いが少しでも足りない威力を補う為に編み出したのが源流で、魔法に打撃を上乗せする事で高い威力を生み出す事に成功した……と言う物だと習った覚えが有る。


 ちなみに今回の留学団に参加して居る者は、武士として高い魂力を持つ事は勿論の事、魔力に関しても人並み以上と認められた者達が選抜されて居り、お忠の魔力はその中でも特に高いと言う。


 逆に俺の付き添いと言う事で猪山藩猪河家(ウチ)が費用を自弁して連れてきたお連は、魂力は武士の中でも割と高い方では有るが、魔力の方は可也低く術者としての適正は皆無に近い程らしい。


 其れでも彼女を他の留学生達と一緒に扱い精霊魔法を学ばせるのは、彼女自身を守る為の手段を一つでも増やす為で有る。


 魔力が低くても彼女が学んでいる相撲と組み合わせたりする事で、思わぬ相乗効果を生む事が絶対に無いとは言い切れないだろう。


 彼女の相撲の師の一人であるお豊さんに言わせれば、お連の相撲取りとしての才能は男児(おのご)であれば本当の角力取りに……神前相撲に参戦する事が叶うだろう程の物だと言う話だし、其処に魔法と言う新たな要素(エッセンス)を加えれば護身術としては十分と言える筈だ。


「はい、四人とも合格ですよ。うん特にMr.猪河は素晴らしいですね全問正解です。他の皆さんは幾つか間違っている所が有るので、合格したからと言って慢心せず必ず復習をしておいて下さいね。じゃないと更に上の試験で落ちる羽目になりますよ」


 そう言って赤ペンの入った答案用紙を其々の前に置いて行く、紫色の法衣ローブを纏った比較的若い女性教官。


 精霊魔法学会(スペルアカデミー)の教員資格は、魔法使いとしての階位とは別に筆記や口頭弁論等の試験で与えられる物で有り、高い階位に居るからと言って問答無用に教鞭を執る事が出来ると言う訳では無いそうだ。


 彼女も三属性複合を四種類扱える上位魔導師(ハイウォーロック)なので、実力が全く無いと言う訳では無いが魔術師(ウィザード)に上がれないと言う事は『時属性の壁』に阻まれてしまったと言う事なのだろう。


 とは言え『名選手、名監督にあらず』と言う言葉が向こうの世界に有った様に、現場で優れていた者が必ずしも指導者としても優れているとは限らない。


 その為、学会(アカデミー)では階位と教員資格を別枠の試験で取得させる様にして居るのだと思う。


 ちなみにお花さんは教員資格も当然持っているが、学会に所属する赤を纏う最上級魔術師エルダーウィザードが全員資格持ちと言う訳では無い。


 その代表例が学長で、彼は冒険者としての魔法使いとしても研究者としても一流では有るが、物事の説明に擬音が多すぎる性質(タチ)らしく筆記は兎も角、口頭弁論で何度も落ちて資格取得を諦めた口らしい。


 とは言え教員資格は、飽く迄も学会内で行われる一般生徒向けの授業を行う資格と言うだけで、個人として弟子を取る事が認められていない訳では無く、自身に何か有った時に折角の研究成果が失われない様に研究を引き継ぐ事が出来る弟子は居ると言う。


 学長と言う立場として其れで良いのか? と思わないでもないが……学会は飽く迄もワイズマン家が代々運営する巨大な私塾と言う括りの組織で有り、学長と言う立場を継ぐのには周囲を納得させる事が出来る実力さえ有れば問題無いらしい。


 勿論、最も良いのは現場でも活躍出来て、研究者としても結果を出し、教師として後進を育てる事も出来る事だが、寿命が実質無いに等しい森人(エルフ)山人(ドワーフ)ならば兎も角、短命種族のヌル族に代々ソレを求めるのは酷と言う物だろう。


 なのでどれか一つでも良いから周囲に『其の者が学長に相応しい』と認めさせるだけの資質を見せる事さえ出来れば、跡目を継ぐ事が許されて来たのだと言う。


 まぁ……当代で九百九十九代目でソレまで無事に立場を一族で引き継いで来る事が出来たと言うのだから、ワイズマン一族は優秀な者を代々排出し続ける事が出来ていると言って間違いない筈だ。


 もしも何処かでアホボンが居たならば、学会が残って居ないか誰かに乗っ取られるかして居る筈だしな。


「と言う訳で、君達には基本(コモン)魔術書には乗って無い、乗せる事の出来ない、より危険で広範囲に影響を及ぼす魔法が開示されます。用法等はシーバス師から既に習っているとは思いますが、くれぐれも不用意に扱う事の無い様に慎重に扱って下さいね」


 そんな言葉と共に渡されたのは、前世(まえ)の世界の十円玉にも似た色合いの恐らくは青銅(ブロンズ)製と思わしき金属片に赤と白の飾紐リボンがあしらわれた勲章の様な物だった。


「コレが下級禁術書架に入る為に必要と成る入館資格証明になります。無くしたり他人に貸したりする様な事が有れば、厳重な処罰が下される事もありますので、大切に扱って下さい。まぁ基本的には法衣の胸元に縫い付けて置けば大丈夫だとは思いますけどね」


 言いながら彼女は自身の法衣に縫い付けられたソレと並ぶ幾つかの資格証を指し示す。


 恐らくは銀と思しき物が中級禁書書架の、金と思しき物が上級禁書書架の入館証なのだろう、他にも幾つか付いている物の内の一つが教員資格を示す物なのだと思う。


 更に言えば紫水晶(アメジスト)と思しき宝石が着いた物は、資格証では無く見た目通りの勲章なのでは無いだろうか?


「じゃぁ此れから下級禁術書庫へ案内しますが、写本の準備は出来て居ますか? まぁ彼処に保存されている魔法は結構な数に成りますし、今日の所はどんな魔法が有るのかを確認し何を書写するのかを下見するだけに努めても良いとは思いますけどね」


 そう言いながら、彼女は俺達を呪文図書室奥に有る厳重に護られた扉の奥へと案内したのだった。

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