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大江戸? 転生録 ~ファンタジー世界に生まれ変わったと思ったら、大名の子供!? え? 話が違わない? と思ったらやっぱりファンタジーだったで御座候~  作者: 鳳飛鳥
留学生の生活 の巻

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九百四十八 志七郎、水回り事情を考え獲物を狙う事

 風呂から上がったら今度は俺達が風呂を沸かす順番だが、此処で契約して居る霊獣の関係で俺と武光は別の部屋へと向かう事に成る、代わりに此方へと合流して来たのは(ラム)とお忠だ。


 俺が契約して居る四煌戌(しこうじゅつ)が四属性全てを持ち、焔羽姫(もばねひめ)も火+風+土の三属性を持つので、上の部屋で水属性の『水生成(クリエイト・ウォータ)』が使える者が作った水を火属性の魔法で沸かす作業をするのだ。


 蕾の契約している輝一角獣(ライトユニコーン)輝騎(キキ)は火+風+土=光の属性を持つ者なので、此方の部屋一択なのだが、お忠の白影と名付けた鏡化消鼠(みらばけっそ)は火+水+風=消の属性を持つので上の部屋に行く事も不可能では無い。


 火と水の属性を併せ持つ霊獣が居れば湯を直接生成する『(クリエイト・)生成(ヒートウォータ)』なんて魔法が有っても良い様な気もするのだが『火+水=雲』と言う属性の法則が有る為に、残念ながら今の所は水を出しソレを沸かすと言う手順を踏むしか無いので有る。


 では何故お忠が武光と一緒に上に行かず此方に来たのかと言えば、ソコには二人の間で結ばれた『抜け駆け禁止、将来は一緒にお嫁さん』と言う淑女協定が有るからだそうだ……一緒にお嫁さんってなんだよ?


 でもまぁ噂に聞く禿河家の男児の因業と言うか『淫業』とでも言うべき物が事実ならば、増える事は有ってもどっちか一人を選ぶなんて事は無いんだろうし、恐らくは母上からの入れ知恵なのでは無かろうか?


 と……そんな事を考えながらも、指定位置に薪等の燃焼物無しで火を燃やし続ける『燃焼バーニング』の魔法を使い続ける。


 風呂上がりにそんな熱源に近い所にずっと居ればまた汗をかきそうなもんだが、此処の燃焼釜は数多のモンスター素材をふんだんに使った物で、中の熱を(ほぼ)完全に上に乗った湯沸かし釜に伝える事が出来ると言う代物なのだ。


 その為、実家で風呂を沸かす時と比べて此方に来る熱で疲れる様な事は全く無いと言って間違いない。


 ちなみにこの湯沸かし室とでも言うべき場所は屋敷の二階西側端に有り、三階には水汲み部屋と呼ばれる水生成を使い水瓶に水を溜める為の部屋が有って、その真下に大浴場が有ると言う構造だ。


 なお此処と上の部屋で作られた水とお湯は、水道管を通して屋敷の各所へと流れる様に成っており、台所や洗面所は勿論の事、更には便所にまで使われているらしい……つまりこの屋敷には『水洗便所』が有るのだ!


 火元国では何処でも汲取式の便所が普通で、出した物すらもが屑屋と呼ばれる一種の『リサイクル業者』が引き取って行き、郊外の農村部で使われる下肥と呼ばれる肥料に加工されて居る。


 対してこのワイズマンシティでは、地下に整備された下水網を通して汚物を含めた排水は、全て精霊魔法学会(スペルアカデミー)の下に有る浄化槽と呼ばれる場所に流れ込む様に成っており、其処で定期的に(ウォーター)浄化(ピュリフィケーション)の魔法で綺麗にしてから海に流されると言う。


 では此方の大陸では下肥は使われて居ないのかと言えばそんな事は無く、単純にこの街が周辺に抱える農村地帯ではこの街から出る汚物を使い切れないので、そう言う方式の方が良いと言う事らしい。


 良くソレで公称人口十万人の大都市を支える事が出来るなぁ……と思ったら、この街の周辺の農村部と言える場所の大半は遊牧的な酪農をして居るだけで、麦や野菜の類は殆ど輸入に頼っていると言う。


 なんでも塩害が酷くて真っ当な農業が出来ない土壌なんだそうな。


 故に氷属性の魔法が使える学会の卒業生が冷凍した魚介類を持って内陸の都市国家へと向かって商売し、逆に此方に帰って来る時には野菜類をやっぱり冷凍して持って来るのだ。


 氷属性は水と風の複合属性なので氷が使えると言う事は、必然的に『風の行軍(ウインド・マーチ)』の魔法も使えると言う事に成るので、冷凍した食品が痛む前に運ぶ事が可能なのである。


 本当に何処までも魔法に依存した都市なのだと言えるだろうが、前世(まえ)の世界だって大概の事が電気に依存していたのだから、別段可怪しいと言う程では無いのだろう。


 と……そんな事を考えている内に俺達が此処に来た時にひっくり返した砂時計の砂が全て落ちきった、


「よし、時間終了。蕾、お忠、晩飯に行くぞ。まぁ武光の奴が下りてくるのを待って居ても構わんけどな」


 のを確認してから二人に声を掛けたんだが、うんまぁ俺が連れ出すよりも彼奴が迎えに来るのを待つだろうな。


 実際、俺達の次の当番の者達がやって来て、交代に俺が出ていくと彼女達は付いて来る事は無く、


「お、兄者! 早う晩飯に行こうぞ! ん? お(らん)とお忠は一緒では無いのか?」


 俺が上から下りてきた武光と階段で顔を合わせた時にそう問われた、どうやら事前に迎えに行く様な約束をしていた訳では無いらしい。


「ああ、俺が余計な事を言ったかも知れん。お前が来るまで待ってても良いぞって言っちまったからな」


 人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ……とは言うが、邪魔では無く何かの切掛けを上げたのであればソレは『キューピッド』を自称しても良いのでは無かろうか?


 ……まぁこの世界の『愛の神』が実際にどんな神様でどんな名前なのかも知らんがね。


 なおなんかの小説で読んだ記憶では、キューピッドはローマ神話の『性愛の神』でギリシア神話のエロースに対応する神だった筈だ。


 この世界にもソレに対応する神が居るならば……多分居るんだろうが、会う事が叶うならば俺の身体に発生して居る『問題』をなんとかして欲しい物である。


 とは言え、神頼みなんてのは『人事を尽くして天命を待つ』の言葉通り、出来る事は全てやってやり尽くした上で、ソレでも駄目なら最後に縋る(もん)だと俺は前世から通してずっとそう考えていた。


 向こうの世界で世話に成った和尚さんは『神様だの仏様だのに頼った所で努力せずに願いが叶う事なんざぁ絶対に無い、有ったとしたら結果を先払いで貰っただけで後からツケが回ってくる物だ』と、金を貰って祈祷とかやる立場の癖に断言していたしな。


 ついでに親友でその息子(ポン吉)は『祈祷した位で願いが全部叶うなら、荒れ寺なんて物が有る(わき)ゃ無い。坊主はみーんな外車転がして、愛人も子供もダース(十二)単位で抱えてるわ』なんて抜かしてたりもした物だ。


 死んで神仏が実在する事を知り、猫又なんて超常の存在が居る事を知った今でも……いや、今だからこそ『天は自ら助くる者を助く』と言う言葉の重みを強く感じる様に思える。


 何処の世界でも神々や仏様方は皆死ぬ程……比喩では無くガチで過労死するほど忙しくて、努力もせずにただ天に向って口を開けてるだけの者に奇跡を与える余裕なんて何一つ無いのだ。


 多分、此方の世界に帰ってくる最中に見た滅びかけた世界は、そうした者達が多すぎたが故に滅んだのでは無かろうか?


 神に抗って滅びを一日でも遅くしようとする人間の努力も見たが、恐らくは『努力出来る者』だけが最後に残ったと言うだけなのだろう。


 うん、先ずはこの大陸で手に入る俺の身体に有る障碍を治す為の食材や薬草の類をしっかり集めて行くぞ!


 取り敢えず狙うは……この街から南の方に少し離れた都市国家周辺に出現すると言うオンブレ・セタと言うキノコのモンスターだな。


 智香子姉上が用意してくれた、俺が狙うべき食材と薬草を纏めた本に拠ると、火元国に出現する茸系の妖怪同様に胞子を人類に植え付けて其の者を養分に繁殖するモンスターらしい。


 ソイツは男性が苗床に成るとオンブレ・セタと言うモンスターに成り、女性が苗床に成るとムヘール・セタと言うモンスターに成長すると書かれていた。


 そのオンブレ・セタの方を男がきっちりと水洗いして胞子を洗い流してから、火を通して食べると『元気』に成るのだそうだ。


 お察しの通りムヘール・セタの方を同様に調理した物を女性に食べさせると、そ~言う効果も見込めるらしいので、此方の方は手に入れる事が出来たならば換金用だな。


 と、そんな下品な事を考えながら俺は一人寂しく食堂へと向かうのだった。

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