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大江戸? 転生録 ~ファンタジー世界に生まれ変わったと思ったら、大名の子供!? え? 話が違わない? と思ったらやっぱりファンタジーだったで御座候~  作者: 鳳飛鳥
留学生の生活 の巻

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九百四十 志七郎、種族の坩堝を見て偏った献立を盛り付ける事

 そんな感じで学会(アカデミー)内に有るお花さんの学閥とでも言う様な方々に挨拶廻りをして午前中が終わり、そろそろお天道様が天辺に昇る時間、俺達は彼女に案内されるがままに学会の大食堂へと足を踏み入れる。


 其処には朝に食堂で見かけた以上に、火元国では見る事の出来ない様々な種族の学生達が、所狭しと席に着き食事を取っている姿が有った。


 人間(ヒューマン)は勿論森人(エルフ)山人ドワーフに草人とか草原妖精等と呼ばれる『ノルン族』に、獣の耳や尻尾を持つ獣耳族(ビースチャン)や、更に獣の相が濃い獣人族(ビーストマン)も数多く居る。


 学長と同族のヌル族の姿もそこそこ見かけるが、彼等も広義で言えば獣耳族の範疇に入るらしいし、所謂人魚(マーメイド)魚人(マーマン)なんて呼ばれる者達は獣人族の区分に成るそうだ。


 彼等の様な水性生物系の種族も、精霊魔法を用いる事で地上での活動が可能な為、この精霊魔法学会では別け隔て無く生徒として学んでいるらしい。


 実際、少し離れた席には巨大な助惣鱈に手足を生やした様な者や鯛に手足を生やした様な姿の魚人が、美味しそうに昼飯をパクついている姿がある。


「西方大陸は人種の坩堝、居らぬ種族は居らぬ……と留学前の授業では習ったが、本当に様々な者が居るのだな。こうして外つ国を体験してみると己の世界の狭さが本当によく分かると言う物だ」


 そんな光景に度肝を抜かれたらしい武光が、己に言い聞かせるかのような声でそんな言葉を呟いた。


 白人や黒人に黄色人種等……肌の色の差は有れど人間には変わり無い者達しか居なかった前世(まえ)に比べたら、猫又や化け狸なんかの人に友好的な妖怪が普通に暮らしている江戸だって十分様々な者が居るの範疇なのだが……確かに此処は一寸規模(スケール)が違う。


 森人や山人に草人なんかの『大分類:妖精族』の者達は『人に類する種族』=『人類』と言って間違いない姿形をして居るし、獣耳族もその中に含めて良いとは思う。


 獣人族も身体中が毛皮で覆われた姿では有るが、二足歩行の足と自由に使える両腕を持つと言う意味では人型の種族と言っても間違って無い筈だ。


 けれども……さっき見かけた魚人は流石に区分が違うんじゃぁ無いだろうか? とも思うのだが、この身体に流れる血にはソレこそ人型ですら無い妖怪の血脈が通じている居るのだから多分今更の事なのだろう。


 実際、俺は見た事が無いが御祖母様は人に化ける事が出来る様に成っただけで、本来の姿は銀色の虎だと言うのだから、俺に他人の見た目をどうこう言う事は出来やしないし、するつもりも無い。


「さて、お昼御飯だけれども……基本的に学内では此処で食べる事に成るわ。ただ、此処の料理がどうしても口に合わない様なら、家の料理人に御弁当を用意させる事も出来るから、今日は試しに此処で食べて頂戴な」


 お花さんにそう促され、向かった先は前世の日本でも食べ放題のお店や宿屋(ホテル)なんかで良く有る様な所謂『ブッフェ』と呼ばれる様な、山盛りの料理が幾つも並んだ長机と、ソコから思い思いの品を皿に移す生徒達の姿だった。


 ただ……パッと見た限りでは其処に炊かれた白飯は無く、米が使われている物を探すと色とりどりの具材が混ざった、恐らくは『パエリア』らしき物や『ピラフ』の様な物が有る。


「……成る程、主食として米が無ければ我慢出来ないと言う者には、確かに辛いかも知れないな。火元人の中には『銀しゃりを汚すな』と丼物すら否定する者も居るしなぁ」


 白い米の飯を日常的に食えるのは火元国でも極々一部の限られた裕福な家の者位で、多くの家では嵩増しの為に麦や粟稗の様な雑穀や大根なんかの野菜等を混ぜた『(かて)飯』と呼ばれる物が普段の主食だ。


 我が猪河家も何かの祝い事なんかが有るハレの日であれば真っ白な飯が食膳に並ぶ事も有るが、普段食べて居るのは麦が多めに混ざった麦飯である。


 ソレに外食をする時なんかには飯場賀(ハンバーガー)拉麺(ラーメン)を食ったりする事も割りと多いし、前世の世界での幅広い食生活の経験も有り、俺自身は必ずしも主食としての米の飯に拘る必要性は感じて居ない。


 けれどもソレは飽く迄も俺は平気と言うだけであって、留学団全員が大丈夫と言う訳では無い。


 恐らくは第一期留学団の中に米がなけりゃ生きていけない派の者が居た為に、態々お花さんが気を効かせて家の者にそうした便宜を図る様に手配してくれたのだろう。


 と、そんな事を考えながら、俺は料理を取りに行く者達の列の最後尾に正方形の升目が九つ並んだ皿を持って並んだ。


 列の外からでは全ての料理を見切る事は出来なかったので、何をどれだけ取るのかは列が進む内に手早く決めて行かねば成らないだろう。


 下手に迷ったりすれば列が乱れたりして後ろの者に迷惑をかける事にも成りかねない。


「足りなければもう一度並んでおかわりすれば良いんだから、手早く盛り付けてさっさと進むぞ、良いな皆」


 武光達はこうした形式で食事をした事は無い筈なので、面子の中で一番前に並んだ俺が手本を見せてやらねば成らない。


 そうしている内に列が徐々に進み最初の料理が目の前に来た、添えられている献立表(メニューカード)に拠ると『卵とランチョンミートと菠薐草(ほうれんそう)の炒め物』か……うん、コレは少し取るか。


 次は『卵と培根(ベーコン)とランチョンミートの炒め物』……内容が被ってるので飛ば(パス)して、その次は『卵と培根と腸詰め(ソーセージ)とランチョンミートの炒め物』……うん、コレはお花さんが口に合わないと言っても仕方ないかも知れない。


 ちなみにランチョンミートと言うのは、缶詰の中に香辛料等を加えた挽き肉を詰め込んで缶ごと加熱した物等の事で、腸に詰めない腸詰めと言えば良いだろうか? 前世の世界でも米国の某社の物は製品名だけならば誰でも聞いた事がある筈だ。


 ……よくよく見てみると、此処に並んでる料理の大半にランチョンミートが使われいるらしい、パエリアやピラフにも肉としてランチョンミートが入っているのは、此処の料理人達は一体どれ程ランチョンミート推しなのだろう?


 とは言え、そうなっている理由は何となく分かる……恐らくはこのランチョンミートに使われている肉は、様々なモンスターの色んな部位を纏めて挽き肉にして固めた物なのではなかろうか?


 俺の想像が間違っていなければ、きっとその値段はとんでも無く安い筈だ。


 なんせ普通ならば買い手が付かないだろう屑肉すらも纏めて加工する事で、それなりに食える物に出来ると言う事なのだから。


 と言うか、そもそも挽き肉と言うのは炙り肉(ステーキ)用の肉なんかに加工する際に、成形の為に切り落とした『屑肉』を纏めて潰したのが発祥とか以前何処かで見聞きした覚えが有る。


 この食堂で食べる食費は学生が払う授業料の中に含まれていて、学会に所属する者ならば食べ放題だと言うのだから、そうした安い肉を使って少しでも経費を浮かせようとするのは、組織運営として決して間違っては居ない。


 ただ……温野菜の盛り合わせ(サラダ)にまでランチョンミートが入って居るのはどうなんだろう?


 ランチョンミートが苦手な者や菜食主義者(ベジタリアン)なんかには、この食堂の献立は一寸辛い物が有るんじゃないか?


 っと、次でおかず系の料理は最後かな? 『海老とランチョンミートのグラタン、卵と松露トリュフ添え』海老グラタンにまでランチョンミートが入ってるのか……。


 こうランチョンミートが多い献立が並んで居ると、食堂で食事をして居る者達が皆、海賊(バイキング)に見えてくる気がするのは何故だろう?


 いやまぁ……前世の日本ではブッフェ形式の料理店をバイキングと呼んだりもしたし、そ~言う事なのかもしれないが。


 兎にも角にもそんな感じの料理を盛り付けていった結果、割りと野菜が少な目でタンパク質多めの昼食が出来上がったのだった。

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