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大江戸? 転生録 ~ファンタジー世界に生まれ変わったと思ったら、大名の子供!? え? 話が違わない? と思ったらやっぱりファンタジーだったで御座候~  作者: 鳳飛鳥
留学生の生活 の巻

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九百三十六 志七郎、魔法学会と種族の差について知る事

今回から特段の言及が無い限りは、基本的に登場人物は西方大陸語で話しています

台詞の大半は志七郎の意訳だとご理解下さいまし

 少々アメリカンでご機嫌な朝食を取り終えたなら、今日の午前中は精霊魔法学会(アカデミー)の新入指導(ガイダンス)だ。


 しかし俺や武光に(ラム)とお忠の四人は既にある程度の精霊魔法を身に着けており、初心者向けの指導を受ける立場では無い。


 ではどうするのかと言えば、俺達は初心者組とは行動を別にしてお花さん……いや、『赤の魔女の弟子』としての立場で精霊魔法学会の学長に紹介される事に成った。


 その間、お連を含めた他の留学生達はお花さんの弟子の一人で、学会内でも教鞭を取っていると言うツナ・コロープカと言う方が引率を務めてくれる事になっている。


 ちなみにツナ先輩……いやツナ先生は、北方大陸(ロドム)出身の人間(ヒューマン)で、見た目の区分的には恐らくは前世(まえ)の世界で言う所の白人コーカソイド系の人種で義二郎兄上並の大男だ。


 彼の戦闘流儀(スタイル)は精霊魔法と片手剣に盾を併用する『魔法騎士(マジックナイト)』と呼ばれる(ジョブ)なのだと言う。


 火元国では個人個人の戦闘流儀を区別する様な呼び方は無く一纏めに鬼切者と呼ばれるが、外つ国では職業として纏めて『冒険者』と呼ばれるだけで無く、更に細分化された職と呼ばれる物が個別に定義されて居るのだ。


 ツナ先生の魔法騎士と言う職は、近接戦闘職の中でも盾役(タンク)と呼ばれる戦闘流儀と精霊魔法双方を高い水準で習得し冒険者組合(ギルド)が認めた者だけが名乗る事の出来る上位職で有る。


 そして何よりも組合が発行している鬼切手形同様の身分証明書である『ギルドカード』にその職が刻まれた者は、王制を敷いている国ではその名の通り騎士として士官するのに極めて高評価となる職なのだ。


 対して精霊魔法学会の教員と言う職業は決して実入りの良い物とは言い難く、他の都市国家へと出て士官すれば確実に数倍は稼げる立場に成れると言う。


 にも拘わらず彼が学会で教鞭を取り続けるのは、彼が幼い頃に住んでいた村がモンスターに襲われた際に、偶々通り掛かったお花さんに村人全員纏めて命を救われ、その恩を返す為に一生を彼女の為に捧げると誓ったからだそうだ。


 なお彼にとってお花さんは仕えるべき主君では有るが恋愛対象では全く無いらしく、ちゃんと別に相手を見つけてきっちり嫁さんも子供も居るらしい。


 まぁ……奥さんはお花さんの屋敷で働く侍女(メイド)の一人だそうなので、ある意味では職場結婚で尚且つ双方が仕事を続ける事が出来る良い選択と言う事なのかもしれないな。


 そんなこんなで初心者組を送り出した後、俺達四人はお花さんと共に学会本部へと向かうのだった。




 学会本部は某夢の国の中心に立つ青い屋根の白いお城を想像(イメージ)すると割りと外れていない感じである。


「と言う訳で此処が学長室ね。まぁ私が何処か行ってる時でも弟子の誰かは屋敷に居ると思うし、相談事が有る時は先ずはそっちだけど、弟子連中じゃぁどうしても解決出来ない様な事が有った時の為に場所は覚えておいて頂戴ね」


 そんな建物の可也奥まった場所に有る一室へと俺達を案内したお花さんがそんな言葉を口にする。


 ただ……学長室の扉と言うには妙に飾り気が無い……と言うか妙に地味だ。


 此処まで来る途中にも教室と思わしき扉や、誰かの研究室であろう扉なんかが有ったが、それらはどれも区別が付きやすい様にする為か、木製の扉に様々な彫刻だったり着色だったりと個性と呼べる様な物が出されていた。


 しかし今俺達の眼の前に有る観音開きの扉は、大きさこそ一辺一間(約180cm)を少し超える位とそれなりの大きさが有るが、扉そのものには何の装飾も無く取手(ノブ)が無ければ扉が有ると言う事も判り辛い(レベル)で有る。


「……なぁお花先生、コレは隠し扉とかそう言う類の物か?」


 まぁ本気で隠していると言う訳では無いのは周りの構造物が石造りなのに対して、扉の部分は木製なのでちゃんと見れば流石に分かる。


 ただ通路に対して真っ直ぐ前を見れば、そこに扉が有ると知らなければ見逃す程度には自己主張が全く無い。


「んー、元々この建物を建てた時に付けた扉は全部、こんな感じだったらしいんだけどねぇ。時代が進むウチに壊れて付け替えたりとかしていく間に、色々と工夫する様になって行ったみたいよ? この扉だけ当時の物が残っているのよ」


 聞けばこの建物が建てられたのは、精霊魔法学会と言う組織が立ち上げられてから更に百年程が経ってからの事で、当時の大魔法使いの一人である『黄色の(イエロー)建設者(ビルダー)』の二つ名を持つ魔法使いが『建設(コンストラクション)』の魔法で建てたのだと言う。


 建設の魔法は単属性の土属性と火+水+土の複合属性である石属性を組み合わせると言う、変則的な属性の合わせ方をした極めて高度な魔法で、黄色の建設者以降使う事の出来た者が居ない程の物らしい。


「今の学長のスクウィード・O・ワイズマンは紫教授プロフェッサー・パープルの二つ名を持つ毒属性の達人(エキスパート)でね、ネチネチとした陰湿な魔法の使い方をさせたら私以上の「悪質な印象操作をするなクソババア!」」


 お花さんの言葉を遮る怒声と共に扉がそっと開かれる、勢い任せに激しく戸を開く様な事をしないのは、この地味な扉がある意味で歴史的な価値を持つ物だからかも知れない。


 中から出てきた学長と思しき人物は、髪の毛の代わりにタコかイカの様な触手の生えた頭を持ち鱗に覆われた皮膚を持つ見た事の無い種族の男性だった。


「イカちゃんやほー、お久しぶりねー。御免なさいね、また面倒を押し付ける様な事をしちゃってサ」


 お花さんは普段俺達に見せるよりもずっと砕けた表情と口調で、怒り心頭と行った様子で怒鳴って居た彼に応じる。


「ちゃん付けで呼ぶな! 俺が一体何歳(いくつ)だと思ってるんだ! もう曾孫まで居るじじいだぞ! 全くコレだから長命種は嫌いなんだ! お前等はこのババアに感化されるなよ、まぁ見た所全員人間の子供(ガキ)みたいだし大丈夫だろうがな」


 忌々しげにそう吐き捨てる学長さん、彼は人魚系亜人種である『ヌル族』と言う種族で、誕生から二年程で成人し、その後長くとも五十年程で老衰する人間よりも寿命の短い短命種だと言う。


「だってイカちゃんって未だ三十路(みそじ)少し過ぎた位でしょ? 全然お子様じゃないの」


 長ければ千年を超えて生きる事も有る森人の様な長命種族と、他の種族で時間感覚が全然違っても不思議は無いが……産卵から二年で成人するヌル族を、成人と認められるまで五十年掛かる種族の尺度で見てはアカンと思う。


「……俺達人間の尺度でも三十路過ぎたら、ちゃん付けで呼ばれるのはキツイと思う。ましてやソレ以上に短命の種族だと更にキツイんじゃないか?」


 留学前に受けた特別授業に依れば、地域に拘わらず人間と言う種族は大体何処でも十五歳位で一人前の大人として扱われるし、何なら二十歳が成人年齢だった前世の日本でも三十歳を過ぎれば『良いおっさん』だった。


 二年で大人に成る種族の三十歳と言う事は、単純計算で人間に換算すると三百歳位に成るのか?


 その辺の計算法則(ルール)がどうなって居るのかは分からんが、おミヤがお祖父様をちゃん付けで呼ぶ感じだろうか?


「なぁ、お花先生、猪山屋敷に居るおミヤ婆さんが居るよな? あの方、七百歳位らしいんだけどさぁ……あの()に子供扱いされて嬉しいか?」


 俺と同じ様な事を考えて居たのだろう、武光が唐突にそんな言葉を口にすると、即座に蕾とお忠が首を縦に降って賛同の意を示す。


「う、そう言われると確かに嫌ねぇ。同じ森人からですらこの見た目の所為で年相応の扱いして貰えない事が多いのに……あの方から見れば私なんか小娘扱いなのは解ってるけれども……」


 すると流石にソレは嫌だと思った様で、お花さんは今まで見せた事の無い取り乱し様でそんな言葉を絞りだす。


 ……他の森人を見た事が無いから、彼女の様なつるぺたすとーんの幼女体型が森人女性の基本だとばかり思っていたのだが、どうやらやはり彼女は同族の中ですら子供扱いされる見た目をして居るらしい。


 耳を隠せば下手すると睦姉上と同年代にすら見えるからなぁ。


「私が悪かったわ、イk……Mr.ワイズマン。改めてこの子達を紹介させて頂戴な」


 溜息を一つ吐いて軽く頭を振り、無理やり意識を切り替えたらしいお花さんは、軽くスカートを持ち上げて優雅に礼をしつつ、改めてそう口にしたのだった。

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