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大江戸? 転生録 ~ファンタジー世界に生まれ変わったと思ったら、大名の子供!? え? 話が違わない? と思ったらやっぱりファンタジーだったで御座候~  作者: 鳳飛鳥
家臣の初陣と辻斬り の巻

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九百四 志七郎、授業を受け外つ国を考える事

 ……若い脳味噌ってスゲェ、午後の授業を終えた俺は素直にそんな感想を持っていた。


 前世(まえ)の時点で馬鹿大と呼ばれる様な所とは言え大学を卒業する程度の知恵や知識は身に付けて居たのだから、新しい事を学ぼうと思えばそれ相応に時間が掛かる物だと思っていたのだ。


 特に計算では掛け算九九は兎も角としてある程度以上の桁数の計算なんかは電子卓上計算機(電卓)を使うのが当たり前で、ソレを持ち込めなかった高校の頃に受けた数学の試験なんかでも試験用紙の裏で筆算をして居た。


 けれども此方の世界に帰って来て志学館に通う様に成ってからは、授業で算盤を使う様に成り其れに慣れてくると、算盤其の物を使わずに『エア算盤』とでも言う様な感じで暗算速度が明らかに前世よりも早く成ってきたので有る。


 流石に未だTVで見た事の有る『フラッシュ暗算』なんて事が出来る迄習熟出来ては居ないが、アレも珠算の延長線上に有る技術だと聞いた覚えが有るので、何時かは挑戦する価値が有ると思えてきた。


 他にも書道の方も楷書だけの御習字と言う様な状態は脱し、今は崩した字を美しく魅せる為の書の段階に入りつつ有る……が、周りの者達から見ればやはり俺の書は未だまだ全然『堅い』らしい。


 其れでも人生の大半を硬筆で過ごして来た前世の俺が、毛筆に慣れて来たと言うだけでも可也の進歩と言える筈だ。


 後は此方の世界特有の地理や歴史なんかの授業では、前世の知識なんかは殆ど役に立たないが、其れでも本来ならば来年度受ける筈の試験を突破が見込める位には特別授業の内容はドンドン頭に入ってきている。


 幾ら子供の脳味噌は物覚えが良いとは言っても、前世の俺が同じ年頃だった頃は此処まで簡単に物を覚えられただろうか?


 答えははっきりと(いな)と言える、特に生来の気質が割とぐーたらだった俺は、漢字の書き取りの様な単純作業を繰り返して覚えると言うのが苦手な方だった。


 其れでもそうした作業を苦にしなかった親友達の協力を得て、俺は『高校入学迄』は優等生を貫いて居た。


 ……まぁ高校入学祝いに携帯電話を買って貰ってからは、授業部活動其の他生活時間に友人達と過ごす以外の余暇の殆どネット小説三昧に費やし、自分から予習復習なんて事をしなく成ったから落ち溢れたんだけどな。


 兎にも角にも今の俺が、こうして高速学習に成功して居るのは、大学に入ってから一念発起して高校の勉強からきっちりやり直した時に身に着けた『効率の良い勉強法』の効果が割と大きい様に思える。


「はい、此処試験に出るぞー」


 ちなみに海外渡航予定者向けの特別授業を受けているのは俺だけと言う訳では無い、同級生だけでも俺の他に三人が来年度の試験を前倒しで受けて、其れに合格出来た者は取り敢えず一年の期間で北方大陸(ロドム)西方大陸(フラウベア)へと向かうのだ。


 そんな俺達に今授業をして居るのは担任でも有る安藤先生だが、彼の専門教科は世界史と地理で、丁度試験範囲は外つ国其々の生活事情なんかが含まれている為、海外渡航前に受けておくべき授業の一つだと断言出来る内容で有る。


 なお北方大陸へ行くのは錬玉術師(アルケミスト)を目指すと言う芝村(しばむら)藩主家で有る蒼月あおつき家三男の真吏(しんり)殿と、旗本で有る篠原(しのはら)家四男の勇馬(ゆうま)殿の二人で、俺と一緒に西方大陸を目指すのはやはり旗本の夢野(ゆめの)家三男の玄道(げんどう)殿だ。


 彼等が外つ国を目指すのは俺の様に生まれ付き術や魔法の才能が保証されて居る加護持ち故と言う訳では無く、留学来るだけの費用を出せる家の者で尚且嫡男が既に結婚し子供も居る為に何時かは独立しなければ成らない立場だから……だと言う。


 幕府が出した『術者育成の令』で留学に必要と成る費用に補助は出るのだが、其れだけで丸っと賄える訳では無く、ある程度は其々の家から持ち出しと成る分も必要で、小普請組の家禄では生活するだけで手一杯で其れを捻出するのが難しい。


 勿論、最初から物に成ると解っている様な者……お花さんや虎殿辺りの推薦でも有れば幕府も丸っと費用負担をしてくれるのだろうが、如何せん命の値段が安い此の世界では留学してそのまま戻らない可能性も割と高い為に然う然う丸っと奨学金と言う訳には行かないのだ。


 其の為、御家人格の家からは希望者は出て居らず、儲かる技術だと既に知れている錬玉術(アルケミオ・ルーン)を学ぼうと言う者も、流石に俺達の年齢で渡航しようと言う者は稀有で有る。


 まぁ学年……と言う言い方はしないが、同期以外にも渡航希望者は其れ也に居るそうなので、伯母上の船に乗る者は恐らく二十余名と言った所だろう。


 割と少ない様にも思えるが、積極的に渡航しようと言う者の多くは前回の渡航団で既に火元国を出て居り、其の中で戻ってきたのは義二郎兄上だけと言う今の状況では、此れでも多い方と言えるのでは無かろうか?


 なお今回の渡航団の中には武光や蕾にお忠が含まれているが、彼等の渡航費用はお花さんの推薦付きで幕府が出す……と言う話も有ったが、猪山藩(うち)があまり優遇されて居ると見られるのも困る為、猪河家が出すと言う話になって居る。


 その原資が母上がお花さんに連れられて海外の賭博場(カジノ)へと視察に行った際に荒稼ぎして来た銭だと言う点には、色々と言いたい事が無い訳では無いが外つ国で稼いだ銭は外つ国に返す……と言うのであれば筋は通るのだろう。


 お花さんが連れて行くのが俺一人だけならば『瞬間移動(テレポーテーション)』の魔法を使って北方大陸だろうと西方大陸だろうと、好きに移動出来るのだが流石に留学希望者全員を転移させる訳にも行か無いので船での渡航と言う事に成る訳だ。


 ついでに言うと幕府の御用船で渡航するのと伯母上の船で渡航するのでは、航行に掛かる期間は三分の一まで圧縮出来るそうで、そうなれば当然食費やら何やらも安く済むし、御用船は御用船で本来の任務に着けるので、雇い賃を払っても安く上がるそうである。


 ……多分、上様は兎も角、幕府全体としては伯母上の本業を知らないんだろーなー。


 世界樹諸島の周りを囲む中央海に其々の大陸の外側に有る北海、南海、東海、西海の四つの海、火竜列島と東方大陸の間の火竜海、そして北海の更に北に広がる氷海(ひょうかい)を合わせた七つの海。


 其れを股に掛け賞金首として追われる海賊を狩ったり、古い海賊が残した宝を探したり……と言うのが伯母上達『虎乙女の団(レディ・タイガース)』と言う海賊団なのだ。


 海賊船と言うと人聞きが悪いが、彼女達は堅気には決して余計な被害を出す様な真似はしない、海の義賊とでも言うべき立ち位置の者達だと言う。


 とは言っても『海賊船で御座い』と言う様な事を馬鹿正直に幕府に言えば、海賊に人質と成る様な者を乗せる等と言う馬鹿な話は出来なく成る訳で、飽く迄も表向きは猪河家の分家筋の持つ軍船……と言う事になって居るらしい。


 ただし船籍は火元国の猪山藩に有ると言う訳では無く、北方大陸の南部に有る湊街の『シュテルテベーカー』と言う都市国家に有るそうだ。


「北方大陸は此処火元国とは違い人間は少数派だ。中央部に広がる大草原には無数の獣人族の集落が有り、大陸北部を切り離す様に東西に伸びる大山脈には山人の鉱山が無数に有り、更にその北に広がる大氷原には魔族と呼ばれる者達が住む地が有る」


 丁度授業でも北方大陸の地理に着いて先生が話をして居る所で、彼が言った少数派の人間が暮らしているのがシュテルテベーカーと言う『錬玉術の都』とでも言うべき学術都市なのである。


 学術都市と銘打っているだけ有って、錬玉術だけで無く北方大陸特有の動植物や魔物の研究を行う研究機関や、様々な学問を教える私塾なんかも多数有り、西方大陸や南方大陸(カシュトリス)からも学者を志す者達が渡航し勉学に励んで居るそうだ。


 俺や夢野殿が留学する予定の精霊魔法学会(スペルアカデミー)は、冒険者協会アドベンチャラーズギルド本部が有るのと同じ『春を告げる鐘の街(スプリング・ベル)』と言う都市国家に有るのだが……其処は西方大陸西海岸に位置して居るので本気(マジ)で世界の反対側への旅なのである。


 と、そんな余所事を考えつつも、授業の内容がちゃんと頭に入って来るのは氣で脳を強化して居るからと言う事も有るのだろう、本気で便利だなと思いつつ思考を切り替え真面目に授業を受ける事にしたのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 地図作成の区分大変そう、やっぱ端には烏賊の怪物?
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