表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大江戸? 転生録 ~ファンタジー世界に生まれ変わったと思ったら、大名の子供!? え? 話が違わない? と思ったらやっぱりファンタジーだったで御座候~  作者: 鳳飛鳥
小僧連と最後の狩り

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

889/1260

八百八十七 志七郎、ぬっぺら王の肉を食い息子を心配する事

 あれから暫くして睦月(一月)も終わり、父上達は多くの土産物や家臣達と共に国許へと帰っていった。


 その道中に断狼の義兄(あに)貴が、猪山流の元服式を突破しなければ睦姉上との正式な婚姻は認めないと言う理由で連行されたのは些細な問題と言うには少々強引が過ぎる気がするが本人は乗り気だった様なので無問題(もーまんたい)と言う事なのだろう。


 貧乏長屋に大家族で暮らす彼は一家を支える稼ぎ頭で、江戸を離れている間は収入が激減する事に成るが、その間は猪山藩猪河家(うち)が支援すると言う事に成っているのも、彼が快く送り出された理由の一つといえるかも知れない。


 まぁ彼の住む長屋には睦姉上が普段から割と入り浸り、あの辺で出産する妊婦が居たりすると面倒を見たりしてるらしいので、彼女個人の銭でやってる活動が藩の財政から出る様に成ると言うだけの話では有るが……。


 ちなみに先日のぬっぺら王討伐戦の前日に産気付いたと言う妊婦さんは無事出産を終えたが、産後の肥立ちが余り良くなかったらしく一時は命も危ぶまれる様な状況に陥ったが、俺が狩って来たぬっぺふほふの肉を分けて上げた事で何とか回復に向かっているそうだ。


 んで肝心要のぬっぺら王の肉はと言えば、睦姉上が『肉じゃが』にしてくれた物を食べたのだが……ぶっちゃけあの夜は色々と滾り過ぎて一睡も出来なかった。


 其れは他の者達も似たような状況だった様で、家臣達は連れ立って色街へと繰り出して行き、信三郎兄上の離れからは子供には聞かせられない様な声が一晩中響き渡って居たし、翌朝には母上が普段以上に艶々とした顔に成っていたりしたのだ。


 と言うか、アレだけ悶々とした夜を過ごしたと言うのに、俺の息子さんの元気が無かった事だけは少々気になるが、まぁ多分未だこの身体の成長が足り無いのだろう。


 いや、でも待てよ……前世(まえ)は性に目覚める前でも、時には息子さんが自己主張する様な事は有った筈だし、今の年頃には多少なりとも異性に興味を持っていた覚えも有る。


 にも拘らず、生まれ変わった今生の身体では大人向けの(エッチな)電子遊戯(ゲーム)でそう言う場面(シーン)を見たとしても、息子さんが反応する様な事は無い。


 ……アレ? 真逆とは思うが俺ってもしかして勃起不全(ED)とかそう言うのを患っていたりするのだろうか?


 ぬっぺら王の肉で身体の中に膨大な『精力(エネルギー)』が充填されたのは間違いないのだが、其れをどうこうする方法が無いと言うのは割と辛い物が有った……。


 なお俺よりも年下の武光がどうだったのかと言えば、翌朝には身体付きが心做しか膨よかに成っていた様に見えた辺り、精力では無く成長の為の栄養として消費された様だ。


 でもその論理で言うならば俺の方も成長の為の栄養として使われて欲しかったと思うのは贅沢なのだろうか?


「うん、多分だけれども……志七郎君の言う通り、志七郎君は男性としての機能に問題が有るんだと思うの。んでもぬっぺら王の肉はソレを覆しうるだけの薬効を秘めた肉だからね、アレを食べた事で志七郎君の身体の中が少しだけマトモに成ったんだと思うの」


 そんな訳で(しも)の話をうら若き女性に話すと言うのは少々所では無く恥ずかしい事では有ったが、其れでも母上に言うよりはマシだと考え、身近で一番医学や薬学に精通して居る智香子姉上に相談したのだが、返って来たのはそんな台詞だった。


 彼女の所に居る桂太郎もぬっぺら王の肉は口にして居たが、やはり武光と同じ様に成長の方に栄養が回った様で、一夜にして肩や胸の厚みが増していたりする。


 本当なら彼女の師匠で有る虎殿に相談出来れば一番良かったし、彼の事だから俺の症状を一発で解決出来る様な霊薬(くすり)を調合したりも出来たのだろうが、両親と妹さんが江戸に移住して安心した様で、今迄以上に放浪癖が悪化し何処に居るのか誰も解らないと言う。


「御師匠(ししょー)様がくれた素材図鑑に依ると、ぬっぺら王の肉は『無敵鶏』の肉と並んで『子宝の霊薬』の材料として最適な物だって言う話だし、多分そっちの方も食えば志七郎君の身体も良く成ると思うの」


 男性の機能に問題が有る者が武家の嫡男として生まれる事は決して無い話では無く、そうした時に先ず最初に治療法として挙げられるのが、京の都周辺に常に一定数は生息して居る『鶏』の肉を食べると言う物で有る。


 ぬっぺら王は鶏とは違って出現する場所も不安定なら数も決して多い物では無く、鬼切り者や武士が討伐した場合には、自分達で口にする分以外は篦棒な値段で売りに出される事に成る、そんな物を買えるのは余程裕福な商家か大名家だけだろう。


 実際、今回俺達が倒したぬっぺら王も皮や核だけで無く、肉に付いても言い値で良いから売ってくれと言う打診は父上の方に幾つも入って居たらしい。


 まぁその時点で既に俺の取り分として持ち帰ったぬっぺら王の肉は、五百両(約五千万円)と言う額で猪河家が買い取り、家族と家臣達で食ってしまって居たがね。


 なおぬっぺら王の肉は一貫目(約3.75kg)当たり百両が相場だそうで、俺が家に持ち帰った大凡五十貫目のお値段としては明らかに相場以下だが、卸業者の買い取り価格として見るので有れば其れ位に成ると言う。


 他所の様に持ち帰った者が家族に無料で振る舞うと言うので有れば話は分かるが、普通に考えりゃそんなトンデモ無い額面の品物を、態々買い取って家族や家臣達に食わせると言うのは割と馬鹿げた行為だと思うのだが、その辺の感覚が普通とは違うのが猪山藩だ。


 五百両を『ぽっち』と言い放ち、其れを平気の平左で振る舞う様な馬鹿げた真似が出来るのは幕府と大藩の大大名家を除けば、恐らくは猪山藩猪河家位の物だろう。


 とは言え大藩の大大名家だって銭が無限に湧く魔法の貯金箱を持っている様な訳では無く、家臣の数も猪山藩とは比べ物に成らない程に多い為、ぬっぺら王の肉を買い取り家臣全員に振る舞う様な事はしないし出来ないと思う。


 今回はぴんふとりーちの二人分と言う事で、ぬっぺら王の肉の半分を彼等が持ち帰ったから、量を調整すれば全員に食わせる事も出来るだろうが……まぁどうするかはその家次第と言った所だろう。


「もしも鶏を食べても未だ駄目なら、北方大陸(ロドム)の中心部にあるハハトト湖って所に棲んでる鬼緋鯉(デモンカープ)ってのを狙うと良いかも知れないの。御師匠様の調合法(レシピ)集に依るとぬっぺら王や鶏に勝るとも劣らない生命力が有るらしいの」


 そんな言葉から始まった智香子姉上の言に依ると、ぬっぺら王に鶏そして鬼緋鯉其れ等の肉は世界中を旅して回った虎殿から見ても、どれも最高峰の精力剤の材料として代替品に成り得る数少ない最高品質の物なのだそうだ。


 此れ等はさしたる加工も無く食肉として食うだけでも、主に下半身に劇的な効果を及ぼすが、腕の有る錬玉術師が霊薬に加工すれば『死体でもおっ勃つ事を保証する』と言われる程の精力剤を作り出す事は出来ると言う。


 但し加工した精力剤は元気な男に処方するべき物で、俺の様なそもそも機能に問題が有る者を無理矢理勃たせる様な物では無いのだそうだ。


「鬼や妖怪の肉ってのは古来より薬喰(くすりぐい)と呼ばれて居て、其れだけで生半可な霊薬よりも人体に有用な効果を発揮する物が有るの。霊薬ってのは加工する事で意図した効果だけをより強く出来るけれども……其の分副作用も大きく成る物なの」


 火元国にも鶏の肉を加工した倍櫓(ばいやぐら)と言う霊薬が有るのだそうだが、其れは年老いて役に立たなく成った御老人の息子さんを現役時代同然の性能に一時的にせよ復帰させる事が出来ると言う。


 だが残念ながら副作用が無い訳では無く、服用した者の心臓が弱っていたりすると、そのままぽっくり腹上死……と言う様な事に成る例も割と多いのだそうだ。


「んだから志七郎君は、先ずは体質改善効果が有るだろう鬼や妖怪の肉を率先して食って行くと良いと思うの。鶏とぬっぺら王に鬼緋鯉の御三家以外にも下位互換程度に効果が有りそうな物のリストを後から上げるの」


 ……うん、江戸州内で手に入る物は早急に、外に出なければ成らない物も銭で手に入るなら速攻で、自力で手に入れるしか無い物は独り立ちしたら率先して手に入れよう。


 前世とは違って今生では使う予定が有る大事な息子さんなんだ、お連の為にも絶対に直さなければ成らないだろう……俺は既に魔法使いでは有るが、強制的に魔法使い(三十路童貞)の道は勘弁して欲しい、切実にそう思うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 数え七つでED判明か、、、 肉、魚だけでなく芋類や仙桃やら 定番どころのオークキングの玉 必要そうだなぁ
[良い点] てっきり幼少期から気力等の放出が常になった反動かと思ってた
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ