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大江戸? 転生録 ~ファンタジー世界に生まれ変わったと思ったら、大名の子供!? え? 話が違わない? と思ったらやっぱりファンタジーだったで御座候~  作者: 鳳飛鳥
国許の危機と盗賊団 の巻

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六百九十 志七郎、返信に目を通し危急の事態を知る事

 お連に手紙を出した翌日、早速返信が届いた。


 随分と早いなとも思ったが、中を開いて見てその理由が直ぐに解る。


 仁一郎兄上の鳩便で手紙を届けて貰い、その復路で返事を返す都合上、返事を書くまでの間鳩を待たせると言う訳にも行かないと考えたのだろう。


 手紙には俺が国許を発ってから此方、彼女の周りで起こった様々な事柄が、取り留めの無い文章で綴られていたのだ。


 熊爪の従叔父上の娘達、俺からすると従姉妹に当たるお(はる)殿とお雨ちゃんに仲良くしてもらっている事、二人が世話に成っている猪牙夫妻にも可愛がって貰っている事、猪牙の従兄弟達とも友人関係を築けた事……等々様々な事が書かれている。


 どうやら俺が向こうに行く前の様に、鈴木家に半ば閉じ込められていた様な生活からは脱し、彼女は彼女なりに少しずつ自由な生活を手にしつつある様だ。


 後は武芸に付いても触れられており、今までも大根(おおね)(しゅう)術の稽古はしていたが、其れに加えて坂田流(まさかり)術を習う様に成った事や、熊爪姉妹に相撲を教わっていると言う様な事が楽しげな様子で書かれていた。


 武術を嗜むのは武家の娘としては有る意味必須事項だし、この辺も本人が楽しいんで居るならば問題無いだろう。


 この手紙自体もちゃんと本人が書いた物の様で、一部の漢字は書き慣れていないのか、少々崩れて居るが、平仮名片仮名に関しては多分俺よりも上手いかもしれない……と、兎角武芸以外の手習いに関しても手を抜いて無い様なので良い感じだ。


 と、こうして日々の近況を報告し合うと言う形だと、前世(まえ)の世界でも『交換日記』と言う男女交際の作法が有ったと言うのは、友人(ポン吉)の家に有った漫画で読んだ覚えが有る。


 いや交換日記自体は、男女間だけでは無く女の子同士の交流として行われていたりするとも聞いた覚えは有るが、少なくとも俺はそうした経験をした事は無いが、此れは其れに親しい交流なのでは無いだろうか?


 うん大人の目線で見れば、下手に色恋云々を絡ませるよりは、歳相応の交際と言う感じで微笑ましい行為だろうし、此れは此れで良い事だろう。


 次の手紙を書く時には、この手紙に書かれていた事に関する感想を織り交ぜれて行けば、多分お互いの事を知って行く事も出来る様に思える。


 だとすれば今回の手紙で気になる部分は……やはり相撲の稽古を始めたと言う部分じゃ無かろうか?


 いや武芸として相撲を修める事自体は否定しない、前世の世界に比べて圧倒的に命の値段が安いこの世界、武器を失った時に戦える手段を持つと言うのは、生きる上で邪魔に成る様な物では無い筈だ。


 問題が有るとすれば相撲と言う武芸を極める為に、相撲体を作る生活――食事は一日二回でドカ食で、食後はより身体を肥えさせる為にぐっすり昼寝する――を送る事だろう。


 恰幅の良いふくよかな福々しい身体付きの女性が悪いとは言わないが、敢えて俺の好みを言うならば、どちらかと言えば細身(スレンダー)な女性の方が良いのだ。


 とは言え、女性的な円味(まろみ)を失い、肋骨が浮く程に行き過ぎた痩身活動(ダイエット)をしている女性が良いかと言えばそうではない、何事も程々が良いのである。


 でもまぁ……俺の言葉を聞き入れず、相撲を極める為にそうした生活を彼女自身が望んだのであれば、其れは其れで受け入れよう。


 俺は彼女を自分の好きにしたい訳じゃぁ無い。


『光源氏計画は男の夢だ』なんて言う者も居るが、結果としてそう成ったと言うのであればまだしも、最初からそのつもりで娘の意思を無視し自分の好みを押し付け養育する……と言うのは到底受け入れる事が出来ない。


 人は自分の意思と覚悟が有るからこそ尊いんだ、そうした物を持たない女性に俺は愛を抱く事は出来ず、哀れみの目でしか見る事が出来ないだろう。


 俺と彼女が許嫁として扱われ、将来的に結婚に至るのは、所謂政略結婚であり其処に俺達の意思は介在しない……だからこそ、せめて心だけは自分達の意思で重ね合わせたいのだ。


 それに相手の意思を押し潰し、自分の好みを押し付けるのを良しとするのであれば、多分俺は前世で三十路童貞(魔法使い)のままで死ぬ事は無かっただろう。


 中身(意思)の塗り潰された人形(ハニトラ)が近づいて来る事等、両手の指では数え切れない程に有ったのだから。


「志七郎様! 突然の(おとな)い、申し訳有りません! 御師おし……智香子様が手伝って欲しいとの事です! 真に不躾ながら智香子様の離れまで御足労願えませんでしょうか!」


 手紙を読み終え、そろそろ寝ようかな? とそう思った時だった、夜も遅いと言うのにそんな叫び声が戸口の方から聞こえたのだ。


 彼は……最近智香子姉上が雇い入れたと言う、弟子兼丁稚の少年で名前は桂太郎けいたろうだったか?


「姉上が態々俺を呼ぶって事は、何か危急の用が有るって事だな? 詳しい話は行く途中で聞く。 姉上の所に行くなら着替えも必要無いな」


 そう返事を返すと俺は寝間着にしている浴衣姿のまま、自室を飛び出したのだった。




 道中で聞いた話に依ると、国許に凶悪な妖怪が出現し其れを討伐する為に、残っている現役武士達は勿論、息子等に家督を譲り隠居していた者達や、農民(百姓)等の町人階級の者達まで動員し巻狩を行ったのだと言う。


 しかし出現した妖怪は想定していた物では無く更にその上位種で、単体でも巻狩対象と成る其れが上位種を中心に群れていたと言うのだから、被害零で何とか成る様な状況では無かったらしい。


 結果は取り巻き二体を撃破したが首魁の首を取る事は出来ず、死傷者多数を出しながら何とか撤退した……と言う状況なのだそうだ。


 不幸中の幸いと言えるのか、死者は本の数人それも隠居老人達だけで、長期的に見れば猪山藩の戦力と言う点で問題は無い範疇だと言う。


 けれどもそんな化け物が山に巣食ったままにする訳にも行かず、江戸に屯する家臣の中でも腕の立つ者達を援軍として送り、更に一郎翁と御祖父様も呼び戻して対処させるのだそうだ。


 ただ問題はその援軍が着くまでに、その大妖怪が里まで下りて来れば、国許の戦力の多くが負傷したこの状況では大惨事に成るのは間違いない。


 故に少しでも早く彼等を回復させ防衛する為、智香子姉上が用意した霊薬(くすり)を大量に、仁一郎兄上の鳩便で送らねばならないのだそうだ。


志七郎ししちろー君待ってたの! 桂太郎けーたろ君と協力して、此処に書いてある霊薬を調合して欲しいの! 日が登ったら直ぐに鳩を飛ばすから、今夜は眠れないと思って欲しいの!」


 どうやら俺は彼と二人で、より強力な霊薬を調合する際に材料として必要となる霊薬を調合する人手として呼ばれたらしい。


「足ん無い材料も買いに行って貰ってるからじゃんじゃん調合するの! 此れは時間との勝負なの! 二人の腕ならもう十分に出来る難易度の筈だからテキパキやるの! 焦って失敗しない様にだけ注意なの! 爆発させたらその分遅れるの!」


 普段割とおっとり……と言うか自分の拍子(マイペース)を崩さない智香子姉上が、切羽詰まった様子で声を張り上げている。


 どうやら智香子姉上に伝わっている話は、俺が此処に来るまでに聞いた事より、余程切羽詰まった状況らしい。


「真逆……真逆『素敵妖怪 向日葵(ひまわり)』が出るなんて……記録に残ってるのは初代様が大江山の鬼を討ち取った仲間達と強力して倒したのが最期の大妖怪なの。普通の『百獣の王 向日葵』だって珍しいのに真逆大妖怪が出るなんて、猪山は本当に地獄なの」


 言われた通り、即座に俺は桂太郎と手分けして幾つかの霊薬の調合を始めたのだが……誰に聞かせるでも無く智香子姉上が呟いたその冗談みたいな名前に、俺は思わず吹き出しそうに成った。


 危な!? 錬玉術は下手な失敗の仕方をすると、其れが火薬の様な物を調合してい無くても爆発する事が有る。


 特に危険な(ヤバい)のは異物混入の様な失敗(ミス)だ、素材と素材が結合し変化する反応を起こしている最中に、変な物が混ざると産業廃棄物すら出来ず爆発する可能性が割と高い。


 今丁度、俺の手元では簡易調合具を使って割と低階級の傷薬が変化反応を起こしている所で、万が一吹き出した唾でも混ざれば爆発は不可避だっただろう。


 取り敢えず、さっきの謎の妖怪に関して考えたり聞いたりするのは後だ! 今は目の前に用意された素材の調合に意識を集中するんだ!


(いにしえ)の盟約に基づきて、我、猪河志七郎が命ずる……」


 そう言い聞かせながら、俺は作業の効率化の為に手を止めずに四煌戌を召喚する為の呪文を紡ぐのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ライオンか…一頭だけってのが幸い?
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