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大江戸? 転生録 ~ファンタジー世界に生まれ変わったと思ったら、大名の子供!? え? 話が違わない? と思ったらやっぱりファンタジーだったで御座候~  作者: 鳳飛鳥
激闘!? 地下迷宮……その実戦 の巻

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四百五十一 連合隊、全力で突き進み遅きに失する事

「「「グるるるぁぁぁガァァァアアア!!!」」」


 氣功を用いた技と違い、魔法は詠唱さえ可能であれば……それこそ『以下同文』を用いれば連打する事も不可能では無い。


 だがソレは一瞬で完結する様な『攻撃魔法』か、術者の意思に関わらず定められた時間の間発動し続ける『付与魔法』の類だけで、今回使った『特殊攻撃魔法』の連鎖雷撃(チェーンライトニング)は含まれない。


 放たれた連鎖雷撃の魔法は俺が意識を切らぬ限り、獲物を求めてその場を飛び続けるのだ。


 逆に言えば意識の何割かを常に割かなければ成らない連鎖雷撃が残っている間は他の魔法は使えないと言う事になる。


 いや……お花さんの授業では『多重詠唱』とか『並列発動』と言う技術が有るとは聞いているので、他の魔法が使えないのは飽く迄俺の未熟さが所以である。


 しかしその間、俺も四煌戌達も何も出来ないと言う訳では無い!


 四煌戌は牛馬の如き体格の肉食獣……それも三首の霊獣だ、魔法が使えずともその肉体で暴れるだけでも十分以上の戦力である。


 そして俺自身も発動さえしてしまえばソレのみに集中し続ける必要は無く、自衛程度に戦い続ける事位は可能なのだ。


 上層由来の野菜は連鎖雷撃に一瞬触れただけでこんがりと美味しそうに焼き上がるが、下層の……その中でも特にタフな南瓜大王や暴れ花芽野菜(ブロッコリー)辺りは、一撃で沈む事は無く、二度三度と繰り返し雷撃を受けやっと倒れる程だ。


 それでも縦横無尽に光の速さで飛び続ける雷弾は、刀や槍で斬りつけるのに比べて圧倒的な速さで野菜達を駆逐していく。


「大根流……爆砕! 天地返し!!」


「天光流抜刀術……疾風裂波斬!」


 無論、小僧連の仲間だって、足手纏のままで居る事を良しとする者は居ない。


 ぴんふや歌は、それぞれ身に着けた技の中でも広範囲を巻き込む様な大技をぶっ放し、お祖父様程には全く届かないが、それでも群を切り開く一助と成っている。


 と言うか、武士で有れば子供でも氣功が使えるのが当たり前のこの世界、若手家臣達も多かれ少なかれそれなりの範囲攻撃をブチかます事は出来るのだ。


「背中を手前が守ります、皆様は全力で前を!」


 そんな中で殆ど唯一と行って良い範囲攻撃を持たない者で有るりーちは、大技を放った後の隙を埋める様に立ち回っている。


「兄者! 済まぬ! 皆の者今度こそ余に続け!」


 武光の奴は、何処で手に入れて来たのか導火線の付いた黒い陶器の玉――焙烙火矢とか焙烙玉とか呼ばれる原始的な爆弾――を敵陣深くへ投げ込みながら、自身も大根に向けて突き進んでいく。


 ちなみに火薬は幕府の統制下に置かれており、一部の許可された商人にしか扱え無い物で、花火ですら何処の誰がどれだけ買ったのか、事細かに報告する必要が有る物だったりする。


 そう言えば、手裏剣とか矢とかも普通に持ち歩いているとは思えない程の量を、バカスカ惜しげも無くバラ撒いてるけれども……アレは多分、智香子姉上が(ラム)やお忠に作って与えた術具の矢筒と手裏剣ホルスターを持ってきているのだろう。


 と成ると、あの大量の焙烙玉も智香子姉上ならば、正規の火薬とはまた違う何かを使って作る事も出来なくは無さそうだし、もしかしたらちゃんと許可を取っている可能性も有る。


 ……己の小遣いは己で稼ぐのが猪山流、その手の消耗品も自弁ならば、まぁ何を使っても構わないだろう。


 蕾やお忠が大事な装備を貸したのだとしても、想い人が無事帰ってきて欲しいと言う気持ちからならば仕様が無いと言えなくは無い。


 それでも一応、後から二人には消耗品の代金はちゃんと武光から貰う様に釘を差しておいた方が良いかも知れないな。


 未だ幼いと言って間違いない彼らの年齢で、貢ぐ貢がれるの関係は絶対に許しちゃ行けないし、まかり間違って上様の血筋で猪山の養い子がヒモにでも成られては目も当てられない。


 そんな余所事を考えながらも俺は雷撃を維持しつつ、打ち掛かってくる人斬り人参をまた一匹叩き切るのだった。




「やぁやぁ我こそは、当代征異大将軍、禿河 光輝が孫、禿河 武光成るぞ! 余の初陣に味噌を付けよった木瓜勝幡! 雪辱を果たす為、いざ尋常に勝負せよぉ!」


 後先考えない……と言うのとは一寸違うが、対大物戦の為に取っておいた大技を皆惜しげも無くぶっ放した結果、然程の時間も置かない内に先陣を掛ける武光が、そんな台詞と共に大根へと高く飛び上がり斬りかかった。


 しかし武光の一撃は丸で鋼同士をぶつけ合わせた様な甲高い音を響かせ弾き返される。


 続けざまにぴんふが、歌が、各藩の若手達の内何人かが次々と打ち掛かるが、その大半は薄皮一枚にすら傷を与える事が出来ずに居た。


「この馬鹿者共が! そんな莫大な氣の塊見たいな(もん)に普通に斬り掛かった所で通る訳が無かろう! 斬鉄を込める以上の氣を叩きつけるんじゃ! 早うせい! 其奴が動く前に仕留めねば、厄介な事に成るぞ!」


 肩で息をしつつも己に飛び掛かる人参や甘藷を切り捨てそう叫ぶ。


『斬鉄』とはその名の通り得物に氣を込める事で、鉄を切れる程の切れ味を生み出す技法で、程度の差はあれ修練を積んだ侍であれば使えない者は居ない基本と呼んで良い技だ。


 とは言え、特に氣の消耗が激しい技でも有るため、誰しもが常時ソレを使い攻撃している訳では無い。


 斬鉄を込めねば全く通らない程硬い化物(モンスター)は比較的稀なのだ。


 ちなみに俺が仕掛けないのは、刀に氣を込める事に集中力を向けると、連鎖雷撃が消えてしまう可能性が高いからである。


 一体一体は然程強くないとは言え、未だ圧倒的な物量を有している野菜達を相手に魔法を途切らせてしまうと、数で押し切られる可能性が捨て切れないのだ。


 当然、俺の雷撃だけで戦線を維持することが出来ている訳でなく、若手陣の大半は防戦を優先している。


 大根に斬り掛かったのは、八層で防具を破壊され防戦には向かない状態に成った者達だった。


「成れば、コレでどうだ! 余が繰り出せる最高の一撃だ!」


 お祖父様の忠告が飛ぶと即座にソレに反応し、武光は再び刀を叩きつける。


「ぬ!? ……抜けない!?」


 ソレが良かったのか悪かったのか、武光の刀は大根の皮を確かに貫いたが、断ち切るには至らず表面に食い込んだまま、押しても引いてもどうにも成らない状態に成ってしまった。


「尋常ノ勝負ト言ッテ置キナガラ、前口上モ述ベサセズ斬リカカルトハ……流石ハ野蛮ナ人間ヨ……ダガマァ良イ、所詮ハヒ弱ナ人間程度ニドウコウ出来ル代物デハ無イワ」


 武光の一撃を無駄な足掻きと嘲笑う木瓜、だがそれも然程長い時間では無い。


「きぇぇぇぁぁぁあああ!」


 猪山藩(うち)の若手、古神大五郎が前世に聞いた覚えの有る、薩摩示現流独特の掛け声である猿叫にもよく似た咆哮を上げ大根の足に斬り掛かったのだ。


「ヌォ!? 真逆! タカガ人間如キニ装甲ヲ抜カレルトハ! ダガ浅イ! ソノ程度デハコノだいこーんヲ打チ倒ス事ハ出来ヌ! ダガ……ダガシカシコノママデハ……早ク、早ク動イテヨ! 今動カナキャ駄目ナンダ!」


 余裕綽々だった木瓜の焦り混じりの言葉は、君主のソレと言うよりは、子供のソレの様にも聞こえた。


「急げ! 畳み掛けるのじゃ! 今ならばまだ間に合う筈じゃ! くっ! 儂に後少し氣が残されておれば……」


 後ろから聞こえたお祖父様の切羽詰まった声……ソレに応え誰かが仕掛けるよりも早く……


「来タ! 来タ! キタキタキタ! キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!」


 そんな何処か世界観の違う木瓜の叫び声と共に、大根が大きく鳴動し(ハッチ)と思しき場所に取り付けられた窓が光を放つ。


「だいこーん! 木瓜 勝幡! 行キマース!」


 どうやら……此処からが本当の戦いの様だ。


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