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大江戸? 転生録 ~ファンタジー世界に生まれ変わったと思ったら、大名の子供!? え? 話が違わない? と思ったらやっぱりファンタジーだったで御座候~  作者: 鳳飛鳥
修練そして日常 の巻

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四十二 志七郎、氣の修練を重ねる事 その一

わなわなと身体を震わせていた鈴木だったが、はっと何かに気がついた様な表情を見せ深々とため息を付いた。


「とにかく、時間が有りません。本来ならば数ヶ月を掛けてじっくりと氣の運用を学び、合わせて氣の総量も増やしていく修練をするつもりでしたが……、まずは親父が来るまでに運用術を叩き込みます、総量は時間を掛けるしか有りませんのでこの際二の次です」


「数ヶ月で学ぶことを数日でって、かなり無理が有ると思いますが……」


「確かに尋常な方法であれば無理難題の類です、であれば尋常では無い方法を用いれば良いだけの事。まずは今朝のおさらいから始めましょう」


尋常では無い方法とやらにはかなり興味があるが、それは後から分かることだ。


俺は素直に頷き、肯定の意を示すと目を瞑り全身の気を高めるのに集中した。


心臓の鼓動、それと呼応するかのように胸の奥からじわりじわりと熱いものが染み出してくるのを意識する、放っておけば至る所から抜けていきそうに成るそれを押し留め、身体中にその熱を満たしていく。


全身の指先、つま先にまで満ち満ちた熱は徐々に外に出ようという圧力が増していき、次第に抑えこむのが難しくなり、少しずつ身体の節々から漏れ出ていくのが分かる。


目を開ければ思った通り、身体中から湯気のような薄っすらとしたオーラが漏れでているのが解った。


「良い感じですね。では今度は溢れ出ている氣を止めましょう、氣の消耗はそのまま体力の消耗と成ります。器以上の氣はどうやっても貯めることは出来ませんので、生成される氣の量を抑えるのです」


言われた通り心臓が脈打つ度に溢れ出ようとする熱を抑えこむ、だがそうすると今度は全身に満ちていたが熱が徐々に引き始めるのを感じる。


「今度は抑え込み過ぎです。余程の達人でなければ、漏れ出る氣を完全に無くすことは出来ません、漏れ出るのと釣り合う氣を生成し氣を満たした状態を維持するのです」


今の俺は氣の生成に関してONとOFFの二択状態なのだが、氣功使いと呼ばれる者は常に必要量の氣を生成し満タンの状態を維持するらしい。


何度かON、OFFを繰り返すがその時々により生成される氣の量に差が有るようには思えるのだがそれが何に拠るものかが解らない。


「む、難しいな……」


「呼吸の仕方を意識してみてください、氣は心の臓より生み出されますが、その運用は呼吸によってなされます。深く長い息は氣を多く生み出し、細く短い息はその逆です」


無意識でやっていたが、言われてみれば氣を貯めるときにはその通りの息使いをしていた。


再び全身に氣を満たし、今度は意識して徐々に呼吸法を変えていく。


すると全身から立ち上っていた氣が止まり、その上で身体の中には氣の熱が満ちている、と感じられる状態になった。


「今の状態を覚えてください、その状態を一般的に氣を纏う、と言います。最終的には意識せずともその状態を維持できるようになるのが目標となりますが、流石に数日でそこまでは無理でしょう」


前世まえでも呼吸は一部流派に置いては重要な位置を占めていた――空手の息吹等が有名――だが残念なのかそれとも覚え直しとならなかったと言う意味で幸いなのか、俺は特殊な呼吸法は修めて居ない。


意識せずとも出来るようになるのは鈴木の言う通り長くかかるだろうが、取り敢えず今は意識の何割かを呼吸の仕方に向けておく。


「多少ならば呼吸を乱した所で纏った氣は失われません。慣れれば会話をする事も問題なく出来ます。では、昼食を食べたら本格的な氣の運用に移りましょう」


そう言われて空を見れば既に日が高々と登っており、俺の体感よりかなり早く時間が過ぎているのに驚いた。




「氣の運用は大きく別けて『溜める』『集める』『放つ』の三つで成り立ちます。どんな秘技や秘剣もこの三つをどの様に行うか、の違いに過ぎません」


午後の稽古はそんな言葉で始まった。


今朝の稽古でやった氣翔撃もその通り、必要量の氣を『溜めて』それを両手に『集め』拳を突き出し『放つ』事で成り立っていた。


だが義二郎兄上や礼子姉上を見ていて、必ずしもその三工程が必須では無いようにも思えた。


「身体能力の強化はどうなのだ? 氣を『溜め』強化したい場所に『集める』までは一緒だと思うが『放つ』が無い様に思うが……」


「それは氣の副次的な効果に過ぎず、特殊な運用を行っている訳では有りません。志七郎様は未だ幼く氣の総量が少ないため実感し辛いですが、今でも平常時より何割かは強化されていると思います」


俺が疑問を口にすると鈴木は小さく笑いながらそう答えた。


「今朝の段階でも氣翔撃は形になっていました。それと同じ様に足に氣を集めて見て下さい、その状態で飛び上がってみれば分かると思います」


その言葉に従い纏った氣を足に集中しジャンプする。


漫画的な程に劇的な物では決してなかったが、確かにいつもより高く飛べた様には思えたが、正直ハッキリと実感できるほどの差は感じることが出来なかった、今の段階ではコレが精一杯なのだろう。


「強化は元々の力を増幅する物ですから、身体が出来ていない志七郎様では実感できるほどの効果は出ないでしょう、今は『放つ』所まで含めた運用を身につけましょう」


「はい!」


俺の素直な返事に鈴木は一つ小さく頷くと再び口を開く。


「では、あの的に出来るだけ素早く連続で氣翔撃を打ち込んで下さい、こんな感じで……」


そう言い鈴木は腰だめに拳を構えそして突きを一つ繰り出した、と連続した炸裂音が目標となった的で弾けた。


目にも留まらぬ連撃……という訳ではない、拳を付き出したのは間違いなく一度だけだ。


だが的には何箇所も傷ついた痕がある。


「『溜める』『集める』は熟達した使い手でも相応の時間が掛かりますが『放つ』は上手く調整すれば今の様に連続で行う事が出来ます。さぁ、志七郎様も」


促され同様に突きを繰り出し氣を放った……つもりだった。


俺のそれは彼の様に多段ヒットする物ではなく、パン……パン……パン……と断続的に打ち出すことしか出来ていない。


理想と現実のギャップにちょっと情けない物を感じながら、横で見守る鈴木を見上げると彼は何も言わず、ただ続けるように促した。


俺のそれと彼のそれ、その違いは何処に有るのだろう、氣を放ちながらそれを考える、すると直ぐに答えが出た。


俺は一発『放つ』毎に『溜め』て『集め』それから再び『放つ』のだ、それではタイムラグが有るは当然『溜める』『集める』は時間がかかると言われたばかりだ。


ならばやることは一つ『溜めて』『集めた』氣を何度も『放て』ば良いのだ。


今度は成功したそう思ったが、連続して放ったはずの氣は的を揺らす事すら無い。


「今のでは流石に威力が小さすぎます『溜める』『集める』は上手く出来てますが、『放つ』際に氣の大部分が散ってしまってます。もっと細く小さく研ぎ澄まし無駄なく打ち出すのです」


細く小さく……?


「ああ! そういうことか!」


俺は思わずそう声を上げた。


拳を突き出す物だからついつい拳大の氣を放つつもりで居たのだ、恐らくは身体も氣ももっと成長した後ならばそれでも問題ないのだろう、だが今の俺には拳の大きさでも大きすぎるのだ。


ならばもっと細く小さい所に氣を集めれば良い、そう判断し俺は人差し指を立てその先に氣を集め『放った』


パパパパパパンッと、今度は十分な威力を持った氣が放たれた様で、無数の破裂音が響き渡り的が大きく揺れ、そしてへし折れた。 

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[一言] 転生と魔法の定番。想像力チート!♪
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