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大江戸? 転生録 ~ファンタジー世界に生まれ変わったと思ったら、大名の子供!? え? 話が違わない? と思ったらやっぱりファンタジーだったで御座候~  作者: 鳳飛鳥
実り多き季節 の巻

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二百二十四 小僧連、巨大なるモノと出会う事

 ……デカイ! 


 彼女に抱いた第一印象は、正にその一言に尽きた。


 身の丈は五尺二寸(約156cm)程と、男性の平均身長が五尺(約150cm)程度だった前の世界の江戸時代で考えれば十分に大きいと言えるだろうが、前世(まえ)の日本や此方の火元国においては特段大女と言う程では無い。


 では何がデカイのか、それは言わずもがな『女性の象徴』がで有る。


 とは言え、此方もやはり前世の日本でグラビア誌等を探せばコレを超えるサイズの女性は幾らでも居るだろう。


 にも関わらず、何故もこんなに圧倒的な迫力を感じさせるのか。


 彼女が身に纏っているのは、例の『絵』で見た通り太腿も顕なミニ着物なのだが、裾側はしっかりと前合わせが出来ているのに対し、胸元は豊満すぎるソレが邪魔でどうしても合わせる事が出来ない様で、もう少し捲れば見えてはいけない部分まで零れそうな程だ。


 そんな状態にも関わらず穢を知らぬと見える乙女のシンボルは、重力に負けず帯の上にだらしなく乗っかかる事無く、着物の上からでもその下側の円みがはっきりと解るので有る。


 更にそれらを引き立てているのが、帯を締めてなおも細い腰のクビレと、無駄な肉一つ付いて居ないが鍛えられ過ぎて硬い様にも見えぬ少女らしいほっそりとした太腿からふくらはぎに掛けてのライン。


 髪が綺麗に結い上げられているが故に、隠れる事無く晒された鎖骨から胸元に掛けて肌の張り艶も『水も弾く様な』と言う形容こそがピッタリと来る、そんな感じで有る。


 バブル期に流行った『ボディコン』と呼ばれた様な服装と殆ど変わらない露出度を誇りながら、彼女の肌は日焼けや染みの後すら見る事が出来ず雪のような白さを保っている。


 上腕からは小振袖と言っても可笑しくない程度の布地で覆われているが、そこから覗くのは白魚のような……それこそ荒事を生業としているとは全く思えぬ綺麗な指だ。


 無論それらの白さには白粉を叩いた様な不自然さは無く、化粧一つする事無くその色を保っている様子で、それがまた彼女の装いとのアンバランスさを引き立てている様に見えた。


「貴方達がぁ~、お仕事一緒にしてくれるぅ~、人たちですかぁ? 」


 そんな出る所は出て引っ込むところは引っ込んだ『我儘ボディ』の上に乗っている未だあどけなさすら残す容貌から、媚びている訳では無いのだろうがそれでも男の理性を溶かすには十分と思えるそんな甘ったるい声でそんな言葉が口を出た。


 実際色事に対して興味を持ち始めているぴんふは、艶っぽい台詞を囁かれた訳でも無いのに、彼女の艶やかな立ち姿を見て、その声を聞いただけで顔を真赤にして直視出来ないで居る。


 ……少しだけ腰が引けている様に見えるのは突っ込まないのが武士の情けという奴だろうか。


「はい、鬼の褌屋の金太殿の紹介で罷り越しました」


 前世の感覚ならば此処で名乗るのが普通の対応だっただろう、だが此方では『物事を問う方が先に名乗る』『格下の者から先に名乗る』と言うのが礼儀なのだ。


『幕臣と大名』は基本的に同格扱いだが歌は『女子』なので俺達の中では一段落ちる扱いとなり、『大名の子』と言う意味で同格扱いの三人は年齢の順で『ぴんふ>りーち>俺』と言うのが公の場での格付けと成る。


 対して彼女は武士階級では無く、更に女性であるという事で俺達よりも格下の存在として扱わなければならないのだ。


 こういう身分の差という奴は前世でも『役職』や『立場』の差としてその名残の様な物は有ったにせよ、此方程は厳格なルールとして存在していたとは言えない……と思いたい。


 とは言っても前世の職場(警察)では『男の仕事』と『女の仕事』がかなり明確に線引されており、少なくとも俺の居た署の捜査四課(マルボウ)には女性は一人も配属されて居なかった。


 俺がくたばるより少し前辺りには『男女平等』だの『女性差別』だのがかなり煩く成って来た様で、そういう話が無かった訳では無いが殉職が比較的起きやすい部署に、女性を配属する事には否定的な意見が多かった。


 ソレに対して此方の世界では明確に女性は男性よりも下と定義されている割に、危険の最前線とも言える戦場(いくさば)へ女性が行く事を咎める様な法は無いし、必要で有れば姉上達の様に武家の娘が出陣する事も稀では無い。



 公の場では兎も角、家庭内では女性の裁量が間違いなく認められて居り『女房の尻に敷かれた男』と言うのは決して少なく無いのだ。


『男は女を護り、女は男を立てる』と言う文化がそのまま生きているからこそだろう……。


「あっちは~花火って言うのぉ~。お花ちゃんって呼んでねぇ」


 閑話休題それはさておき、俺達が合流対象だと確認した彼女は歌よりも幼く見える笑顔でそう自らの名を告げた。


 家のお花さんと愛称が被ってしまったが……そんな事は彼女の所為では無いだろう。


 と言うか女性の名前で『花』と言うのは男の『一郎』やら『太郎』と同じ位ありふれた名前で、目抜き通りで『お花』と呼んだら道行く女性の三人に一人は振り向いたと言う笑い話が有るほどなのだ。


 そういう訳で彼女自身が呼べと言ったのだから、遠慮無くお花ちゃん(・・・)と呼ばせてもらおう。


「わたくしは歌江と申します。お花様、宜しくお願いいたします」


 儀礼に則った格付け順と言う事で、最初に返事を返したのは歌である。


 彼女が家名を名乗らないのは、今回の仕事で頭を張るのが武士で有る俺達では無く、町民階級に有るお花ちゃんの下に付く以上、明らかに武士で有る俺達だが表向きは『武士では無い振り』をする必要が有るのだ。


 とは言ってもあくまでも『振り』なので、此方が完全に風下に立つ訳には行かないのだが……。


 あと特筆するべき事と言えば、普段の鬼切りの様に男名で有る『歌右衛門』を名乗らず本名を名乗ったのは、これから数日とは言え生活を共にする以上、風呂やトイレ等女としての行動を共にする事を踏まえての事で有る。


 敢えてちゃん付けでは無く、様付けをしたのも、生真面目な歌らしいと言えばらしいだろう。


「俺は志七郎だ。で、こいつらは四煌戌。宜しく頼む」


「「「ばう!」」」


 と、ついこの間まで抱き上げようと思えば簡単に腕の中に収まっていた筈が、何時の間にやら俺の腰を超える程の大きさまで育っていた四煌戌を紹介した。


 今の時点でも十分に大型犬と言える大きさだと言うのに、仁一郎兄上の話に拠れば、足や頭の大きさから察するにまだまだ大きく成るだろうと言う話で有る。


「手前はりーちと申します、味様あんじょうよろしゅう」


 りーちは愛称と本名を結びつける手間を嫌ったのか、最初から愛称での自己紹介だった。


「私は平和ひらかずと申す、得物は鍬で前衛を務めさせて頂きます。御方には鬼妖かしの指一本触れさせぬ様、粉骨砕身の覚悟で尽力させて頂きます」


 トリを務めるぴんふは、その口調や言葉回しこそ勇ましく武士として相応しい立ち振舞の様に聞こえたが、その実彼女の胸元に視線が吸い寄せられ慌てて顔毎そらし、しかし目端で谷間を覗き込んだまま……と、男の目からしても色々と残念な反応である。


 そんな余りにも露骨なエロガキの反応にもお花ちゃんは顔色ひとつ変える事は無く、腕を組む様にして己の胸を寄せて上げつつ、


「あは♪ みんなヨロシクね☆ミ あ~そだ、大事なのを忘れてた! この子があっちの大事な相棒なの~」


 と言って肩越しに己の背後へと視線を向けた。


 そこにそびえ立つ程の黒い影……ソレは俺の目には黒い柱にしか見えなかった。

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