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大江戸? 転生録 ~ファンタジー世界に生まれ変わったと思ったら、大名の子供!? え? 話が違わない? と思ったらやっぱりファンタジーだったで御座候~  作者: 鳳飛鳥
幼年期そして家族 の巻

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十八 志七郎、初めて釣果を上げる事

 眼前に広がる大海原、何処までも広がる青い青い海がそこには広がっていた。


 当初兄上に連れられ、少々広い程度の川についた時には川釣りをするのかと思ったのだが、そこから船に乗り下ること30分ほど、やって来たのは河口にほど近い磯辺だった。


 兄上曰く、下りは子供の小遣い銭程度で楽できるが、上りはそれなりの出費になるから歩くのが基本、ということだ。


 船上では早速持ってきた本を読むのかと思えば、船酔いを避けるため読書はしないと憎々しげに口にし、朝食として持ってきたおにぎりを頬張っていたのが印象的だった。


 ちなみにおにぎりの具はツナマヨに辛子明太子……本当にこの世界の食文化はどうなっているのだろうか。


「先ずは餌を捕まえるでおじゃる。その辺の石をひっくり返せばゴカイやらフナムシが幾らでも居るでおじゃる。蟹や貝もいい餌になるから適当に拾ってくるでおじゃ」


 前世まえには何度か職場の懇親会で釣り堀に行った事くらいならあるが、その時に使ったのは練りエサで生き餌を使ったことは無い。


 そんな俺に蟲の類はハードルが高過ぎる……。取り敢えずは蟹や貝をメインに集めることにしよう。


 そう思い竿を置いて磯溜まりを覗きこめば、小さな蟹や巻き貝などが兄上の言う通り幾らでも居るように見えた。


 手当たり次第にそれらを拾い魚籠びくに投げ込んでいくと、さほどの時間を置かずに目に見えて溜まって来たので兄上の元へと持っていく。


 すると兄上は既に折りたたみ椅子の様な物に腰掛け、竿を固定し本を読んでいた。横においてある折りたたみテーブルのようなものは本を置く場所だろうか?


「おろ? 随分と沢山集めてきたでおじゃるな。さすがにそこまで頻繁に魚が掛かる物でも無いのでおじゃるが……、まぁ、お主も座ってこれでも読んでゆっくりするがよいでおじゃ」


 どうやら俺の分の準備もしてくれていたようで、椅子と竿がもう一組据え付けられている。


 言われるがままに腰を降ろし本を手にする、そしてその本を開き改めてこの世界の理不尽さを目の当たりにすることとなる。


 これ、完全に現代日本語じゃねぇか……。


 街の看板などを見る限りでは、明らかな当て字も多く書物の類は殆どが漢文だと思い、今まで読書には手を出していなかったが、漢字の他かなやカナ混じりのその文章はよく見慣れたものである。


 しかも草書の様な慣れた人間でなければ読むことの困難な物ではない。


 流石に、活版印刷の様な完全に整った字が並んでいる訳ではなく、所々崩れた字がある事から手書きで写本したもの、と判断する事ができた。


『江戸州鬼録』と題されたその本は、どうやら江戸周辺に出没する鬼や妖怪(モンスター)の記録、というか攻略本のような物らしい。


 この内容から察するに、鬼退治――本の記載では鬼切り、はこの世界では本当に生活の一部のようで、特によく出没する小鬼の狩り方については、刀どころか鍬や鋤を使って戦う際の注意点まで事細かく書かれている。


 ……なるほど、鬼と妖怪はどちらも西洋では怪物モンスターと一括りにされるが、この国ではある程度知恵があり道具を使うものが鬼で、純粋にその身体に備わった能力だけで戦うのが妖怪と分類されるらしい、中には例外もあるようだが、概ねそう分類されているようだ。


 その他にも、ある程度の力を持った鬼は大将級と呼ばれ、自分より弱い鬼や妖怪を従え組織だった戦いをする事があるとか、そういう鬼は一騎打ちを好むので鬼の集団に囲まれた時などには勇ましく名乗りを上げる事で数の暴力を回避できる、などとも書かれている。


 兄上の言う通り、これらを知らずに初陣というのは確かに中々無謀な気がする。


「志七郎、本に没頭するのは悪いことではないが、竿にもちゃんと気を払うのでおじゃる。お主の竿にも魚信アタリが来ておじゃるぞ」


 そんな事を思いながら本を読み進めていると、不意にそう声を掛けられた。


 慌てて本をテーブルの上に置き、竿に手を伸ばす。


 竿掛けは魚に引かれても倒れたり竿を持っていかれること無く、しっかりと固定されているようだった。


 これまたファンタジーな原理の道具だろうか?


 そんな疑問が首をもたげるが、思った以上に引きが強いらしく竿が大きくしなる。


「無理に引き上げようとすれば、糸が切れるか竿が折れるでおじゃる! 武芸と同じく魚の呼吸を読み隙を見せた瞬間に引き上げるのでおじゃ!」


「はい!」


 竿を手にした瞬間そう鋭く注意を促され、直ぐに引き上げようとしていた手を止め、慎重に竿と糸を通して伝わってくる魚の動向を感じ取る努力をする。


 針を外すためにもがいているのだろうか、右に左に、深く潜ったかと思えば海面近くまで急速に駆け上がる、そんな様子が少しずつ少しずつ伝わってくるようだった。


 !? ここだ!!


 三度目に海面を目指し浮上してきた時、竿から伝わる手応えが明らかに変る瞬間が有った。それに気が付くことができた俺は、迷わず竿を引き上げた。


 クンッ! と竿に掛かる抵抗が一瞬無くなり、直後にずしりとした重さが伝わってきた。


 竿の先には見事な鯛がぶら下がっていた。


「初竿でこれほど大物の鯛を上げるとは、お主も中々やるでおじゃるな」


 そう良い笑顔で言う兄上だが、彼の魚籠には既に少なくない数の魚が入っているように見えた。


 どうやら俺が1匹釣り上げるまでにかなり時間を要していたようで、既に日は高く登っている。


「さて、お主もボウズ回避はできたようでおじゃるし、そろそろ昼飯を食ろうて河岸かしを変えるでおじゃる」


 俺の視線に気がついたのだろう、兄上は苦笑しながらそう口にした。




 昼食は兄上が釣り上げた魚……鯖だろうか? を一匹、腰に指した脇差しで刺し身にしそれをおかずにおにぎりを食べた。


 どうやら、もともとその予定だったらしく今度のおにぎりには具が入っておらず、醤油の入った小さなひょうたんと取り皿まで用意してあった。


 鯖の……青魚の刺身というのは食中毒になりやすい危険な物というイメージが強く、口にするのに躊躇するものがあったが、兄上が美味そうに口にするのを見て思い切って食べてみると殊の外美味かった。


 そんな昼食を終え荷物を纏めると、今度は今まで居た磯の浅瀬ではなく、海に大きく張り出した自然の堤防とでも言うべき地形へとやって来た。


 どうやら先程とは比べ物にならない位の深さがあるようで海の色が大きく違う。


 前世の海とは明らかに透明度が違うのだろう、かなり深い所まで光が届いているように見えるがそれでもなお底まで見通すことは出来ない。


 一応人並み程度には泳げるつもりでは居るが、この身体で尚且つ服を着たままではどうなるか分からず少々恐怖を覚える。


「ここでの釣りは先程とは比べ物にならぬような大物狙いになるでおじゃる、主の体格では引きずり込まれるやも知れぬ。釣りは麻呂がするでおじゃるから、ちくとあそこの漁師小屋へ行って銛を何本か借りてきておじゃれ」


 確かにここに来る途中丁度堤防の付け根あたりに、言われた通り粗末な小屋があった。


 だが魚釣りなのに銛が必要というのはどういう事だろう、まさかどこぞの『とったどー』の様に潜って魚を捕らえるというわけでもあるまい。


 まぁ俺の持つ常識が通じない事が色々とあるこの世界だ、魚釣りに銛が必要となる事も有るのだろう。


 深く考えても分からなそうな事は考えるだけ無駄である。下手の考え休むに似たりと言う奴だ。


 言われるがままに小屋へと向かう頃には、兄上は既に海に糸を垂らしていた。

釣り絡みを長々と描写いたしましたが、私は志七郎と同じく誰でも釣れるような釣り堀での釣りとゲーム位しかしか経験が有りません。

ガチな釣り趣味の方からは、こんなん違う! という部分が多々あるかと思いますが、ゲーム同様フィクションとして流していただけるとありがたいです。

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