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大江戸? 転生録 ~ファンタジー世界に生まれ変わったと思ったら、大名の子供!? え? 話が違わない? と思ったらやっぱりファンタジーだったで御座候~  作者: 鳳飛鳥
鬼斬奉行は親馬鹿でござる? の巻

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百七十五 小僧連、午後の戦場で決断する事

前話にて兎鬼から取れる素材に「牙」が抜けておりましたので、追記変更いたしました。


「どうして君たちは、そう余計な事ばかり言うかな!」


 怒りに拠るものか恥辱に拠るものか歌は顔を真っ赤に染めながら、要らん事を口にした二人の頬を抓り上げた。


「「痛ひ! 痛ひ! 離ひて!!」」


 丸で双子の様に見事に通じ合っている二人は、やはり見事にハモった声でそう口にする。


 前世まえならば、例え相手が同性であろうともセクハラ云々と問題に成り兼ね無い発言では有る、だが西の方……大阪辺りだとごく普通に言われる言葉だと聞いた事が有る。


 それに子供、特に小学生位の男子が下ネタを好む事は自身を省みるまでも無く明白だ、何故そこまで『う◯こ』の一言で大笑い出来るのか、良い歳の大人に成った事の有る(・・・・・・・)俺にはもう理解出来ないが……。


 セクハラもデリカシーなんて言葉も浸透して居ないこの火元国では、彼らの言動はそうそう咎め立てされるような物では無い。


 とは言え、流石に上流階級の方々相手に無遠慮にその手の話題を振れば、下品下劣と眉を潜められる事も有るだろうが。


 その点、歌は鬼斬奉行が目に入れても痛くない程に可愛がり、兄の目から見ても過保護と言われる様な箱入り息子(・・)である、この手の話に全く免疫が無くても可怪しくは無い。


「まぁまぁ、二人も悪気が有って言ってる訳じゃなし、その辺で勘弁して上げてくださいな。二人もそう言う下品な物言いは相手を選んだ方が良いぞ」


 それら双方を理解したうえで苦笑しながらもそう仲裁の言葉を掛けると、恥ずかしそうに頬を赤く染めたまま二人の頬から両手を離す。


「下品って……、まぁ確かに上品な話題では無いですが……」


「そうそう女子供じゃ有るまいし、男同士で何を恥ずかしがる事が有ろうばさ」


「いや、俺達ちゃ皆子供だからね? てか女子供関係なく不快に成る人は成る話だ。君たちは仮にも大大名の子弟なんだから、そのへんもう少し考えないと駄目だろう。それに……これから飯を食う人に言うべき事じゃない」


 反省の欠片も見せない二人に溜息を一つ付いてからそう言うと、流石に飯時に下の話をする事が不味いと言う事は理解出来たらしく、揃ってハッとした表情を見せそれから、


「すみません、思慮が足りませんでした……」


「悪かった、確かに飯時にする話じゃなかった」


 とそれぞれが歌に向かって謝罪を口にして頭を下げた。


「いや、そういう事じゃないんだけど……。まぁ、もう良いよ……うん……」


 今ひとつ腑に落ちないと言う様な顔をしてはいるものの、これ以上この話題を続けたく無いのだろう、歌はそう言って二人の謝罪を受け入れた。


「じゃあ、この話はこの辺にして……歌の食事が終わったら午後からももう少し狩ろうか……、見た所、他の鬼斬り者達も増えて来た見たいなので、誤射にだけは注意だな」


 兎鬼は強さの割に利益が出やすい鬼なので、前日の深酒が祟ったりして午前中を寝て過ごし午後からだけ鬼斬に出る、そんな連中が狙う事の多い獲物でも有る。


 一般的な町民の鬼斬り者ならば一人頭一、二匹も狩れば市中で丸一日人足仕事をするのと同等程度の稼ぎに成るのだ。


「あとは戦場いくさば三ヶ条ですね。人が増えたならば相応に問題事も多く成るでしょうから」


 りーちが口にした戦場三ヶ条とは、俺が初陣に出た際に義二郎兄上に言われた『他人の邪魔をするな』『他人の獲物を奪うな』『他人の手助けをするな』の3つ事だ。


 幸いな事に、俺は初陣のあの時を除いて(豹堂一家の件は揉めて無いので除外する)他の鬼斬り者と揉め事に成ったことは無いが、それは今まで人気の有る戦場と時間帯を避けていたからに他ならない。


 どうやらぴんふは勿論、歌も戦場三ヶ条に付いては事前に言い含められていたようで、尋ね返す事も無く表情を引き締めて無言で首肯した。




 歌は鬼斬奉行所へ戻った際に向こうで食事を済ませていたらしく、直ぐに午後の狩りと相成った。


 とは言っても歌の話に依ると、戦場へ行く前に腹に物を入れると万が一攻撃を食らったりした時に胃が破れ酷い事に成り兼ねない、と桂殿に口を酸っぱくして言われている為、即効性の栄養剤の様な物を口にしただけだそうだが……。


 そう言われると猪山藩うちの面々も浅雀藩の者達も、腹八分目に抑える事以外は普通に戦場でも食事をしているのは、中々にリスキーなのかもしれないが、恐らくは皆口を揃えて『当たらなければ、どうと言う事も無い』等と言い切るだろう。


 空腹感を抱えたままでは力が出ないと言う意見も有るだろうから、どちらが正しいとも言い切れない話だとは思うので、この辺はその家その家の考え方の違いと割り切るべき事だと思う。


 とそんな他所事を考えている内にも、四煌戌はあっさりと群れから逸れたと思わしき兎鬼を見つけそれを歌が撃ちぬく、と言う午前中とほぼ同じ流れで2匹を仕留めて居た。


 だが余裕を持った快進撃が続いたのはここまでだった。


 俺達からは少し離れた場所からでは有ったが、ある程度の数が揃っていると思われる兎鬼達が猿の様な甲高い声を上げて騒ぎ出したのである。


「ああ、これは不味いですね。どっかの馬鹿が群れに突っ掛って行って返り討ち……と言った所でしょうか……」


 兎鬼は肉食では無く草の根を好んで食べるためか、鬼としては比較的好戦的な性質たちでは無く、積極的に人間を探してまで害する事は少ない。


 とは言っても、人間が彼らのテリトリーに踏み込んだ事をはっきりと認識した場合には、ああして大きな声を上げ仲間達で協力して襲いかかって来るのである。


 その為兎鬼狩りの際には、群れから逸れた少数を声を上げさせる前に仕留めるのが鉄則なのだが、今回はそのセオリーを理解して居ないりーちが言った通りの『馬鹿』か、もしくは単独だと思い仕掛けた側に群れが居たかのどちらかだろう。


「今の位置ならば、私達はまだ標的には成ってないでしょうし引きますか? それとも、何処の馬鹿かは知りませんが最低限首位は回収しに行きましょうか?」


 戦場での生き死には完全に自己責任であり、助けを求められなければ助ける必要は無いと言う事にはなっている、だが助けを求める事すら出来ない状態――即ち既に遺体と成ってしまったならば、首や手形を持ち帰る事が推奨されている。


 いつまでも帰らぬ人のままにするよりは、首だけでも持ち帰る事で葬儀を上げる事が出来るからだ。


 俺は未だに人の生き死にに対してそこまでドライに成り切る事が出来ず、助けられるならば助けたいと考えてしまうのだが、生粋の大名家子弟であるりーちやぴんふはかなり割り切った判断が出来ているらしい。


「何を馬鹿な事を言ってるんだ! 鬼どもをのさばらせて置かぬ為の鬼斬りだろう! これ以上余計な犠牲者が出ぬ内にわた……拙者等で討ち滅ぼすべきだ!」


 逆に歌はそう熱く自論を口にする、人の死を悼むでは無くこれ以上被害を出させない為の討伐を、と言う辺り俺よりはやはり人の死に対してドライな感覚なのだろう。


「俺は歌に賛成する。歌に任せるでは無く俺達皆で協力してならば、多少の群れでも十分相手に出来るはずだ」


 俺がそう言った事で二対二に意見が分かれたかと思ったのだが、


「まぁ、七ならそう言うでしょうね」


「手前達も一日付いて行くだけで、何もしないと言うのもつまらなかった所です」


 と、軽く肩を竦め微苦笑を浮かべただけ、肯定的な言葉を口にした。


「作戦は今までと大きくは変えず、りーちと歌さんが先手で撃ち、寄って来たのは私と七で仕留めます。歌さんは自分が狙われない限りは、遠間の奴を仕留めてくださいな」


 ぴんふの提案した作戦に全員が強く頷き合うのを確認し、俺たちは静かに駈け出した。

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