表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大江戸? 転生録 ~ファンタジー世界に生まれ変わったと思ったら、大名の子供!? え? 話が違わない? と思ったらやっぱりファンタジーだったで御座候~  作者: 鳳飛鳥
志七郎、南へ の巻

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1244/1252

千二百四十二 慎み深さと治安とヤクザを考える事

 暫しお連にされるがままに周囲からの嫉妬の視線を浴び続けた俺は、彼女が満足した様子を見せた所で一旦その身を優しく引き剥がす。


「一寸此処でする様な話じゃないし、先ずは一旦部屋に戻ろうか」


 転移を成功させてからは、肉体の変化が齎した激しい煩悩に理性が屈するのを避ける為、出来るだけお連と二人きりになる様な状況は避けて来た。


 幾ら俺自身が自分は大人だった人間で有り、お連の様な幼い子に手を出しては駄目だと理性で考えて居ても、身体は正直なモンで彼女の体臭や体温を感じるだけでもその気に成りそうに成っていたのだ。


 ……だが今日は少々他人に聞かれてはよろしく無い話をしなければ成らない為に、俺は彼女を精霊魔法学会へとやってきてから二人で過ごしていた寝室へと誘う言葉を口にする。


 何を想像したのか一瞬顔を赤らめたお連だったが、俺がそれなりに真面目な表情をしていた事で、そう言う目的で寝室へと呼んだ訳では無いと理解したらしく、少しだけがっかりした様な表情(かお)を見せた後で素直に頷いてくれた。


 本当に武光の馬鹿とお忠の阿呆に関しては御祖父様に報告するべきか、其れ共御母様に報告するべきか?


 一応、前に説教した時に若年妊娠の危険性に関してや、早期妊娠からの流産でその後子供を作れなくなる可能性なんかに付いては説明したが何処まで効果が有った物やら……。


 せめて向こうの世界の護謨(ゴム)製品程の効果が無いにせよ、此方でも使われている避妊具……食用に用いない魔物(モンスター)の腸なんかが使われているらしい……をキッチリ使っていれば未だマシなんだろうけれどもな。


 等とどーでも良いのか其れ共大事な事なのか良く解らない事を考えつつ、お連と手を繋いでお花さんの屋敷に有る寝室へと向かう。


 この手を繋いで歩く……と言う行為も火元国では『端ない』と非難を受ける事の有る行為なんだよな。


 流石に俺達の年頃ならば未だ無問題(セーフ)だが、もう少し成長したならば『女は男の三歩後ろを歩け』等と言われる様になるんだ。


『三歩後ろを歩く』と言う言葉は、向こうの世界だと諸説有って極々普通に『夫を立て妻は夫の影も踏まず』そんな感じの男尊女卑的な意味合いから『万が一の時に夫が刀を抜いて応戦する邪魔に成らない様に』と様々な話が飛び交っていたもんである。


 先進的な欧米諸国で一般的とされる『レディーファースト』も『紳士は淑女を立てる物だ』と言う解釈もあれば、先に女性を歩かせ安全の確認をした上で男が進む……何ていう解釈も有った筈だ。


 流石に近年の何時何処から刺客が襲って来るかも解らない……等と言う事の無い時代に成ってからは、建前通りに『女性を立てる』と言う名目が普通に成って、逆に『女は三歩後ろを~』の方が死語に成っている位である。


 けれども命と言う物が軽い此方の世界では、基本的に男が前衛に立って歩くのが普通で、手荷物なんかが有る場合には女性に持って貰い、何時でも武器を抜ける様にして置く……と言うのが世界的に見ても一般的な対応だったりするのだ。


 要するにこの世界は何処を見渡しても、安全な場所なんか何処にも()ぇ! と言う事である。


 世界的に見れば比較的治安が良いとされて居る江戸の街ですら、然う然う頻繁に有る訳では無いがソレでもそれ也の頻度で辻斬りの類が出る事が有るのだ。


 外つ国でもワイズマンシティは比較的治安が良い部類の都市国家だと言うが、ソレにしたって地元を仕切る犯罪組織(ギャング)が目を光らせているからこそ、表立っての犯罪が少ないと言うだけで裏側を見ればドロドロである。


 まぁその辺は世界でも上から数えた方が早い程に治安が良く、女性が夜に一寸した買い物に出る事が出来る稀有な国……と言われて居た前世の日本だって、一皮剥けば暴力団ヤクザや海外黒社会(マフィア)に半グレなんかが暴れていたもんだ。


 ソレでも表向きは比較的綺麗だったのは、そうした組織犯罪は裏側だけでひっそりと行われ、表沙汰に成った案件は俺達警察官が血眼に成って捜査と解決に当たっていたからである。


 コレが警察組織がマトモに機能していない様な国だったりすりゃ、下手をすると殺人現場に駆けつけても加害者から賄賂を受け取って死体を片付ける掃除業者に過ぎ無い……なんて場所も有ったりしたもんだ。


 此処ワイズマンシティも割とソレに近く、都市部を巡回する軍人さんは居ても抑止力と言う点で言えば、地廻りの犯罪組織の方が圧倒的に上なのである。


 流石に記録や資料でしか知らないが戦後動乱期の日本も、地廻りの親分さんが跳ねっ返りの若い連中を拳で躾けて、そう言う連中が他所からやって来て悪さをしようとする者達に対する抑止力だったと聞く。


 事実、その頃から生きてる様な古株の暴力団員(ヤクザ)ってのは、目先の利益よりも義理や人情を重んじる者が決して少なく無く、金の為なら何でもヤる……と言う様な仁義を知らん(けだもの)が増えたのは、某指定暴力団が全国制覇に乗り出してからだと聞く。


 いや、まぁ……ソレ以前から与太者やら破落戸(ごろつき)やらの集まりで、組織の代紋を使って商売してるんだからと上納金を納める制度が有る為に、真っ当では無い方法でも稼がないと上から酷い目に合わされると言う世界だったのは間違いないらしい。


 ソレでも海外の犯罪組織や黒社会と呼ばれる連中が『犯罪を犯す為の結社』なのに対して、日本の暴力団と言うのは必ずしも犯罪を犯すとは限らない組織だった時代も有ると聞く。


 元々は真っ当に会社勤めが出来ない様な連中や、コレを言うと差別になるのかも知れないが……肉体的には健康体だが知的な障碍が有って普通の社会で暮らせない者達の互助会的な物がその始まりだと言う。


 そうした言い方は悪いが社会不適合者達を、カタギの方々に迷惑を掛けない様に躾けをして、それぞれの性質に合ったシノギを見つけてやらせていたのが古来のヤクザと言う連中だったのだ。


 実際、不動産業や土建業に港湾関係や物流業……と、大元を辿ると昔はそっち系だったと言う企業は割とあったりする。


 派遣会社なんかも江戸の頃には口入屋と呼ばれ、ソコの長は親分さんと言われるそっち系統の仕事だった時代もあるし、俺がくたばる頃合いにも土建業へ日雇労働者を割り振る仕事は元々そっち系だった人達が仕切っていた地域もあったもんだ。


 ……と、そんな事を考えているウチに広い廊下を進んだ先に、俺達が使わせて貰っていた寝室へと通じる扉の前へと辿り着いた。


「……お前様が帰ってからはこのお部屋を(つらね)が一人で使ってますけれども、やっぱり一寸だけ寂しいです」


 扉に備え付けられた鍵穴へと鍵を差し込みソレを開いたお連が、そんな言葉を口にしながら俺を部屋へと招き入れる。


 二人で使っていた時と比べると、俺の荷物が無くなった分確かにガランとした感じで、此処を一人で使って居れば寂しく感じるのも仕方が無いかも知れない。


 ましてや彼女は物心付いた頃には、多数の門下生が出入りし賑やかな日常が営まれている鈴木道場で育ったのだ。


 個人の部屋が当たり前に貰える様な世界では無いし、個室が有ったとしてもソコを仕切るのは基本的には障子や襖で、此の屋敷の様に遮音性に優れた分厚い木の扉なんか付いてはいない。


 この辺は一人で居る事が落ち着く俺とは違う、彼女の生活環境から来た特性と言えばそうなのだろう。


「一人で寂しいなら、誰かと相部屋にして貰える様にお花さんに頼もうか?」


 少しずつとは言え帰還者が出ている以上は、お連と同じ様に相部屋だった相手が帰ってしまって寂しい思いをしている者が居るかも知れない。


 ……まぁ留学団の大半は男性で、女性は本当に極々一部の限られた人数しかいないけどな。


「いえ、一寸だけなので大丈夫です! それよりもお前様、わざわざ人払いが必要なお話と言うのはどんな事でしょう?」


 お連は俺の言う事を鵜呑みにし過ぎる嫌いがあるが、頭の出来自体は人並み程度から多少良い位の学習能力は有る。


 けれども飽く迄も年相応の人並みなので、変に情報を与え過ぎると何処に漏れるか解らないと言う事で、御祖父様の企てに関する明確な時期なんかは今まで教えて無かったのだ。


 だが流石にそろそろ決行が近い時期に成って来たので、彼女にも火元国へと帰る支度をし始めて貰う必要が有る。


 武光の馬鹿がこの部屋をヤリ部屋にしていた事に、俺達が遠征から帰って来るまで誰も気が付いて居なかった事からも解かる通り、この部屋の防音は可也しっかりしているので、扉に耳でも当てて居なければ中の声を聞かれる心配は無い。


「お連が火元国へと帰る時期が大体決まった、同時にソレはお連のお父さんの敵討ちの為の(いくさ)を始める時期と言う事でも有る」


 ソレでも俺は声を潜めて、そんな言葉を投げかけたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ