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大江戸? 転生録 ~ファンタジー世界に生まれ変わったと思ったら、大名の子供!? え? 話が違わない? と思ったらやっぱりファンタジーだったで御座候~  作者: 鳳飛鳥
志七郎、南へ の巻

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千二百三十五 獲物を精算し異世界貿易に思いを馳せる事

 追加で小型の鎌鼬と言う感じの妖怪である風車を二匹ほど刀でぶった切ってから、俺はサクッと首縊り神社を出る事にした。


 ここは奥へと進んだり宝箱の有る場所へと向かう為には、特定の順番で鳥居を潜る必要が有るのだが、帰る為にはその季節の鳥居を続けて二回潜るだけで、入口の石鳥居へと転移するので出るのは凄ぶる簡単なのだ。


 恐らくは敵の弱さも有るだろうが、この脱出が極めて簡単だと言う事が、この首縊り神社が京の都周辺で初陣や、初陣間もない子供達の狩り場と成っている所以なのだろう。


「流石は音に聞こえた鬼切り童子殿、コレ程綺麗な状態の一つ()は真冬に相応の準備をした番付組か、陰陽寮の術者でも無けりゃ然う然うお目に掛かれるモンじゃあらへんで」


 巨大な蛇が人の形を作ると言う色々と奇怪しい存在である一つ鬼だが、冷凍(フリージング)の魔法で見事に凍死しその形を保ったままで四煌戌の背に積んで外まで運んできた。


 冬場に雪やら氷やらを使って凍死させた場合、人の形を頼もつ事無くだらりと崩れ落ち、巨大な角を持つ人面蛇の姿でここまで運ばれるらしいが、冷凍の魔法はキッチリ相手を冷凍保存する事が出来る為に型崩れする事無く運んで来れた訳だ。


 ちなみに一つ鬼の素材は鱗と皮に骨が武器や防具の素材として使えるモノで、角は可也強力な霊薬の材料となり、肉は食材としても比較的人気が有る品で、俺が持ち込んだ状態ならば一体で三十両(約300万円)には成ると言う。


 内臓も食用にする事も出来て可也美味いらしいが、どちらかと言えば薬種としての引きの方が多く、特に心臓や肝臓は角以上に強力な霊薬の材料として取り引きされて居るそうだ。


 討伐報酬は自体は一両(約10万円)と全うに戦った場合の強さの割には控え目なのは、攻略法が確立している鬼で尚且つ全身余す所無く素材として活用出来るが故に、買い取りに出しても自分で使っても良い……と需要が高いからである。


 需要の有る鬼や妖怪は高い討伐報酬を設定せずとも、鬼切り者や冒険者が積極的に狩るのでコレはコレで均衡(バランス)が取れている……らしい。


 まぁ実際、実戦闘時間で一分も掛かっていないのに三十両と言うのは正直ボロ過ぎるので、討伐報酬はまぁ誤差と言って良いだろう。


 とは言え俺はコレを丸っと売りに出す訳では無い、討伐報酬分をそのまま解体(バラシ)屋に払って解体した上で、肉は四煌戌の食餌に、角とモツは智香子姉上の所に、そして皮や鱗はそのうち装備更新で使うかもしれないので江戸屋敷の素材蔵送りである。


 なお一つ鬼の鱗は金属に対して極めて弱いと言う性質が有る所為も有って防具には向かない……かと言えばそんな事も無い。


 確かに冷気や斬撃に対する抵抗力は極めて低いが、その代わりに火属性や水属性と雷属性に対する抵抗力は極めて高いので、鎧や兜に小手なんかの材料としては微妙では有るが、対属性攻撃用の装飾品の材料としては割と優秀だったりする。


 他にも他の素材と混ぜて副素材として使う事で、其れ等属性に対して抵抗力を持った防具を作ったりするのにも使われると言う。


 また金属と相性が悪いので刃金に練り込む様な使い方は出来ず、武器の材料としては微妙といえるだろうが、ソレでも槍の竿部分に貼り付けたりする事で、妖術を打ち払う事が出来る武器を作る……なんて事は出来るそうだ。


「さて……一つ鬼は唐揚げにすると美味いらしいし、流石にこんだけ量ありゃ少し位分けて貰っても問題ないだろう」


 一つ鬼一匹から取れる肉の量は凡そ百貫(約375kg)程で牛一頭に等しい量が取れる。


 四煌戌の食餌は一日に肉が百貫弱とソレに野菜類を少々加えて栄養の均衡を調整したモノを与えているので、一つ鬼一匹狩るだけで一日分の食餌を賄う事が出来る計算だ。


 とは言え強い鬼や妖怪は基本的に美味いと言うこの世界、比較的強い鬼に区分される一つ鬼は当然美味い。


 肉の質的には全身が腿肉の鶏肉と言った感じだそうで、唐揚げにすると麦酒(ビール)のツマミとしては最高なのだそうだ。


 ……晩飯は千田院で放る物(ホルモン)と牛タンで飯と麦酒にするつもりだったんだが、まぁこっちは冷凍状態江戸屋敷に持ち帰って厨房に有る冷蔵庫へ放り込んで置けば、明日に成っても傷む事は無いだろう。


「唐揚げを食うと成ると檸檬もどっかで仕入れないとなー」


 唐揚げに檸檬は勝手に掛けると戦争に成りかねない危険な行為だが……取り皿に檸檬を絞って漬けて食べれば解決する問題だと思うんだ。


 油っこい唐揚げをさっぱり食べると言う点で、檸檬汁を掛けるのは有りだと思うが、油っこいからこそ麦酒や飯と合う……と言う主張も間違い無い事実だとは思う。


 そう言う俺自身は上記した通り取り皿に檸檬を絞り、漬けたりそのまま食べたりと変幻自在に、その時その時で変えると言う食べ方を好んで居た。


 幸いな事に前世(まえ)の俺は命を落とす頃合いまで、未だ胃もたれなんかを気にする様な体質では無かったので、油っこい唐揚げをそのまま食べるのも好きだったし、檸檬汁を漬けて味変して食べるのも好きだったのだ。


 極めて個人的な意見を口にするならば、米に合わせる時にはそのままで、麦酒を呑むなら檸檬も欲しいと言うのが俺の食べ方(スタンス)だったなぁ。


 食べ物を巡る戦争と言えば、チョコレートにクラッカーの芯が入っている菓子と、同じくチョコレートにビスケットの芯が入っている菓子でも派閥争いが有ったが、俺は両方入っているファミリーパックでどっちも楽しめば良いと考える性質(タイプ)だった。


 この辺を信念が無い(ノンポリ)と捉えるか、其れ共協調性が有ると捉えるかは人それぞれなんだろうが、少なくとも警察官としては余計な争い事を避けるのが正解だと今でも思っている。


 ……警察官としての道徳と正義感だけは譲れない信念として持って居たとは思うが、個人生活(プライベート)に関してはとことんズボラだったからなぁ。


 趣味のネット小説だって携帯電話一つあれば何時でも何処でも読めて、簡単に現実逃避が出来る……と言うだけでハマっていた様なモンで、本気で『好き』だと断言出来る作品は数える程しか無かった気がして来た。


 いや……でも、胸を張って好きだと断言出来る作品は間違い無く有ったし、アレが書籍化すると言う話が生前出ていた時には、絶対買おうと署の近くの書店に予約をしてたんだよなぁ。


 一応、ネット連載版の方は完結までデータ貰ったんで読んだが、書籍版の描き下ろし部分や変更点なんかも有っただろうし、漫画(コミカライズ)化や漫画動画(アニメ)化したなんて話も書いてたので、もう少し向こうで長く生きたかったかもしれない。


 ……ん? 待てよ? 今からでも其れ等を観る事自体は不可能では無いのではなかろうか?


 確か俺が向こうの世界から持ち込んだノートPCはDVDの再生機能は付いていた筈だし、紗蘭が創った此方の世界と向こうの世界を繋ぐ交易網を通して、生き物を送る事は出来なくてもモノを送る事は出来る訳だし買って来て貰えば良いんだ!


 漫画だって紙で買ってきて貰おうと思えば確かに重いし嵩張るだろうが、電子書籍の形で情報端末に突っ込んで送って貰う分には然程の荷物にもならんだろう。


 元々小説を読むのだってあの小説の主人公の様に紙媒体に拘る性質(タチ)では無かったし、確か電子書籍専用の端末なんてのも有った筈だから、其の内ソレを送って貰える様に手配しても良い訳だ。


 と成ると……もっと稼いで置く必要が有るよなぁ。


 紗蘭にだって毎度毎度向こうとこっちを行き来する為に、俺だけ特別扱いで荷物を運んで貰うなんてのは筋違いだ……逆に言えば見合う対価さえ払えるなら向こうの世界から赤白青の高良(コーラ)を買ってきて貰う事も出来るのか?


 いやいや待て待て、流石に飲み物は重い上に嵩張るしアレを配送して貰おうと思ったら、送料をアホ程積み上げねば割りに合わんだろう。


 三合弱《約500ml》の高良一本に十両(約100万円)とか言われても不思議は無い位には、此方の世界と向こうの世界の間を行き来するのには苦労も有れば時間も掛かるのだ。


 流石に『一時の娯楽に供する物』をわざわざ遠い世界から輸入してまで……と言うのは割りに合わなすぎる。


 漫画動画のDVDとか買った事も無いからどんな特典が付いててどれ位の大きさや重さなのか、なんてのは全く知らんが流石に高良を買ってきて貰う程の手間賃は取られないだろう。


「うし、風車の方の稼ぎは貯蓄してそっちに使える資金を調達するとしよう」


 一つ鬼は四煌戌の食餌と今後の装備更新に備えた素材の備蓄に回すとして、ついでで狩った風車の方は全部売りに出して銭にすると決め、向こうの世界との貿易に思いを馳せるのだった。

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