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大江戸? 転生録 ~ファンタジー世界に生まれ変わったと思ったら、大名の子供!? え? 話が違わない? と思ったらやっぱりファンタジーだったで御座候~  作者: 鳳飛鳥
志七郎、南へ の巻

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千二百三十四 危険地帯で考え事をしながら戦う事

 幾つかの鳥居を潜り転移を繰り返すと、最初に入った空間とは別の領域エリアへと入る事が出来た。


 今の俺にとっては正直温いと感じられるが、前世(まえ)の俺だったならばビビリ散らかして居たであろう濃密な殺気が満ちた空間……ここが首縊り神社中層域である。


 パッと見える範囲でも、幾つかの徒党(パーティ)が灰色の蔦が全身を覆っている様に見える巨体の鬼……一つ()と呼ばれる魔物を相手取って戦っていたり、風車と呼ばれる鎌鼬の小さな奴を狩って居る姿が目に入った。


 広い空間に幾つもの五色に塗り分けられた鳥居が点在していると言うのは浅層部と変わらないが、出現する鬼や妖怪の種類と密度が違っているのは一目で解かる。


 ここで西海岸流侍道(ウエスタン・サムライ)の表演に区分される魔法をぶっ放せば、間違い無く他の鬼切り者や冒険者を巻き込む事になるだろうし、ここでは今までの戦闘方式(スタイル)で戦う方が良いだろう。


 最近新しく作って貰った刀は、今までの一般的な脇差し程度の長さから大分伸びて、ギリギリ打刀と言い張っても良い長さまでは伸ばしたが、ソレでも未だ四煌戌の背中に跨ったままで振り回すには少々短すぎる。


 つか騎乗戦闘で使うなら大太刀とか長巻辺りの長物級の長さが無けりゃ戦い辛いだろうし、そもそもとして四煌戌は首が三つ有る都合上、背中の上から正面方向へ武器を振り回すには適さない身体の作りをしているので、やはり徒歩(かち)で戦った方が良いだろう。


 俺が前世に学んだ警視流もそうだし、西海岸流侍道も徒歩での戦闘を前提として創られてた流派だ。


 馬では無いが四煌戌の背に乗ったまま騎乗での戦闘を考えるのであれば、仁一郎兄上辺りに騎乗武術を習うなり何なりした方が良いだろうな。


 と、そんな事を考えながら中層を彷徨いて居ると、群れる事無く一匹だけで居る一つ鬼を発見する事が出来た。


 一つ鬼はパッと見た感じでは、灰色の蔦らしきモノが全身に絡んだ巨体の鬼で、俺が今まで戦った事の有る大鬼や大妖(クラス)の化け物と比べれば、大した事の無い相手に見える。


 けれどもその見た目に騙されれば、俺はあっと言う間も無く奴の腹の中に収まる事になるだろう。


 アレは巨大な木槌を持った人形の鬼に見えるが、実際には長大な蛇が人を形作る様にとぐろを巻いた姿なのだ。


 それ故に人間(タイプ)魔物モンスターだと言う先入観に囚われ戦うと、人形ではあり得ない動きだったり、唐突に伸びて来た首と巨大な口で一発丸呑みなんて真似をされる羽目に陥ると言う。


 そして何よりも厄介なのは蛇故の圧倒的な生命力で、ズタボロに成ってもそう簡単に死ぬ事は無く、かと言って素材が駄目になる様な攻撃の仕方をすれば、折角倒しても討伐報酬だけでは実入りが割に合わない……と言う事になるのだ。


 単純に倒すだけならば金属製の武器や桃の木で作った武器なんかが良く通るらしいが、前者は兎も角後者は桃の木で出来た木槌で頭を叩き潰すとかそんな感じなのだろうか?


 兎角、素材を手に入れる事を考えず、倒すだけならばソレこそ刃物の類は大概金属なので、絶対倒せない相手と言う訳では無い。


『蛇』の概念を持つ魔物であるが故か、其れ共生命力の高さ故か、毒の類は全く効かないと虎の巻(攻略本)には書かれて居たので、肉以外の素材を手に入れる為に試した先人はそれ相応に居たのだろう。


 とは言え毒と一口に言っても、実際には物凄い種類が有るし、アレは効いてもコレは効かない……とか割と普通に有り得るんだが、ソコは幻想的(ファンタジー)な世界だ、毒属性に対して無効以上の抵抗力が有るならば毒の類は効果が無いと言う事で最終回答(ファイナルアンサー)と言う事になる。


 医学だか薬学だかの格言に『この世に薬なんてモノは無い、全ての薬は毒で有り、ソレを薬とするのは匙加減一つだ』とかそんな感じの言葉が有ると前世に聞いた事があった。


 実際、毒属性の魔法は『解毒アンチドーテ』の様に、毒属性? っと疑問符が浮かぶモノや『酒の投槍(リカー・ジャベリン)』見たいな毒と言えば毒だけど……と言う感じの魔法も有る。


 もっと言ってしまえば、霊薬の類は未だに成功しては居ないが、ごく普通に使われている生薬の効能を毒属性の魔法で再現する試みはある程度成功している……と精霊魔法学会(スペルアカデミー)呪文図書室(スペルライブラリー)の本には書かれていた。


 ……多分、ノートパソコンに入ってる百科事典に記載されて居る様々な薬品の化学式やら塩基構造やらを参考にすれば、毒属性の魔法で様々な薬品を再現する事も不可能では無いんだろうけれども、薬学のやの字も齧った事の無い俺がソレをするのは危険でしか無い。


 それこそ上記した格言の通り、匙加減を間違える未来が待ってるのは想像に難く無いし『生兵法は大怪我の基』なんて言葉も有る通り、半可通な知識でちょっと噛みするには危険が大き過ぎると思うのだ。


 俺の前世が医者だったり薬剤師なんかだったならば話は変わってくるのだろうが、所詮は暴力団(ヤクザ)や海外犯罪組織(マフィア)相手に凄んでビビらせるのが役目だった捜査四課(マル暴)のお巡りさんでしか無い。


 まぁ部下の中には取り締まりを続けていく内に、麻薬関係の知識色々と積み上げて行った者が居たりもしたので、結局の所は俺の勉強不足の言い訳に過ぎないのかもしれないけどな……。


 兎にも角にも出来やしない事を嘆いていても仕方が無い、とは言え以前戦った黒竜の様に毒は効かないが酒は効く……なんて頓知の様な存在も世の中には居るのだから、考える事自体を放棄するのはまた違うんだろう。


 と、毒に関して長々と話たが一つ鬼の素材を確実に、綺麗な状態で手に入れる方法は、過去の先人達が確立しておりソレはきっちり虎の巻に書かれて居る。


 曰く、一つ鬼の鱗皮を綺麗な状態で手に入れたいならば、冬場に雪や氷をかき集め持ち込み、奴の身体を冷やすのが最善である……と。


 人の姿を模した化け物とは言え飽く迄もアレの本質は蛇の変化で有り、変温動物である爬虫類で当然の様に寒さに弱い訳だ。


 当然普通ならば虎の巻に書かれていた様に、事前準備が必要に成る攻略法な訳だが、俺や陰陽寮の術者ならばソレを覆す手段を用意するのは然程難しい事じゃぁ無い。


「古の契約に基きて、我、猪河志七郎が命ずる……」


 とは言え使うのは冷気を司る氷属性では無い、氷属性は確かに冷たさの魔法では有るのだが、ソコに含まれる攻撃系の魔法の殆どが氷刃(アイスブレード)氷塊(アイスブロック)と言った感じで氷をぶつけるモノばかりなのだ。


 確かに氷属性に弱い魔物をただ倒すだけならばコレでも良いが、綺麗に倒すと成ると氷属性よりも、加熱冷却を自在に操る熱属性の方が使い勝手が良かったりする。


 上位の氷属性魔法である氷棺(アイスコフィン)辺りならば、一発で相手を氷漬けにして即死を狙う事も不可能では無いが、この手の即効性が高い魔法と言うのは対象の抵抗力を抜けなかった場合に全く効果が無いのが普通なのだ。


 では今俺が使おうとしている熱属性魔法の一つである『冷凍(フリージング)』はと言えば、氷棺の様に相手を氷で包み込むと言う訳では無く、飽く迄も相手の身体から熱を奪う事で対象を凍らせる魔法で熱属性に耐性が無い限り完全に無効化される事は少ない。


 コレは冷凍の魔法は抵抗されたとしても熱の発散速度が遅く成るだけで、完全に無効化される訳では無いと言うのが大きな理由なのだが……この辺は何故そうなるのかと言った仕組み(メカニズム)学会(アカデミー)でも完全に解明はされていないと言う。


 この辺は精霊魔法学会と言う組織が、どちらかと言えば精霊魔法を解き明かす事を目的とした組織なのでは無く、使い手の裾野を増やす事と新たな魔法の開発に力を注いで居る事が理由だと思われる。


 当然新たなモノを生み出すには基礎研究が大事に成ってくるハズだが『何故そうなるのか』よりも『何か知らんけど上手く行ったからヨシ』と言う体質が、古い時代からの伝統として降り積もって行った結果なのではなかろうか?


 そう言う意味では学術的な探求は北方大陸(ロドム)錬玉術師製造所アルケミストファクトリーの方が色々と進んでいる可能性は有るよな。


 学会が魔法は魔法だと考え有効活用を考える組織なのに対して、あっちは魔法を科学している組織なのだと錬玉術を多少齧った上で、短い時間とは言え錬金術師製造所を見学させて貰った時に思ったもんだ。


「……彼の者の持つ全てよ凍てつけ! 冷凍!」


 戦場で思考の全てを敵に向けず他所事を考えていたとしても、ソレは完全に隙を晒して居ると言う訳では無い。


 二つ三つの事は同時並行で出来る様に成ってこそ、戦場で安定して生き残る事が出来るのだ。


 俺は様々な事を考えつつもきっちりと呪を練り上げ、目の前に居る一つ鬼に対して魔法を放つ様に四煌戌と焔羽姫に命じたのだった。

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