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大江戸? 転生録 ~ファンタジー世界に生まれ変わったと思ったら、大名の子供!? え? 話が違わない? と思ったらやっぱりファンタジーだったで御座候~  作者: 鳳飛鳥
志七郎、南へ の巻

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千二百二十二 志七郎、小遣いを稼ぎ新たな相棒を手に入れる事

 無事に師範代との転移実験に成功した俺は、アレから少しずつ荷物や人数を増やしての転移を繰り返し、西方大陸で行った事の有る場所の遠駆要石(ポータルストーン)ならば安定して跳ぶ事が出来る様に成っていた。


 人数に関しては持って行く荷物が少なければ最大で八人、戦場(いくさば)帰りなんかで四煌戌に戦利品を満載すると言う前提ならば、自分と四煌戌以外に三人で計四人が今の俺達の限界点らしい。


 とは言えお花さんの様な極々一部の大魔法使いでも無ければ、六人徒党(パーティ)を連れて転移出来れば時属性の魔法が使えると胸を張って言える段階(レベル)らしいので、そう言う意味では合格点に達したと言えるだろう。


 今日はワイズマンシティから別の都市国家に有る冒険者組合(ギルド)へと、冒険者の徒党を連れて転移すると言う一種の短時間労働(アルバイト)を行う事で、賃金を得つつ修行もすると言う一石二鳥の行動を終えて部屋へと戻って来た。


 冒険者組合から他の冒険者組合へ遠駆要石を使っての転移は、ある程度大きな領土を持つ国ならば其の国内に限っては特に規制無く組合から組合へと簡単に跳ぶ事が出来るのだが、国境を挟むと成ると流石にそうは行かない。


 此処ワイズマンシティでも南の国境に一番近い所に有る遠駆要石へと転移した後に、他国へと抜ける為には更に半刻(約一時間)程は歩かなければ成らないのだ。


 そうして国境を超えても直ぐに向こう側の冒険者組合へと繋がる遠駆要石が有る訳では無く、更に半刻で合わせて一刻もの時間が一つの国毎に掛かるので有る。


 そりゃ流石に要石を使わずにずっと徒歩でちんたら進むよりは圧倒的に早く移動出来るが、幾つもの都市国家を挟んだ移動とも成ると『塵も積もれば山となる』の理論で可也の時間を要する事に成る訳だ。


 けれども精霊魔法を含めた転移系の魔法や術は冒険者組合の尽力も有って……と言うか、法律で禁止して居る所も有るが転移元の記録(ログ)なんかは世界樹(ユグドラシルサーバー)接続(アクセス)出来る手段が無ければ確認は出来ないので、有名無実化して居ると言うのが正しいらしい。


 とは言え冒険者組合は南方大陸(カシュトリス)帝国に置いても、其の国是である『亜人(デミヒューマン)の排斥』に対して『冒険者組合の冒険者には手出しを許さない』と言える程度には国際的に権威を持った組織である。


 神職や皇帝と言う世界樹の神々の代弁者でも無いのに、世界樹の権能(ちから)で管理されて居る冒険者組合の組合員証(ギルドカード)や、其れに付随する金銭口座の管理や犯罪記録の閲覧なんかが許されている時点で、神々公認の組織と言う事も可能な存在なのだ。


 火元国や南方大陸の様に現役で帝位に就いている者が居る国家ならば、そうした世界樹の権能の一部を配下の者や商会なんかに委任する事も不可能では無いが、(みかど)を頂かない国家の王はそうした物を利用したければ神職に頼るしか無いのが現状である。


 なので皇帝が大陸を支配する南方大陸ならば冒険者組合を排除しても問題無い様にも思えるが、残念ながら数年に一度は何処かで起きる大鬼や大妖(クラス)の大型魔物(モンスター)との戦いを考えると、腕の立つ冒険者を完全に排除すると言う選択肢は取れないのだ。


 多くの国で冒険者は放って置いても魔物を討伐し金を稼ぐ存在で、彼等が出かけ帰って来ないと言う情報が入った時点で、其処に何等かの異常が発生したと知らせる金糸雀(カナリア)の役目も担う存在である。


 万が一にも組合所属の冒険者が悪さをした場合には、組合がその体面を守る為にも国家権力よりも執拗に罪人を追い詰めるなんて役目も熟す為、組合が有ると言う事は信頼出来る冒険者が其の国に居る……と言う意味では利益(メリット)しか無いのだ。


 対して冒険者組合を排除した場合には、魔物の被害から国民を守る為の活動は全て国が背負う事に成るし、組合に所属出来ない様な不良冒険者の吹き溜まりに成る事は目に見えている。


 今の『大丈夫! 冒険者組合の冒険者だよ!』と世間から認められるまで、冒険者と言う者達は寄る辺の無い与太者達で有り、暴力を生業とする破落戸(ごろつき)の類と区別のつけようが無かった時代も有るのだ。


 其れを変えたのが今の組合を創立した数名の叡智有る冒険者達で、彼等は自称『組合』で有りながら碌な仕事をせず利益(アガリ)を吸い上げるだけの様な組織を叩き潰し、真っ当な所とは合流し世界規模の組織へと作り変えたのである。


 そして組合は冒険者を目指す者や冒険者に成ると言う者に教育と規律を与える組織と成り、結果として上記の宣伝文句(キャッチフレーズ)が世に罷り通る様に成った訳だ。


 俺の想像が間違って居なければ、其れを成した中核となる冒険者は、前世(まえ)の世界か其れに近い世界から来た転移者や転生者の類なのでは無かろうか?


 なお火元国に冒険者組合が根を張って居ないのは、世界の端っこに有る小さな島国だからと言う事もあるが、幕府開陳の祖で有る家安公が冒険者組合と友好関係を築き、互いの領分を犯さない限り冒険者と鬼切り者を相互に受け入れると言う協定を結んだからだと言う。


 京の都辺りや死国の様な激戦地域に行けば、火元国を訪れる外つ国の冒険者は少なからず見る事は出来るが、彼等の大半は並の武士よりも圧倒的に強い実力者揃いであると同時に、自分達が組合の看板を背負って居ると言う自覚の有る人格者達だ。


 その為、幕府や各地の藩主も外つ国の冒険者だからと彼等を差別する様な真似はせず、一般の鬼切り者と同様か、若しくは其れ以上に丁寧な対応を心がけていると言う訳である。


 と、そんな事を考えながら今日の利益を軽く計算し、普通に考えれば大金な筈なのに、端金にしか思えなくなっている自分の金銭感覚に一寸だけ怖い物を感じながら、お連と一緒に使っている部屋の扉を開けた。


「いよう、久し振りじゃぁ無いか。お前さんの許嫁だって言うお嬢ちゃんとは一寸話したが、お前さんの様な朴念仁にゃぁ勿体無い可愛らしい娘っ子じゃねぇの。狸腹の奴が聞いたら歯噛みして怒り狂うぞ?」


 すると、唐突に蓮っ葉な物言いでそんな言葉を投げかけて来た一匹の大猫……うん、向こうの世界と此方の世界を行き来する事が出来る数少ない存在である、先代旅猫の紗蘭だ。


「まぁ彼奴も、もう一人のお前さんのダチ公も、良い相手が見つかって納まる所に納まったんだ。お前さんも年貢の納め時って事だわにゃー」


 ケラケラと笑いながら煙管を片手に紫煙燻らせる紗蘭は、何やら意味有りげな視線を机の上に置いて有るノートPCへとやってから改めて、にやりと下卑た……猫の表情は解らんので恐らくはそう言う意味の笑みを浮かべてそんな言葉を口にする。


 そうか(ポン)吉も芝右衛門もとうとう結婚する事に成ったのか。


 いやおっぱい星人だった芝右衛門は兎も角、二次元の幼女に入れ込む性的嗜好だった本吉の奴は一体どんな相手と結ばれたんだ?


「まぁ生まれ変わって尚も縁が切れなかったダチ公だ、その相手に興味は有るわにゃー。ホレ今回の御土産だ、此奴の中にゃ今年の年賀状用に取った写真が入ってるから其れを見て相手を確認すりゃええさ。ま、芝の字は兎も角、狸腹の方は本気(ガチ)で驚くぞ?」


 そんな事を言いながら紗蘭は任侠映画の親分が身に付けている様な着物の懐を、軽く漁る様な仕草の後絶対其処から出てくるのは奇怪しいだろうと言いたく成る大きさのノートPCを引きずり出した。


 パッと見る限りでは俺が向こうの世界で芝右衛門(友人)から貰った物と同系統に見える、明らかに『頑丈です』と全力で主張して居る物で、恐らくは前の物同様に現場作業で使う事を前提とした機種なのだろう。


「前のは買ってから暫く経ってる所為も有って、そろそろ中身が奇怪しく成っても不思議は無い頃合いだそうでね。お前さん所からあーしが持ち帰る霊薬(クスリ)でボロ儲けしてる恩返しだそうだよ」


 今の所は使っていて変な挙動なんかは無いのだが、家電や電子機器の類は長くとも十年程度が寿命だと聞いた事も有るし、もしかしたら中の部品が劣化して居ると言う事は有り得るかも知れない。


 前に追加のネット小説や電子遊戯(ゲーム)を入れて持って来てくれた記憶媒体(USBメモリ)を使えば、今まで使っていたノートPCで作った情報(データ)を移植する事も出来るし、此れは本当に有り難い土産と言えるだろう。


「態々こんな嵩張る物を持って来て頂いて本当に有難う御座います。代わりと言っては何ですが、向こうから此方に持ち込めば先ず間違い無く儲かる商品を思い付いたので、その情報を……」


 中に保存されて居ると言う二人の御相手の写真も気になる所では有るが、俺は以前考えた様に向こうの世界の進んだ避妊具(コンドーム)で一儲けすると言う案を、お連には聞かれない様に紗蘭に耳打ちするのだった。

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― 新着の感想 ―
いつも楽しく拝読しています。 『大丈夫! 冒険者組合の冒険者だよ!』 このキャッチフレーズは大元の攻略本のせいか信用しきれないようなw
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