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大江戸? 転生録 ~ファンタジー世界に生まれ変わったと思ったら、大名の子供!? え? 話が違わない? と思ったらやっぱりファンタジーだったで御座候~  作者: 鳳飛鳥
志七郎、南へ の巻

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千二百八 志七郎、スペルボウルを観戦し鎧球と闘球に野球を思う事

 轟音と共に投じられたボールが相手陣営(チーム)前衛(フロントライン)頭上を超えて大きく飛んでいく。


 その球を追いかける板金鎧(プレートメイル)に身を包んだ選手(プレイヤー)は、鎧の重さ等ものともしない速さで競技場フィールドを駆け抜け、迫りくる相手方の選手達を次々と躱し見事に捕球(キャッチ)して魅せた。


 試合開始間も無くの大活躍(ビッグプレイ)に地元ワイズマンシティの球団で有るワイズマンオクトパスの応援団(ファン)達は激しい歓声を上げて、既に勝利を手にした()の様な大盛り上がりを見せいてる。


 とは言え、今の攻撃で点を得た訳では無く、攻撃権利を更新したと言うだけの話なんだがな。


 と、地元民では無いが故に多少冷めた感じで俺はお連と並んでスペルボールの試合を観戦して居る訳だが、試合中に使われている精霊魔法には学ぶべき物が有ると思えた。


 趣味と言える程では無いが前世まえの俺は闘球(ラグビー)鎧球(アメフト)の両方を観戦するのが割と好きで、毎年一月三日に東京ドームで行われる鎧球の日本一決定戦で有るライスボウルは休みを取って観戦しに行くのが常だった。


 まぁライスボウルは大学日本一と社会人リーグであるXリーグの優勝チームの試合と言う形式だった為か、俺が見に行く様に成った頃には大体は大差で社会人チームが勝つ試合ばかりに成っていたので、近い内に試合内容に見直しが入るんじゃ無いだろうか?


 対して闘球の方は休みの日のTVで中継がやっていたら見ると言う程度の熱の差が有ったが、此れは何方かに傾倒して居るとかそう言う事では無く、闘球は地上波で観れるが鎧球は中継が殆ど無いと言うのが理由だ……まぁライスボウルは普通にTV中継入るんだがな。


 兎にも角にも此のスペルボウルは基本が鎧球では有る物の、試合中にきっちり魔法が飛び交う所が完全に幻想(ファンタジー)世界の運動競技(スポーツ)で有る。


 基本的な取り決め(ルール)としては大半が鎧球に準じるのだが、魔法の有無はやはり大きな要素(ファクター)と言えるだろう。


 魔法の使用は一回の攻撃につき一度までで、使用する事が出来る魔法は単属性下位のみで、更に直接的な攻撃魔法の使用は禁止で有る。


 先程の攻撃で使われたのは恐らく、弓で撃った矢を操作する『矢操作(コントロール・アロー)』と言う風属性の魔法を応用した、球操作(コントロール・ボール)とでも言うべき魔法なのでは無かろうか?


 矢操作も単純に矢を誘導矢にすると言うだけで無く、追い風を加える事で威力や射程を伸ばしたりすると言った応用も聞く物らしいので、投擲する際に響いた爆音と空中で見せた不自然な起動から、そんな風に予想を立てて見る。


 魔法を使えるのは何も攻撃側だけでは無い、守備側の陣営も相手の攻撃を妨害する為の魔法を使う事が出来るのだが、此処で立ちはだかるのが『魔法を使えるのはクォーターバックが球を持っている間だけ』と言う取り決めだ。


 クォーターバックは鎧球やスペルボウルで攻撃の起点と成る立ち位置(ポジション)の選手で、殆ど全ての行為(プレー)は彼等から始まると言っても過言では無い。


 前衛から後ろへと投げ渡された球を、大きく前へと走る選手に遠投で投げ渡したり、前衛同士が打つかって出来た穴に走り込んだ選手へと短い距離投げ渡したり、投げると見せかけて走り込んできた選手に手渡しそのまま突破させたり……等と言った判断をするのだ。


 普通の鎧球ですら無数と言って良い数々の行為が有るのに加えて、スペルボウルでは更にどんな魔法を使うのかと言う選択もクォーターバックの役目で有る。


 球を投げる前にワイドレシーバーやタイトエンド等の球を受け取る資格を持つ選手が走り込めば、当然防御側の選手は其れを邪魔しようとするが、地面を小さく隆起させ足を取る『足掛け(スネア)』と呼ばれる魔法で更に邪魔をするなんて選択肢も有り得るらしい。


 更に言うならば球を他の選手に手渡したと見せかけて、実際には球を保持した儘で次の行為に繋ぐとか、逆実際には手渡したのに未だ持っていると見せかけると言う様な、前世の世界の鎧球でも良くある引っ掛け(トリック)が魔法と言う要素が有る御蔭で更に深い一手に成る。


 球を渡したと見せかけて少し遅らせてから投げると言う引っ掛けに対して、相手の魔法使いはレシーバーの足場を乱して予定地点まで進ませないと言う判断をした場合、もしも実際には球を他の選手に手渡して居たならば其れは反則行為と成ってしまうのだ。


 基本的にスペルボウルでは反則行為をしても退場処分とかそう言う罰則(ペナルティ)は無い。


 反則に対する罰則はほぼ全て反則の内容に従って五(ヤード)から十五碼の範囲で罰退と呼ばれる後退が命じられる事に成る。


 向こうの鎧球だとあまりにも酷い反則行為には出場資格の取り消しと言う『退場処分』が下される事も有るが、命の値段が軽い分此方ではそうした個人に対する罰則は無いのが普通らしい。


 そんな事を考えている間に試合は次の攻撃へと移って行く、鎧球もスペルボウルも四回の攻撃権利の間に十碼進むのが基本的な目的で、十碼進む事が出来たら再び四回の攻撃権利を獲得する事が出来るのだ。


「お前様……先程の派手な進軍で沸き立つのは解るのですが、詳しい取り決めが解らないので、どう言う作戦でああ成ったのかが今一つ解らないです」


 ただその一回一回の攻撃の際に作戦会議を行ったりする時間が有る為に、鎧球は良く試合が止まる……と、詳しい取り決めを知らない人には退屈な競技として映るのだと聞いた覚えがある。


 先程の大活躍で一気に距離を稼いだワイズマンオクトパスも試合開始後一回目の攻撃は単純な正面突破が失敗し、二回目の攻撃は渡した振りをして相手の選手を引き付けてからの投擲を狙ったのだろうが見抜かれ突撃を受け失敗。


 三回目の攻撃で破れかぶれの長距離投擲が運良く通った……と言う感じに見えるが、此れだって失敗した二回の攻撃の中に伏線が潜んで居た可能性は十分に有る。


 そうした作戦の妙こそが鎧球やスペルボウルの魅力の一つなのだが、確かに詳しい取り決めを知らなければ、其れを理解する事も難しいだろう。


 何せ鎧球の時点で攻撃の種類(パターン)は軽く百を超える数が有り、選手の大半は其れを覚える事が前提に成るとか聞いた事が有るので、どんな魔法を使うのかを組み込むと、

 どれ程膨大な量に膨れ上がるか……。


 鎧球が高い肉体(フィジカル)だけで無く、高い知能(インテリジェンス)も要求する極めて高度な運動競技と言われていた理由が良く分かる。


 そう考えると日本の高校で闘球部は結構な数有るのに対して、鎧球部は数える程しか無いと言うのも、防具を揃える予算の問題だけでは無いのかも知れない。


 いや闘球が鎧球に比べて簡単な物かと言えば全然そんな事も無いんだけどな……俺がくたばった年にはワールドカップが久々に衛星放送で……とは言え録画では無く生中継が入ると言う話だったので割と楽しみにしてたんだがなぁ。


 まぁ何方にせよ、闘球選手も鎧球選手も単なる脳筋には務まらん高度な戦術が絡む競技だと言う事だ。


 ……なんか此の言い方だと日本で恐らく最も競技人口が多い野球は、脳筋でも出来る競技の様に思えて来るが、恐らくは捕手の様な一部の立ち位置を除けば事実として『そう』なんだろうな。


 流石に職業(プロ)選手に成る程の逸材とも成れば、当然の様に頭脳面でも鍛えられた者達の筈なのだが、実は俺が任官するより少し上の世代辺りだと元職業野球選手の暴力団員(ヤクザ)と言う者はそこそこ居たりする。


 職業選手に成る事が出来る時点で肉体的には優等生(エリート)なのは間違い無いのだが、純粋に実力不足だったり怪我や素行不良なんかが原因で一軍に上がる前に戦力外として放出される選手と言うのは一定数は居る物なのだ。


 此れが大卒で職業選手に成った者ならば早々堕ちる事も無いのだが、高卒で球界入りした者と言うのは人生の殆どを野球に捧げて来た関係も有って、社会経験も人生経験も殆どが野球一色でしか無い。


 そう言う者がポンッと何の保障(ケア)も無しに社会に放り出されると、悪い者に騙されたり身の振り方を過ったりして、普通じゃぁ抱えきれない様な負債を背負う事に成り、其れを返す為に全うでは無い方法に手を出して……結果暴力団員に成る羽目に陥りるのだと言う。


 とは言え其れは昭和の頃の話で、俺が任官した頃には戦力外と成った者に対する保障もしっかりして来た為に、早々有る話では無く成っていたそうだ。


 まぁ野球は競技人口が圧倒的に多いが故に、身体は優等生だが頭はアレな選手でも上に伸し上がる事が出来る可能性が割と有ると言う事なのだろう。


「さっきのはつまり……」


 そんな事を考えながら俺は、前世に身に着けた鎧球の知識を活かしてお連に試合の流れと取り決めに付いて軽く解説しながら、観戦を楽しみ続けるのだった。

今週末はまた泊りがけで出掛ける用事が有る為、次回更新は来週月曜日深夜以降と成ります

ご理解とご容赦の程宜しくお願いいたします

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― 新着の感想 ―
鎧球ほんとに時間が進まないですよね!私は闘球出身の人間なもんで試合時間残り1分から7分くらい粘ってたのにはとても驚きました
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