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大江戸? 転生録 ~ファンタジー世界に生まれ変わったと思ったら、大名の子供!? え? 話が違わない? と思ったらやっぱりファンタジーだったで御座候~  作者: 鳳飛鳥
志七郎、南へ の巻

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千二百七 志七郎、基礎を物にし身体能力を訝しむ事

 アレから数日が経って視界転移(ヴィジョンテレポート)はモノにしたと言える程度には使える様に成った。


 本当ならば無詠唱で使えれば一番良いのだろうが、俺の戦闘形式(スタイル)が刀や銃を持ち手が塞がるのが基本形なので、戦闘中に使う際には短縮詠唱の為の発音が必須と成る形だ。


 其れでも師範代がやっていた様に、踏み込みの際に転移を使わず離脱の時だけに限定するならば不足は無い。


 大型の魔物(モンスター)一体を確実に仕留めるならば、死角へと瞬間移動して首をスパッと刎ねるのが一番手っ取り早いが、魔物と言うのはある程度の群れで行動する場合の方が圧倒的に多い。


 大鬼や大妖と呼ばれる様な連中も、取り巻きと成る同族下位の部下を連れている事が大半だ。


 一対一の勝負を挑まれたならば其れを受けないと言う選択肢は殆ど無いとは言われているが、転移からの首切りは不意を突いてこそ効果的な戦法と言えるが、真正面からの尋常な勝負で其れが通る可能性は限りなく低いだろう。


 格闘を扱う漫画なんかで見る事の有る『一瞬の内に相手の後ろ側の死角へと回り込む』と言う表現は実は現実的に有り得る技法だったりする。


 武器や手なんかを敢えて無駄に動かす事で其処へと視線を向けさせ、その部分を可能な限り最後まで残して踏み込むと、相手からは一瞬で消えた()の様に映るのだ。


 ただ此れが通じるのは相手の一部しか見ていない未熟者だけで、視点を一箇所に固定せず全体を俯瞰して見る所謂『観の目』が出来る者には通用しない一種の手品の様な物である。


 では瞬間移動はどうかと言えば、先ず間違い無く初見殺しとして機能するだろう。


 瞬間移動のから必殺の一撃なんてのは『其れが出来りゃ苦労しない』の極みとでも言うべき反則級の技だ。


 しかし此れには大きな欠点が一つ有る、万が一にも即死を取る事が出来なかった場合に、瞬間移動に依る離脱は出来ず、追撃も厳しい様な状況に陥った場合には、氣やその他の方法で脱出するしか無くなると言う事である。


 自力での踏み込みで有れば失敗しても成功しても、次に繋がる形で足を動かす事が出来るが、瞬間移動の唯一にして最大の欠点が転移直後に足下が不安定に成ると言う事なのだ。


 意図的に地面より少し上へと転移し、着地前に一撃を繰り出す事は不可能では無いが、其れをする位ならば素直に入りは氣なり加速(ブースト)の魔法なりを使い、転移は離脱に回す方が余程安定感が有る……と言うのが魔法格闘家(ウォーザード)達の研鑽の結果である。


 もしかしたらでは有るが刀と銃に精霊魔法を組み合わせた西海岸流侍道(ウエスタンサムライ)では、学会(アカデミー)魔法格闘家達とは違う形に発展した魔法の扱い方を習う事が出来るかも知れない……と期待する価値は有るだろうか?


「……瞬転!」


 視界転移の(コツ)は、短縮詠唱の言葉を口にした瞬間に視点をしっかりと転移先に固定し、其れを四煌戌達に意識共有で送る事に有る。


 視点がブレて居たり、共有した積りの拍子タイミングがズレて居たりすると、転移先もズレてしまうのだ。


 この辺は氣を使った意識加速を併用する事で、氣を扱う事の出来ない普通の精霊魔法使いよりは難易度が下がっていると言えるだろう。


「良し、今回も成功だ。四煌、そろそろ一旦休憩しようか」


 続けて七回目の転移が無事に想定して居た場所へと移動出来たのを確認し、俺は四煌戌へと歩み寄り既に二百六十貫目(約一トン)を超える所まで成長した彼等に押し倒される。


 流石に彼等も体重を掛けて伸し掛れば俺がヤバい事に成ると言うのは理解して居る様で、負担が掛からない程度に加減をしながら巨大な三つの首が其々舌を伸ばして俺の顔を舐めて来た。


 ……此奴等も本当に大きく成ったよなぁ、仔犬の頃はこうして舐められても普通に可愛いの範疇だったが、今の此奴等の大きさで此れされると割と本気で身の危険を感じるんだよな。


 勿論此奴等を信頼して居ないと言う訳じゃ無い、で無けりゃ此奴等が寝返り一発すりゃ圧死する様な状態で眠る様な真似が出来る筈が無い。


 とは言え万が一にもこの状態で此奴等の誰か一頭でも(くしゃみ)なんかしよう物なら、俺の頭はガブッと行かれる事に成る。


 幾ら氣を纏う事で銃弾すら胸筋で弾く事が出来る此の世界と言えども、硬い上位種の魔物の骨すら与えればオヤツ代わりにボリボリと食ってしまう彼等の咬合力の前では、先ず間違い無く頭蓋骨は粉々に成るだろう事は想像に難く無い。


 まぁ此方が怪我をしない様に配慮した伸し掛かり方をして居る時点で、此奴等が俺を傷付ける様な意図が無いのは間違い無いし、今日はもう風呂入って晩飯食って一発便所で楽しんだら寝るだけだから好きにさせて置こう。


 ……うん、十代の頃って此処までお盛んだったっけ? って思う位には我慢が効かないんだよね。


 流石に人食い加加阿(マンイーター)猪口齢糖(チョコレート)の効能は抜けて居る筈だが、息子さんを慰めてからじゃ無いと寝床に入るなり彼がギンギンに元気に成る所為で眠れないんだよなー。


 今の所はお連に無体を働く様な真似は自重出来て居るが、何時までも同じ寝台(ベッド)で寝ていると何時か間違いを起こしそうな気がするんだ。


 いやでもそう簡単に過ちを犯す事が出来る様な事が出来るならば、俺は前世まえに三十五歳を過ぎるまで童貞(清い身体)で居られた筈も無いよなぁ。


 確かにお連は客観的に見て可愛らしいとは思うが、其れは飽く迄も公園なんかで遊んでいる子供を見て『可愛いな』と思う様な感覚で、情欲の類を抱く様な物では無い筈なのだ。


 にも拘らず、彼女の体臭で息子さんが全力全開バリバリ最強状態(モード)に突入するのは、元気を取り戻した此の身体が前世の俺の身体よりも色々な意味で元気過ぎるのが原因なのでは無かろうか?


 前世の同じ年頃の頃は未だ息子さんにそう言う欲求は無かったが、そう言うのを知る歳に成っても勃て無く成るまで木刀を素振りすりゃ、夜中に悶々とする様な体力も無く朝までぐっすり眠れた物だ。


 しかし今生の此の身体は氣と言う超常の異能(ちから)を抜きにしても、体力が有り余り過ぎているのである。


 向こうの俺が恐らく肉体的に全盛期と言って良かっただろう二十代半ばの頃と比べても、今の俺の方が素の腕力では流石に劣る物の、持久力や耐久力そして回復力と言った物に関しては圧倒的に今生の方が上だと断言出来る程なのだ。


 具体的に言えば百(メートル)程度でも全力で走れば、前世だと息が上がって其れを整えるのに少しは時間が掛かったが、此方の俺は本の一、二回深呼吸をする位で回復してしまう。


 四千米の持久走だって向こうに居た頃だと、ある程度歩速(ペース)を整えて無理無い速さで走らなければ、後半はバテバテに成って酷い結果に成るのが当然だったが、此の身体の場合四千米を全力疾走する事すら不可能では無い。


 まぁ食事の量も前世の俺とは比べ物に成らない位に食うし、その燃費に合わせた猪山藩猪河家の血筋にふさわしい身体能力(スペック)を持って居ると言えば其れまでなのだろうが……息子さんにまで其れが来るのは正直勘弁して欲しかった。


 でもまぁあの夜の様に一晩に何度も……と言う訳で無く一回で満足してくれて居るのだから未だマシと思って置くべきだろうか?


 幸いノートPCの中には未だまだ読んでいないそう言う場面(シーン)の有る小説や電子遊戯(ゲーム)は幾つも有るし、暫くはオカズに困ると言う事も無いだろう。


 うん、次に紗蘭と会った時にはそっち方面の品も注文させて貰うとしよう、避妊具を此方に持ち込めば商売に成ると言う話と交換(パータ―)にすれば文句は言われまい。


 そんな事を考えながら俺は、四煌戌の涎ででろでろに成った顔を軽く手で拭いながら、彼等の顔の下から脱出を計るのだった。

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