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大江戸? 転生録 ~ファンタジー世界に生まれ変わったと思ったら、大名の子供!? え? 話が違わない? と思ったらやっぱりファンタジーだったで御座候~  作者: 鳳飛鳥
志七郎、南へ の巻

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千百九十五 志七郎、言葉の違いを思い神話を考える事

「オー! お浸しプリンネ! チャンと鞭今日して鱒カー! 仇名は清廉末法真魚ぶ為に西屁と行ったけど、錬玉術(アルケミー)の腕も磨く駄目ヨー!」


 現役の錬玉術師としては一番地位が高い筈の虎殿の工房は、外観も他の工房と然程変わり映えのする物では無かったが、内部の設備も火元国の智香子姉上の工房と然程変わる事の無い物の様に見えた。


 そんな場所で俺達を迎え入れてくれたのは、偶々持ちきれない素材を保管する為に戻って来ていたと言う寅殿の相変わらず怪しげな火元語だった。


「寅殿、俺も北方大陸語(ロドム)西方大陸語(フラウベア)も普通に話せる様に成ったので、無理に火元語では無くても大丈夫ですよ」


 俺が思わず苦笑いを浮かべて北方大陸語でそう返すと、彼は心底悲しそうな顔をして


束子(たわし)の火元語、何科お菓子ですか? お腹一杯に成るまで便狂したですが、未だ垂れ無いですかね?」


 と、そんな言葉を拙い火元語で返して来る。


「火元語は他所の言葉とは文法から何から全然違っていて使い熟す様に成るまで行くのは中々に骨が折れるわよね。私だってあの人と結婚したばかりの頃は寅殿と変わらない頓珍漢な言い間違いを良くして居たわ。寧ろ十年も掛けずに此処まで来たなら大した物よ」


 すると火元語の中でも江戸弁と呼ばれる物では無く、家安公が定めたとされる標準語と呼ばれる綺麗な発音でお花さんが寅殿を擁護する様にそんな言葉を口にする。


 お花さん曰く、北方大陸語と西方大陸語に南方大陸語(カシュトリス)は、どれも世界樹ユグドラシル諸島アーキペラゴで使われる神語(ゴッドハンド)と呼ばれる言葉から派生した物で、各地の少数民族が使う様な言語も大体は共通した文法と単語に多少の差異が有る程度らしい。


 俺が持って居る前世(まえ)の感覚で言うなら、西方大陸語が英語に近い感じで、北方大陸語が独逸語、南方大陸語が仏蘭西語に相当して居る様に思える、故に其の感覚を頼りに考えると神語と言うのは羅甸(ラテン)語に近しい物なのでは無かろうか?


 まぁ西方大陸語や南方大陸語に北方大陸語も、其々が其々共通語(コモン)と呼ばれる火元国に置ける標準語の様な物を制定しては居るが、実際には地域や都市に依って方言程度の差異は存在して居ると言う。


 前世の世界ではテレビやラジオが普及した現代に置いて、方言は最早老人達が使う言葉で有り、若い世代の者は普通に標準語を使う……と言う地域が割と多く成っていると言う話を聞いた事が有る。


 俺が住んで居た千薔薇木県は、電車で一時間も有れば都内に行ける関東地域内だった事も有って、幼い頃から普通に標準語に近い言葉で会話して居たし、方言と言う程の方言も無かった様に思う。


 けれども出張で行った沖縄や鹿児島辺りの年配警察官の使う言葉は、同じ日本語だと言われても『嘘だ(ダウト)!』と言いたく成る位には、独特の表現や訛りが有った事を覚えている。


 火元国では江戸で育った大名家の子でも御国言葉が理解出来ないと、国許に戻って大名をやる上で家臣の言う事が理解出来ない……と言う事にも成りかねない為に、態々国許から訛りの強い家臣を呼んで跡継ぎには御国訛りの教育を受けさせるのが普通だと言う。


 其の点で猪山藩は大凡標準語が御国言葉に成っている為にそうした苦労は無いらしいが、俺は将来富田藩を乗っ取る予定な訳だから、その内そっちの勉強もする必要が有るんだろうな。


「言え寅殿の火元語が変とかそう言う事では無く、此処は北方大陸なので此方の言葉で話さないと妙な密談をして居るとでも誤解されては困ると言うだけですよ」


 実際、前世の世界で日本人が海外へと旅行した際に『日本人は其の国の言葉が解らない』と言う偏見から、表面上はにこやかに対応しながらも言葉では口汚く罵るなんて真似をされる事が有った。


 俺自身も英語や独逸語はある程度理解出来ては居たが、伊太利イタリアに行った際には言葉回りで苦労した覚えが有る。


 幸い英語が出来れば余程田舎で無ければ意思疎通に困る事は無い……と言うのは本当の事で伊太利に行った時にも大体は英語で通す事が出来たが、『此奴伊太利に来てるのに伊太利語の勉強して来なかったのか?』と馬鹿にされて居たのは間違い無いだろう。


 あの利便性を知ると日本の英語の通じ無さは確かに世界的に見れば異様と感じるのも仕方ない事なのかも知れ無い。


 ちなみに東方大陸には共通語や標準語と呼べる様な物は無いそうで、北側の鳳凰武侠連合王国では各地の部族や民族毎の言葉と、中央議会なんかで使われる鳳語と言う言葉が使われ、南部の龍人王国では龍語(ドラゴンロアー)と言う言葉が使われているらしい。


 こうして考えると、前世の世界に有ったと言うバベルの塔の逸話以前の『全ての人類が共通の言語を話して居た世界』と言うのは絶対『吹かし』の類だろうと思えてしまった。


 まぁ所詮神話は神話で実話では無い……と思いたいが、死後の世界が実在し閻魔大王や永遠の氷河(コキュートス)と呼ばれる場所に封印された悪魔や魔王なんて物が居る事を知った今としては何処まで吹かしと思って良いのかと迷うのも事実だ。


 でも一神教の解く『全てを創造した唯一無二の全知全能なる神』は存在せず、多神教の神話に出てくる八百万の神々が世界を運営して居ると言う方が近い気がするが、世界そのものが無数に有る事を知って居る俺としては一神教の神が居ても不思議は無いとも思う。


 この辺を詳しく突っ込んで行く事が出来る程、神話や宗教に詳しい訳では無いし、そもそも俺はもう向こうの世界の住人では無く、此方の世界の……世界樹の神々とその傘下に居る天蓬大明神の氏子なのだから考えるだけ無駄な話だな。


「むぅ……足し蟹、個々の高房に炒る弟子は火元語が和歌ら無いで寿司ネ……ん、ん……では吾輩が我が工房を案内し其の後、君には階位認定試験を受けて貰う事としようか」


 俺が前世の世界の宗教に付いて思いを巡らせて居る間に、寅殿も折角学んだ火元語を使う機会が無くなったと言う事に対する葛藤から抜け出した様で、後半は北方大陸語に切り替えてそんな事を口にする。


「吾輩の弟子である智香子姫プリンゼッシン・チカコは以前試験を行い三つ星(ドライスターン)の認定は与えたが、その後も成長を続けて居るだろうし今では何処まで実力を伸ばしているか……とは言え階位認定は工匠(マイスター)の専任事項だからな君は受る事が出来て居ない筈だ」


 その言葉から三つ星とか工匠と言うのが錬玉術師の階位を示す言葉なのは理解出来るが、ソレがどれ位重い物なのかはしっかりと習って居ない今は想像する事すら出来やしない。


 何となく三つ星は前世の世界で出版されていた美食(グルメ)案内書(ガイドブック)の影響も有って凄いのだろうとは思うが、寅殿の口ぶりから察するにソレよりも上の階位は幾つも有りそうだ。


「ちなみに同じ寅殿の弟子で有る望奴(ぼうやっこ)はどの程度の階位なんですか?」


 望奴は義二郎兄上の奥さんが幼い頃から家臣として付き従って来た忠臣で、今では兄上の右腕として豹堂家を守り立てて居る智香子姉上の兄弟子で有る。


「ふむ……アレは此方に来てからも勤勉に修練を積んだからな、吾輩の持つ第三位(ドライ)(キーノ)|工匠の一つ下で第二位(ツヴァイ)王工匠まで認定を受けているぞ」


 とそう言う寅殿の説明に拠ると錬玉術師の階位は上から(エクストリーム)工匠、第三位王工匠、第二位王工匠、第一位(アイン)王工匠、三つ星、二つ星(ツヴァイスターン)一つ星(アインスターン)見習い(レーアリング)と成ってると言う。


 基本的に階位認定を受けて居ないが錬玉術をある程度使えると言う者は全員が見習いの階位に自動的に区分されるが、実際にどれ位の物を作る事が出来る技術が有るかを正式に認定する試験が錬金術師(アルケミスト)製造所(ファクトリー)では実施されて居るそうだ。


 ……免許が無けりゃ使っちゃいけないとかそう言う物では無いが、免状を貰う事でこの先錬玉術で作った霊薬の信用度が増すと考えれば、面倒な試験を受けるだけの意義は有るだろう。


 と言うか、お花さんは其の辺の事まで考えて俺を此処まで連れて来たのだと思うしな。


 俺の脳裏を『亀の甲より年の功』と言う言葉が過った直後に感じた背筋を通り抜ける様な寒気に、其の言葉を口にはせず只々黙って飲み込んだのだった。

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