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大江戸? 転生録 ~ファンタジー世界に生まれ変わったと思ったら、大名の子供!? え? 話が違わない? と思ったらやっぱりファンタジーだったで御座候~  作者: 鳳飛鳥
志七郎、南へ の巻

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千百八十九 志七郎、意識共有を学び重力魔法を見る事

 暫く焔羽姫の視界を借りて居ると空からの風景にも段々と慣れて来たのか、先程まで感じて居た恐怖感も徐々に薄れてきた。


 コレは彼女の飛行が極めて安定した物で有り、俺が西方大陸(フラウベア)へと留学して居る間に、仁一郎兄上の飼っている鷹達を師として真剣に飛ぶ訓練を続けて来た証拠の様で少し嬉しくも有る。


「ぴかぴ? ぴっかちゅんちゅん(あれじゃない? 真っ赤なでっかいのが居るわ)」


 と、共有した焔羽姫の聴覚を通して彼女の声が聞こえる……? 聞き耳頭巾を通した訳じゃないから、此の形で聞いた声を言葉に変換する事は出来ない筈なのに何故か何を言っているのか解るぞ?


 いや、コレは多分、聞き耳頭巾の様な希少(レア)な術具に頼らずとも、精霊魔法使いは言葉を操る事の出来ない霊獣や精霊の言う事を理解出来ると言うアレかも知れない。


 今迄も四煌戌や焔羽姫の言っている事は、聞き耳頭巾無しでも正確にでは無いが何となく理解する事は出来た。


 コレは古の契約に依って俺と彼等が魂の一部を共有して居るからこその物だが、こうして意識を共有する事でより正確に意思疎通が可能に成るらしい。


 とは言えお花さんは契約を交わして居る訳では無いウチの子達やゴリさん何かとも、普通に会話してるよな? 其れを考えると魂の共有が意思疎通の絶対条件と言う訳では無いと言う事なのだろう。


 まぁ其の辺は多分、俺が未だまだ未熟だからと言う事なんだろうが、どう言う原理で霊獣の言葉を理解するのかは未だ教えて貰って無いんだよなぁ。


 つか、お花さんって外つ国出身の森人(エルフ)の筈なのに、嫁に来てから猪山藩に順応しすぎたのか、思考方や行動方針が割と脳筋族なんだよな、授業中に出てくる言葉も理論的な事もしっかりと教えてくれるがその際にも何方かと言えば擬音に頼った表現が多い。


 向こうの世界の感覚で言うなら某球団の終身名誉監督の語録に近いと言えばなんと無く想像が付くだろうか?


 今は上手く行って居るけれども、焔羽姫との意識共有に関する説明も『ひゅーっとやってひょいって感じかしら?』等と言う極めて感覚的と言うか何と言うか、謎の言語に依る説明だったのだ。


 いやまぁ其れで理解出来てこうやって焔羽姫の視界を借りて、空から湖を見下ろす景色が見えているのだから、俺も立派な猪山人で有り脳筋族だって事なんだろうな。


 そんな事を考えながらも焔羽姫の氣で視力を強化して居るのと似たような視界の中を探して見ると、彼女が言う通り血の様に深い朱色の大きな魚が、湖の比較的浅い所を泳いで居る姿が有った。


「お花さん、それっぽいのが居ました。焔羽姫には其奴を中心に円軌道で飛んで貰ってます」


 透明度が高い事と焔羽姫の視力が人間の基準から見れば異様に良い事も有って、割と深い所に居る他の魚も見つける事が出来るが、それっぽい赤色の魚は他には見当たらない。


 普通の魚であれば同族が其れ相応に居なければ、繁殖も出来ないし一匹だけと言うのは絶滅種と言って間違い無い状態だが、異世界からの侵略者である魔物だとすれば、単騎で出現していても不思議とは言い切れないのだ。


 とは言え単純に岩場や水草の陰に隠れて居るだけという可能性も零では無いがね。


「焔羽姫は水に飛び込んでアレ捕まえるとか出来そうか?」


 お花さんと俺の霊獣達やゴリさんとの会話もそうだが、霊獣とのやり取りには必ず発声が必要に成る、魂の一部を共有して意識の一部も共有して居るのだから、言葉に出さずとも念話(テレパシー)の様な事も出来そうな物だが今の所そんな技術は無いらしい。


「ぴぴっぴ! ぴっかちゅちゅん!(濡れるの嫌! 私は水鳥の類じゃないわ!)」


 とは言え俺が口に出した言葉も焔羽姫の耳に届いた訳では無く、俺の聴覚で拾った言葉を意識共有で彼女に送りつけて居る訳だから、念話の一種と言えなくも無い……のか?


 此処へと転移する直前にお花さんが、自分にしか聞こえない様な口の中でモゴモゴと言っているだけの様な詠唱でも魔法を発動させる事が出来たのは、恐らく自分だけに聞こえた言葉を意識共有で霊獣か精霊に聞かせたからなのだろう。


「そりゃあの子は火と風の属性しか持たない鳥の霊獣なんだから、水属性の領域に突っ込む様な事が出来る訳無いじゃない。魚を捕る様な鳥は水の属性も持っている者よ」


 成る程……魔物に限らずこの世界の生物はその身に属性を宿して居る物だが、其れは生活様式とかそう言う物に左右されるのかも知れない。


「ちなみに魚を捕る猛禽の類である魚鷹は水中への突撃はせず、水面近くに居る魚を爪で捕まえる狩りをするけれども、属性的にはしっかり水が有るわよ」


 ……生活圏の問題と言うよりは食性の問題なのか?


 いやソレだと種族で属性が固定されて居るのは奇怪しく、個体差が有って然りと言う話にも成って来るし、恐らくはそうした属性ってのは生まれ持った物なのだろう。


 兎にも角にも捕獲はお花さんが手本を見せてくれると言う話だったし、素直に其の手並みを拝見して俺もソレを身に着ける事が出来る様に研鑽するとしなければな。


「見つけるのはちゃんと出来たみたいだし、約束通りお手本を見せて上げないとね。転移や時間系ばかりが時属性の魔法じゃ無いって事を教えて上げるわ」


 そう言うと彼女は召喚の為のしゅを口にする事無く、再び口の中でモゴモゴとした様子で呪文を編み上げる。


 精霊魔法を使う際の心得として、呪文は他人に理解出来る様にハッキリと現地の言葉で発音する様に指導を受けた覚えが有るのだが、ソレを彼女自身が守って無い。


 コレは恐らく俺の中途半端な能力で彼女が使った大魔法を其の儘真似する様な事をしない様にする為の配慮なのだとは思うが……逆に何て言ってるのかスゲー気になるんだよな。


牽引光線(トラクタービーム)


 しかし先程の転移とは違い、今回は最後に呪文を発動させる鍵と成る言葉はしっかりと口にした。


 コレも今迄見せて貰った呪文書(スペルブック)には乗っていない魔法だが、直前に聞いた言葉から察するに時属性が司るもう一つの方向性『重力』の類の魔法なのだろう。


 それにしても牽引光線って俺の記憶が確かならSFサイエンスフィクションの類で使われる用語の一つで、未確認飛行物体(UFO)が牛を攫う際に下から出る謎光線の事だった筈だ。


 他にも昔友人の家で少しだけ遊んだ虫型の敵と戦闘機で戦う電子遊戯(ゲーム)で、敵が放つ其れに捕まる事で残機一つが捕虜に成る……なんて物も有ったと思う。


「ぴか! ぴちゅちゅんちゅん!?(うわ! 何これ何々!?)


 そんな事を考えていると、共有して居る意識を通して焔羽姫の悲鳴が聞こえて来た。


 見上げると何故か彼女の足下から黒く輝く光線が湖の中へと照射され、其れが当たったであろう真っ赤な魚が湖の中から浮かび上がって来る所が目に入る。


「重力系の魔法の一つで、光線が当たった物を起点として指定した物体に引き寄せる魔法よ。今回はあの鳥ちゃんを起点にして魚を引き寄せる様に呪文を編んだの」


 光線を放つ魔法の時点で属性は時じゃなくて光なのでは? と思わなくも無いが、光属性では物を引き寄せる効果は有り得ないので、矢張りアレは時属性に依る重力操作の類なのだろう。


 ただ……あの『パロパロパロパロ』と謎の音が聞こえるのは何故なのだろうか?


 アレがもう少し重苦しい音ならば未だ何となく理解出来なくも無いが……其れに何処かで聞いた事が有る様な気がするんだがハッキリと思い出せない。


 俺が妙な既視感(デジャウ)に悩まされている間に、焔羽姫は自分よりも遥かに大きな鬼緋鯉(デモンカープ)を両足の爪で捕獲し、その重さに負けてよろよろと此方に向かって墜落して来るのだった。

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焔羽の土属性はどこに逝ったのだろうか
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