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大江戸? 転生録 ~ファンタジー世界に生まれ変わったと思ったら、大名の子供!? え? 話が違わない? と思ったらやっぱりファンタジーだったで御座候~  作者: 鳳飛鳥
志七郎、南へ の巻

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千百八十 志七郎、医療を講義し性犯罪を考える事

 どうして……こなた……? そんな言葉と共に脳裏を青髪の希少価値が高そうな少女が踊り狂う中、俺はノートPCに詰め込まれた百科事典から帳面(ノート)へと写した文章と簡単な絵を、白墨(チョーク)を使って黒板に書いて行く。


 事の発端は武光とお忠を叱りつけた後、万が一を考えて彼女を西方大陸(此方)での保護者であるお花さんの所へと連れて行き、妊娠していないかの確認を頼んだ事に有る。


「其れの何処がいけないの? 子孫繁栄は短命種の宿命だし、産めよ増やせよ地に満ちよ……は他所の世界の神様だったかが人間に授けた言葉らしいわよ?」


 と、普通に生きて居れば千年を軽く超える時を生きる事の出来る長命種故の大らかさか、彼女に取っては一年や二年妊娠が早かろうと遅かろうと然程の差は無いと言う認識だったのだ。


 其処に俺が幼年妊娠の危険性に付いて知る限りの知識をブッパした所、どうやら此の世界の医学では未だ妊娠の詳しい原理(メカニズム)は解明されていなかったらしく、毒属性魔法を医療転用する研究をして居る学長が『ナニソレ詳しく』とやって来てしまたのだ。


 俺が口を挟む間も無くあれよあれよと話はどんどん大きく成り、何時しか『東方の伝説に語られる産婆の叡智』とか『偉大なる錬玉術師に連なる医術』とか、変な題名が付けられた上で此の都市に住む産婆や医者なら誰でも受講出来る講演をする事に成っていた。


 ……前者は先ず間違い無くおミヤの事だろうし、後者は虎殿か? まぁ錬玉術と医術は切っても切れない関係に有る技術で、俺も齧る程度のには此の世界の医術も勉強しては居たが、真逆此処まで話が大きく成るとは思わなかったのだ。


 とは言え責任が重くなったからと投げ出すのは俺の趣味では無いし、いっその事若年妊娠の可能性を考えずに発する(ハッスル)しそうな、火元国から来た若い連中も強制受講する様にと条件を付けて其れを行う事にしたのである。


「と、言う訳で妊娠した女人(にょにん)は自分の身体の成長よりも胎児の成長を優先する様に出来ている為、未だ成長の余地が有る若い身体で孕んでしまうと其処で身体の成長が止まる恐れがあります。場合に依っては双方共倒れの可能性も()ではありません!」


 ある程度纏まった量を書き終えた所で教卓側へと振り返り、黒板を一度叩いて敢えて語気を強めた言葉でそう断言し危機感を煽った。


 どうも此方の世界では初潮が来た時点で子供が産める様に成ったと言う風に認識するのが当たり前で、若年妊娠の結果流産や死産、場合に依っては母子共に帰らぬ人と成っても『運が無かった』の一言で片付けてしまうのが一般的だったらしい。


 いやまぁある程度纏まった銭を持っている者で有れば錬玉術の産物である『即死で無けりゃ何とか成る霊薬』で本当に何とか成ってしまうし、地位も有る者ならば多少の銭の他に大量の功績点を神に捧げる事で奇跡を賜る事も比較的容易な世界である。


 そりゃ学問としての医術が前世(まえ)の世界に比べて発展してないのも、ある意味で当然と言えば当然の事だろう。


 前世の世界では江戸の頃にゃぁ海外では既に行われていた実用的な解剖学の研究が、此方の世界では殆ど……と言うか全くに近い程に発展しておらず、保健体育の教科書にも乗ってる程度の子宮の概略図を描いただけでも構内にどよめきが走ったのには驚いた。


「火元国では十四まで遊女見習いを禿と呼び、其処から新造と成っても未だ水揚げはされず、客を取る様に成るのは早くても二年後の十六に成ってからと、太祖家安公……此方の大陸では黒の魔導師の方が通りが良いかな? 彼が定めた法度と成っています」


 全うな見世ならば略々守られているであろう法度も、地方の宿場や湯処なんかに行くと守られていない事も有るらしいので、絶対と言う訳では無いが其れでも火元国では幼い娘と致す事の出来る楼閣と言うのは基本的に無い事に成っている。


 対して外つ国では其の辺が割と緩いらしく、国に依っては幼女の遊女は妊娠させる恐れが無くお家騒動にも繋がらない……と、貴族階級に人気が有る商売だったりする事も有ると言う。


 他人の趣味や嗜好をどうこう言うのは野暮だとは思うが……現実(リアル)の子供に手を出すのは許されない行為である。


 武光達に説教した通り初潮前であろうとも、初めての排卵と行為が被ってしまえば、御赤飯を待つ事無く妊娠すると言う可能性は零では無いし、若年妊娠の危険性は今語った事以外にも色々と有り得るのだ。


 同年代の子供同士の恋愛の結果そう言う行為に至ったと言うので有れば、未だギリギリ許せる範囲と言えなくも無いが、大の大人が私欲を満たす為に幼い子供を騙して行為に及んだと言うので有れば法の許す限りの厳罰に処すべきだと思う。


 ましてや其れが嫌がる相手を力尽くで押さえ付けて無理矢理……なんて事ならば、艪櫂の及ぶ限り追いかけ絶対犯人を豚箱に打ち込んでやると、未だお巡りさんの精神が抜けない俺としては思ってしまうのだ。


 無論相手が子供で無ければ同意の無い強姦(レイプ)が許されると言う訳では無い。


 俺が所属していた署の所轄では余り無かったが、其れでも他所から遠征して来た暴力団員(ヤクザ)が敵対組織の人間の情婦(イロ)を手籠めにした……なんて案件は時折有った。


 自分達で落とし前を付けなければ暴力団(ヤクザ)の面子的に係わる為、捜査四課(マル暴)がそうした事件に関わる事は余り無い事では有るが、警察を使って敵対組織に謀略を仕掛ける手段の一つとしては、稀に良くある話だったりもしたのだ。


 兎角、強姦と言う行為は殺人よりは刑が軽く設定されては居る物の、被害者の精神に及ぼす加害は殺人よりもずっと重いのでは無いかとすら思って居た。


 生まれ変わった今だから死後の世界は有るし、死んだ後に其の魂に染み込んだ罪は贖わなければ成らないと理解出来ているが、生前は死んだら全てが終わりだと思って居たので殺人は其処で終わりだが強姦は其の後の人生にずっと付き纏う酷い被害だと考えて居たのだ。


 強姦まで行かずとも痴漢だって酷い被害に遭えば心に傷を負い、一生そうした行為に対して心的外傷(トラウマ)を受け、結婚生活に支障が出る事も有ると聞いた事が有る。


 言っては悪いが其の場で全てが終わってしまう殺人よりも、性犯罪の方が後に引く分罪は重いと思ってすら居たのだが、性犯罪の量刑を殺人より重くすると証拠隠滅も含めてヤッたら殺すが最適解と成ってしまう為、どうしても差を付けなければ成らないのだそうだ。


 ……ちなみに此方の世界の江戸の法度だと、十四歳未満の子供を無理矢理手籠めにした場合には理由如何に拘らず死罪と成る。


 向こうの世界で殺人より罪を重くする訳には行かないと習った手前、死罪で良いのか? と思ったりもしたが、此方の世界の場合『殺人』が時と場合に依っては合法に成る辺り、法や倫理の感覚が丸っと違うので前世の法律感は余り当てにならなかったりするのだ。


 なお日本の法律では死刑は極刑とも言い換えられる様に最も重い刑罰だが、此方の世界では火炙りや磔と言った苦痛を伴う拷問刑が普通に存在して居る為、死刑が一番重い刑罰と言う訳では無い。


 其れに此方の世界だと魔物(モンスター)に依る強姦被害なんて物も有ったりするし、前世の世界と法や倫理的感覚は完全に別物として考えないと色々と問題が出るんだよなぁ……。


 しかしだからと言って身体の出来て居ない女の子を孕ませるのは、倫理観では無く医学的な面から絶対賛成する事は出来ない。


 最低でも満十三歳、基本的には十六歳、可能ならば二十歳まで待つべきだろう。


 向こうの世界でも十一歳で初子を産んで三十二歳までに十一人の子供を産んだなんて偉人も居るが、其れは飽く迄も例外中の例外で絶対に参考にしちゃ駄目な奴なのだ。


 俺はそんな使命感とも言える感状に突き動かされながら、ワン大人(ターレン)を始めとしたワイズマンシティの医者達に、若年妊娠の危険性を説き続けるのだった。

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