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大江戸? 転生録 ~ファンタジー世界に生まれ変わったと思ったら、大名の子供!? え? 話が違わない? と思ったらやっぱりファンタジーだったで御座候~  作者: 鳳飛鳥
志七郎、南へ の巻

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千百二十四 志七郎、痛みを快楽と感じ欲望に負けそうに成る事

 久々に出た外は容赦の無い草原(サバナ)の太陽が肌を焼く事すら心地良い。


 幸か不幸か寝込んで居た数日の間に、ガリガリに落ちた筋肉も何故か以前よりも発達した事で、機能回復運動(リハビリ)は最低限で済みそうに思えた。


 ……が、そう思ったのは早計だった、筋力の低下は気にする様な事も無かったのだが、身体の節々が思った以上に固まって居たのだ。


「此れは……股割りからやり直さなきゃ成らんな。お連、悪いが背中を押してくれないか?」


 武に携わる者として百八十度開脚をした上で上半身を前に倒して顔を地面に着ける『股割り』は出来て当然の事で有り、出来なければ武道家として恥だとすら言える。


 この辺の感覚は前世(まえ)の世界でも同じ様に考える者は割と多かったが、専門家と呼べる程の顧問が付いて居ない部活動なんかで武道をして居た者達はその辺を軽視する者も少なくなかった。


 個人的に言うならば武道に限らず蹴球(サッカー)でも野球でも、運動競技をするならば怪我の予防と言う側面から股割りが出来る程度の柔軟性を持つ事に損は無く、出来るならば無理やりでも伸ばして置くべきだと思う。


 なんなら学校の体育の時間の大半を徹底的に柔軟運動(ストレッチ)に回しても良いとすら思うのだ。


 ちなみに運動が苦手な者は総じて『身体が固い』事が多いが、身体の柔軟性と言う物は特定の疾患が無い限りは、時間を掛けて伸ばして行けば誰でも股割りをする事は不可能ではなかったりする。


 実際、相撲部屋に入門した若者は泣こうが喚こうがお構いなしに無理やり伸ばされて、誰でも股割りが出来る様にさせられると言う。


 ただ……その際に一気に遣り過ぎて腱が切れてしまう様な者も、昔は稀に居たとも聞いた覚えが有る。


「はい! お前様、ゆっくり行きますね」


 両足を伸ばして地面に座り背中を押して貰う所謂『前屈』をする際に注意しなければ成らないのは、勢いを付けてグッグッグッと言う様な感じで押しては行けないと言う事だ。


 ソレをすると非常に大きな圧力が骨と骨を繋ぐ軟骨である椎間板が潰れてはみ出てしまう『椎間板ヘルニア』の原因にも成る事が有る。


 其の為、正しい前屈に依る柔軟運動は少しずつ少しずつグーっと押し込んで行き、限界近い所まで来たら一度緩め、再びグーッと押し込んでいくのが良いと言う。


「あ、お連の腕力で押し込まれると怪我しそうな気がするから、少しずつ体重を掛ける感じで力じゃ無くて重さで押す様にしてくれ」


 幾ら幼い少女で許嫁であるお連に対してでも体重に関して言及するのは余り良い事では無いとは思ったが、彼女の並外れた腕力で背中を押されるとマジでヘルニア発症しそうな気がしたので仕方が無い事だったと思いたい。


「大丈夫です、国許でもお(はる)(ねぇ)さんやお雨ちゃんと稽古する時に必ずやってる事ですから、その辺の事は心得てます」


『武勇に優れし猪山の』と謳われるだけ有って、猪山藩は上は大名本人から下は水飲み百姓まで、ありとあらゆる者が武芸を学び武に依って鬼や妖怪を狩る事で、畑作以外の食料を手に入れて居る。


 特に自分の畑を持たず畑仕事で極々少量の小作料しか得る事の出来ない水飲み百姓と呼ばれる者達は、鬼切りに依る収入と食材の入手が無ければ日々の生活にすら困る事に成るだろう。


 ソレ故に大根(おおね)流の(しゅう)術に(れん)術と(そう)術の三流派は、百姓の武術と言われつつも大きく発展して来たのだろう。


 ちなみに大根流の槍術で使われる槍は武士が使う様な立派な物では無く、青竹の先を斜めに切っただけの所謂『竹槍』で有る。


 そして鎌も主に稲刈りに使う様な小さな鎌を使う為、当に百姓の為の武術と言って間違い無い物なのだ。


 そうした大根流でも股割りを含めた柔軟は当たり前に行われる事で有り、女性でも武を齧るのが当たり前の土地柄の為、猪山藩に身体の硬い者は一人も居ないとすら言われている。


 とは言えそうした武を尊ぶ藩は猪山以外にも多々有るが、町民階級にまで道場の門戸を開いて居る所は実の所然う然う多く無い。


 町人階級の鬼切り者として名を馳せた者の中には、何処かの流派の流れを汲む様な事無く完全な自己流で、大鬼や大妖と呼ばれる様なモノを仕留めた者も中には居るのだ。


 その様な一部の天才様とでも言うべき者も多くの場合は、俺達兄弟の様に産まれながらに神の加護を得て何らかの技術や技法を持っている者で、完全な我流で其処まで上り詰める者と言うのはやはり極々少数派と言える。


 そう言う意味では加護持ちでも無いのに自力で独自の弓術を編み出し、二つ名持ちにまで成った断狼義兄上は、本当の意味で天才の類なのだろう。


 そんな断狼義兄上も武光に短弓の稽古を付ける際には、欠かさず柔軟の類を行って居たのだから、彼の身体が硬いと言う事は無い筈だ。


「くっ……思ったより……身体が固まっている……()っ!?」


 前世から通して俺は柔軟の類は日常から欠かさない様にして居た為、身体が固まった後に伸ばす痛みと言うのは初めての経験だった。


 けれもど此れは……うん、悪く無い、痛いは痛いのだが傷を作った時の様な焼ける様な痛みとは違い、痛いのが気持ち良いと言うかなんと言うか。


 少なくとも前世の俺は被虐嗜好(マゾヒズム)の類は無く、強いて言えば加虐嗜好(サディズム)の方が強かったと思うのだが此の痛みは悪く無い。


 ……お連が俺に与えている痛みだから心地良いと感じるのか、其れ共そもそも柔軟体操で伸びる痛みと言う物自体が心地よい物なのか、ソレは解らないが少しずつ身体が柔軟性を取り戻して行く感覚は決して悪い物では無かった。


 ただ全く問題が無かったと言う訳でも無い、お連が体重を掛けて背中を押す時に掌だけで無く、俺の背中に身体全体が覆いかぶさる様な姿勢で押してくる物だから、彼女の体温が着物越しに感じられ、今まで感じる事の無かった妙な気不味さが胸の中に湧いてきたのだ。


 今は未だ息子さんが完全に元気を取り戻して居ないから、ただ単純に気不味い程度で済んで居るが、今回の旅路で目的の物が全て手に入り息子さんが健康を取り戻したら、今までの様に彼女と同衾するのは不味いのではなかろうか?


 二十歳(はたち)に成るまで子供が出来る様な事はしないと彼女に対して押し切ったが、未だまだ幼い子供である彼女の体温にすらドギマギし始めた此の身体に宿る煩悩(本能)が暴走する方が早い可能性も零では無いぞ?


 前世の親友(ポン吉)の様に二次元の女児(ロリ)を愛好し性愛を抱くだけならば、褒められた事でこそ無いが被害者となる者も居らず、問題にする必要性は感じない。


 けれども現実(リアル)の女児に対してそうした欲望を抱き、実行に移す様な真似は絶対に許す事の出来ない罪だ。


 百歩譲って同年代の子供同士が恋愛感情の末にそう言う行為に至ったと言うであれば、ソレを罪だとは言い切れないとも思うが、だからと言って責任も取れない子供が子供を作る行為を容認する訳では無い。


 医学が進歩した向こうの世界でも、妊娠出産に伴う危険性(リスク)は決して低い物では無く、子供を産むと言うのは命懸けの行為だったのだ。


 猪山藩(ウチ)には反則(チート)級の実力を持つ産婆であるおミヤが居るとは言え、危険性は少しでも少ない方が良いに決まっている。


 ……でも、背中に感じる温もりと柔らかさに負けてしまいそうに成る自分が居るのも事実として認めなければ成らないだろう。


 ましてや此れから先、息子さんが元気を取り戻した頃には、俺の身体は自慰を覚えた猿の様に欲望が溢れて止まない思春期を迎える頃に成るのだ。


 そんな状態に成った時『何時でも食べて♥』と言わんばかりの状態でゴロニャンと擦り寄って来られたら、果たして前世にハニトラさん達を袖にした様に耐えきる事が出来るだろうか?


 此れは妥協点を探すしか無い、絶対に譲れない一線は彼女を二十歳に成るまで妊娠させないと言う事だ。


 ……と言う事は、避妊さえちゃんとして居るのであれば、仲良く(・・・)しても問題無いとも言えるのでは無いだろうか?


 うん、次に紗蘭と連絡が取れた時には、向こうの世界から護謨(ゴム)製品を可能な限り輸入して貰おう……背中に掛かる暖かく柔らかで心地よい重みに身体を伸ばされながら、俺はそんな事を決意したのだった。

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