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大江戸? 転生録 ~ファンタジー世界に生まれ変わったと思ったら、大名の子供!? え? 話が違わない? と思ったらやっぱりファンタジーだったで御座候~  作者: 鳳飛鳥
志七郎、南へ の巻

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千百二十三 志七郎、床払いし若年妊娠の危険を説く事

 それから更に二日が経った頃、俺の身体は急速な成長は終えた様で、異様なまでの空腹感と眠気からは開放されたので、床払いをして機能回復運動(リハビリ)に取り組む事と成った。


 幸か不幸か俺の身体は妖怪食っちゃ寝と化した状態だったにも拘わらず、何故か余計な贅肉が付く様な事は無く、筋力強化訓練(トレ)もして居ないのに全身の筋肉が以前よりも厚みを増し、骨格も子供のソレから大人の男に成りかけのソレへと変わっている。


 お陰で立ち上がるのにも難渋する様な事は無く、機能回復運動なんか必要無いんじゃ無いだろうか? と思わせる程には好調だ。


 ただ問題は俺の体格が数日の間に割と大きく変わってしまった事で、武具の類の多くが其の儘では使えない状態に成ってしまった事だろう。


 着物に関しては元々成長に合わせて端折って有った部分を解いて縫い直す事で、対応出来る様に成っていた為に然程問題は無い。


 何せお連が国許に居た頃に針仕事はしっかりと母親から習って居たそうで、彼女が一旦俺の着物も袴も解いて反物戻して洗ってから、改めて俺の今の体格に合わせて繕い直してくれたのだ。


「料理に洗濯、裁縫と……お連は良いお嫁さんになるな」


 出来上がった着物に袖を通した時に、思わずそんな言葉を彼女に投げかけたのだが、俺の許嫁なのだからその夫になるのは当然俺だ。


 そんな簡単な事すら思い至らずに口に出した言葉は、前世(まえ)の世界の職場ならば性的嫌がらせセクシャルハラスメントとして訴えられる可能性も十分に有る物だと言ってから自覚し顔から血の気が引くのを感じた。


(つらね)はお前様の御役に立てるだけでも幸せなんです! 此れからも頑張って良いお嫁さんになるので期待していて下さい! そしてお前様が元気になられたなら、早目に稚児ややこを授けて欲しいです!」


 対してお連は顔を真赤に染め上げてそんな言葉を口走る。


「や、稚児って……流石に未だ未だ早いだろうよ! 今の俺達じゃぁ子供が子供を育てる様な物だ! ソレに若すぎる妊娠は母親の身体に負担が掛かり過ぎるんだ。最低でもお連が二十歳位になるまでは駄目だ」


 未だ息子さんも金の玉も完全に回復して居ないから、そうした欲求が湧かないと言うのも有るが、ソレ以上に前世に培った大人の男としての倫理観と聞きかじった程度の医学の知識が有るが故に、俺は若すぎる妊娠に対して強い忌避感を覚えて居た。


「そんな……月の物さえ来れば稚児は孕めます! 『嫁して三年、子なきは去れ』とも言います! 二十歳過ぎたら行かず後家ですよ! お前様は連に他所様から後ろ指指されるのが良いと言うのですか!?」


 お? お連がとうとう俺に反抗してくれた! 内容は兎も角、俺に盲従する様な態度が多かった彼女が、自分の意見を押し通そうとするのは良い傾向と言えるかもしれない。


「何やら面白い話をしておられるますな、志七郎殿。確かに母親が初潮間もなく妊娠した場合には難産が多いとは聞きますな。残念ながら私はお産に携わる事の余り無い医者故に、実際の経験談としてソレを語る事は出来ませぬがね」


 前世の世界の医者の世界は良く知らないが、TVなんかの演劇(ドラマ)を見るに、医師免許を取ったなら研修医として内科だの外科だの色んな科を体験した後に、其々の分野の専門医として独立して行くと言う制度だった様に思う。


 けれども此方の世界の医者と言うのは、個々の得意不得意は有れど専門医と言う概念は無く、請われれば取り敢えずどんな症状でも診るのだそうだ。


 その上でどの様な霊薬が効くのか、或いは霊薬に頼らず生薬の類で治療するのか……と言う様な判断を下すのだと言う。


 そして前世の世界では当たり前に存在して居た産婦人科と言うのは、医者の領分では無く産婆……向こうの世界で言う所の助産師の領域なのだそうだ。


 勿論、医者が出産に関して何もしないと言う訳では無い、妊婦さんの経過観察や体調不良の治療等の診察は、当然産婆では無く医者が行う事で、医者と産婆は二人三脚で妊婦さんを助けるのである。


 とは言え上記した通り得意不得意と言う物は当然有って、ワン大人(ターレン)の得意分野は裂傷の縫合や骨折の際の骨接と言った、前世の世界で言う外科方面で有り、出産に携わったのは自身の嫁御の時だけなのだと言う。


「とは言え二十歳まで待てと言うのは流石に常識から外れた話では有るな。身体の成長は男児(おのご)よりも女児(おんなご)の方が早い事が多い、男児が十五で成人ならば女児もその頃には身体は出来上がって居ると見て良いのでは無いか?」


 ……確かに男性と女性では心と身体の成長時期に差が有ると言うのは事実だし、前世の日本でもソレを考慮に入れての事だったのか、少なくとも俺の生前は民法の規定で結婚出来る年齢が男子十八女子十六と差が設けられて居た。


 男女平等の観点から見てどうなんだソレは……と言う様な議論が成されてい事も覚えては居るが、実際問題として女性が妊娠出産に適応する年齢と言うのは遅くとも三十五まで……と言う話だった筈だ。


 とは言え若年出産は子宮や骨盤がしっかりと成長して無い状態で有る事が多く、全体的な危険性(リスク)は高いのだ、と性質(タチ)の悪い暴力団員(ヤクザ)売春(ウリ)させられていた女子中高生を保護した際に、少年犯罪対策課に居た同僚に聞いた覚えも有る。


『酒と煙草は二十歳から』と言うのも身体が出来上がって居ない状態で其れ等の物を接種すると、成長が阻害される恐れが有る……と言うのが主だった理由とされて居た訳だし、やはり二十歳が身体の成長と言う点では一種の境界線(ボーダーライン)なのだと思うのだ。


「……うん、やはり子供はお連が二十歳になるまで駄目だ。母親の身体が出来上がる前に子供が出来てしまうと、母親の成長よりも子供の成長を身体が優先してしまう為に、出産に伴う危険性が高くなるんだ。子供とお連を守る為の判断なんだ聞き分けてくれ」


 火元国でも外つ国でも此方の世界では概ね男女共に十五歳が元服、即ち成人として認められる年齢で有り、ソレを過ぎたら世帯を持っても構わないとするのが普通だ。


 けれども考えて見て欲しい、十五歳と言ったら向こうの世界じゃぁ中学三年生、高校に進学すらしては居ない。


 前世の俺もそうだったが、高校に入った時点で身体が出来て居るかと言えば、大半の者はそうではなく、高校に入ってから一気に背が伸びるなんて者も決して少なくは無かった。


 そしてそれはソレは成長期が男子よりも早くに来ると言う女子にだって言える事でも有る。


 二十歳を過ぎた時点で絶対に成長が止まると言う訳では無いし、成長期が早い者や逆に遅れて来る者も居るには居る、実際大学生に成ってからも暫く身長が伸びて居たと言う友人も居たしな。


 とは言えそうした個人差を正確に見極める様な手段が無い以上は、二十歳と言う境界線で区切るのが合理的な判断と言う物だろう。


「でもでもお前様、多分今頃はお忠ちゃんが武光様と色々な事をして居る頃だと思いますよ? お忠ちゃんが『くノ一の術の教本』で勉強して実践してみるって言ってましたし……」


 お連にとってお忠と(ラム)は国許に居る熊爪姉妹に続く親しい同性の友人である。


 そんな彼女達が先に一線を越える様な事をして居ると知れば、お連が焦る気持ちになるのも無理の無い話と言えるかもしれない。


「……他所は他所、家は家と言いたいが、武光相手じゃぁ他所とまでは言い切れんな。取り敢えずもしも子供が出来る様な遊びを彼奴がして居る様ならきっちり躾ける。さっきも言ったが早過ぎる妊娠で不利益を被るのは間違い無く母体となる女性だからな」


 何処の独逸(ドイツ)阿蘭陀(オランダ)か知らないが、子供にエロ本与えて余計な好奇心を煽る様な真似は絶対しちゃ行けない。


 流石に十八歳になるまでそうした情報に絶対触れるなとまでは言わないし、寧ろ思春期の頃にそうした物に興味を持たない方が不健全だし不健康だとは思うが、最低限避妊だけは絶対にしなけりゃ成らん。


 ……生涯童貞だった俺に言わせるな馬鹿野郎と思わなくも無いが、大人の心と経験を持つ者として、武光の奴が一線を超えて居たならば取り敢えず一発殴ると堅く固く硬く心に決めたのだった。

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