表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大江戸? 転生録 ~ファンタジー世界に生まれ変わったと思ったら、大名の子供!? え? 話が違わない? と思ったらやっぱりファンタジーだったで御座候~  作者: 鳳飛鳥
志七郎、南へ の巻

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1123/1256

千百二十一 志七郎、成長と性徴を感じ衰えを嘆く事

 夢を見ていた……夢の中の俺は信三郎兄上としてお妾さんに成った女鬼達と戦ったり、義二郎兄上として瞳義姉上と船旅をしたり、仁一朗兄上として遊郭と思しき場所で酒を飲んだり、前世の友人達として若い女性と付き合ったり、とそんな都合の良い夢だ。


 そんな夢の中で本の一瞬だけ断狼(たつろう)義兄上と睦姉上や、武光とお忠の姿も見た気がするが『倫』と言う文字が物凄い勢いで飛んできて、視界を遮り次の瞬間には彼等の姿は無かったのはどう言う心理的理由なのだろうか?


 まぁ兎角、前世(まえ)に特捜に出向してた頃、仕事が忙し過ぎて自家発電の時間も取れなかった時代、偶に見ては汚れた下着の感触に死にたく成った時以来の淫夢だった。


 生まれ変わってからそうした夢を見る事は無かったのは、身体が幼かったが故にそうした欲求が無いのだとばかり思っていたのだが、どうやら息子さんが不健康だったが故にそうした煩悩が産まれなかったと言うのが真相っぽい。


 どうやら俺が飲んだあの高良(コーラ)らしき薬湯は、此の身体に変化を齎し今まで抱く事の無かった劣情と言う名の欲望を蘇らせたらしい。


「ん……、アレ……俺は……」


 十八歳未満の者には見せる事の出来ない永い夢から解き放たれ、意識が現実へと戻って来た事を感じた俺は、激しく空腹を訴える腹の虫に辟易しつつそんな声を上げながら目を開けた。


「おお、少年! 目が覚めたか! 三日も意識を失ったままだったからな……薬を差し入れたウポポ族の族長が密林(ジャングル)の救世主に毒を盛ったのかと密林中が大騒ぎに成っているぞ」


 そう言いながら俺の顔を覗き込んで来たのは、ワン大人(ターレン)の厳つい顔だった。


「身体の反応を見れば死亡確認は出来ず、毒を盛られたと言う線は無い事は解って居たが……強すぎる薬は時に毒と紙一重だからな、無事に戻って来て本当に良かった」


 そんな言葉から始まったワン大人の説明に依ると、俺が飲んだ高良と思わしき薬湯は、ウポポ族の集落(コミュニティ)よりも更に南に行った未開拓地域最深部とでも言うべき辺りに生息するスパイスガゼルと言う魔物(モンスター)の角を煎じた物だと言う。


 スパイスガゼルの角はその名の通り、様々な香辛料スパイスを凝縮した様な物で有り、其れを削るだけで味わい深いスパイスミックスの様な物になるのだそうだ。


 其れにレモネードアントの檸檬状の胴体を加えて煮出し砂糖をたっぷり加えたシロップを、炭酸水で割った物があの高良の正体で、滋養強壮、精力充実、肉体疲労時の栄養補給と言った用途に用いる事の出来る秘伝の霊薬だったらしい。


「効果が出ている事は君の身体を診察していて直ぐに解ったよ。あけすけに言って君の逸物は同年代の少年の其れと比べて余りにも矮小過ぎたのが、此の三日の間で年相応の其れに一気に成長したのだからね」


 相手が医者とは言え己の息子さんに付いて真面目に考察されるのは一寸どころでは無く恥ずかしいが、本来ならば性徴期に入る前でも身体の成長に合わせて徐々に成長していた筈の其れが俺の場合は幼児の儘で止まって居た様な状態だったと言う。


 更に言うとその奥に有る陰嚢や玉も未成熟で、恐らく其の儘放置して居た場合には去勢された者の様に、成長期に入っても男らしい身体付きには成らず、身長も小さな儘だったと予想される状態だったのだそうだ。


 けれども族長が調合した霊薬の効果がしっかりと出た結果、俺の息子と玉は年相応と言って良い状態にまで一気に回復したらしい。


「まぁ取り敢えず目が覚めたなら、腹に何か入れるべきだな。私が普段持ち歩いて居る点滴用の薬剤では脱水で死ぬ事は避けられても、栄養補給と言う観点から見れば無に等しいからな」


 ワン大人は何時どんな患者と出会っても良い様に、様々な薬や霊薬を常備して居り、その中には蒸留水に添加するだけで、直ぐに使える点滴の素とでも言うべき物も有るのだそうだ。


 人間は余程栄養状態が悪いとかで無ければ、一ヶ月位食事を取らなくても餓死する事は無いが、水分の接種を怠ると一日だけでも重篤な障害を負う可能性が有り、二三日で乾いて死ぬ事になると言う。


 前世の世界でも点滴と言う技術が産まれるまでは、意識が戻らないと言う事は即ち『乾いて死ぬ』と言うのと同義だった……と言う様な話を何処かで聞いた事が有る、そう言う意味でワン大人が居てくれて本当に良かった。


 逆に言えばウポポ族の長老はワン大人が居なければ俺を殺して居た可能性も無きにしも非ず……か?


 恐らくはウポポ族の長老も此処まで劇的な効果が出るとは想像もして居なかったのだろう。


 此れは俺の予想に過ぎないが、多分此の身体は思っていた以上に良くない状態で、其れを早急に回復させる効果の有る薬湯を不用意に飲んでしまったが故に、一気に息子さんが有るべき姿を取り戻してしまった……と言った所だろうか?


 多分、此の霊薬はもっと状態の良い者が飲んだのであれば、三日も意識不明になる様な事も無く、単純に息子さんがギンギンにハッスルするだけで済んだのではないかと思う。


「まぁ……結果オーライって言葉も有るし、多分良かったんだ……よな?」


 火元国とは制度が違うにせよ、ワイズマンシティでも医師免許に関する法律は存在し、ワン大人は東方(龍鳳)大陸の物と合わせて二つの其れを有していると言う。


 そんな彼の見立てで年相応まで成長したと言うのであれば、今回の俺の旅の目的は完遂したと思って良い、そう思ったのだが……


「先ずは食事だ、粥を作って来よう。其れを食ったらもう少し休むが良い。どうやら件の霊薬は君の身体を作り変えるのに割と無茶をした様だからな、今の君は流石に健康とは言い難い状態に成っている。次の食材でも同じ様な状態に成らないと良いのだが……」


 どうやら俺の息子さんは成長しただけで性徴を迎えるには、未だまだ必要な栄養が足りていないらしい。


 しかもたった三日寝込んで居ただけ……と言うには、少々所では無く身体も衰えて居るそうな。


 言われて自身の身体を見下ろして見れば、しっかりと筋肉が付いた上で薄っすらと脂肪が乗っていた筈の胸から腹に掛けての線が薄くなり、肋骨の凹凸がはっきりと見える状態に成っている。


 腕の方も子供の身体に有るまじき力瘤がはっきり出る程に鍛えられて居た筈其れが、枯れ枝の様……と言うと言い過ぎだが、間違い無く剣士のソレでは無く室内(インドア)派の電子遊戯(ゲーム)小僧並の貧弱さまで衰えて居た。


 どうやら霊薬の効果で息子さんと玉々が人並みまで成長するのに必要な栄養は、あの時に食った食事だけでは足りず身体中の筋肉と脂肪を削って捻出したと言う事なのだろう。


 ……此れ鍛え直すの割と大変なんじゃぁ無いか? いや先ずは機能回復運動(リハビリ)からか?


 前世は機能回復運動が必要になる程の怪我や病気をした事は無いからなぁ……辛い物とは聞くが何れ程の物なのか?


「事故とは言え族長殿が処方した薬湯を飲んだ結果なのだ、君が完全に回復するまで此の集落に滞在させて貰う事位は出来るだろう。その間に私とテツ殿とウポポの戦士達でガララアイを討伐して来ると言う選択肢も有るしな」


 武具に使う訳では無いので、必ずしも自分の手で討伐しなければ成らない理由は無いが、やはり他人(ひと)任せにすると言うのは性分では無い。


「いや、やっぱり自分に必要な物は自分の手で手に入れたい。其れに武道家で有り医師でも有るワン大人なら、俺に必要で効率的な機能回復運動のメニューを組む事も出来るでしょう?」


 と、俺が言うとワン大人は


「加えて料理人としての側面も私は持ち合わせて居るが故に、君を回復させる為に効率の良い食事も用意出来る。ついでだから君の許嫁に湖沼瀟湘拳だけで無く、瀟湘料理に付いても手解きして上げよう。その見返りは錬玉術で作られる霊薬の調合法(レシピ)を所望する」


 ニヤリと笑いながらそんな言葉を返したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 子供の志七郎本人が普通なら新鮮に見える出来事が、大人の志七郎からの知識で理解してしまった事での性への積極性の欠如によって起きてた身体の問題がこれで治ったのかな? [気になる点] と言うか、…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ