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大江戸? 転生録 ~ファンタジー世界に生まれ変わったと思ったら、大名の子供!? え? 話が違わない? と思ったらやっぱりファンタジーだったで御座候~  作者: 鳳飛鳥
博打と娯楽と享楽の都 の巻

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千四十二 志七郎、歌劇を観覧し歴史を知る事

 俺達が今来ている黄金真珠(ゴールデンパール)劇場(シアター)はニューマカロニア公国で最も古くから有る劇場で、此処の開設者こそが『世界一の娯楽都市』を目指して観光産業に力を入れた三代目ニューマカロニア公爵ペンネ四世だと言う。


 三代目なのに四世なのは南方大陸(カシュトリス)に有る本国に当たる神聖マカロニア王国に過去三人のペンネの名を持つ王が居たからだそうだ。


 んで此処からが割と面倒臭い話なんだが、此方でペンネ四世を名乗った後にも本国にペンネの名を持つ王が即位する事が有り、其方は其方で四世五世と名乗った物だから単純にペンネ◯世と言った場合に何方を指すのか混乱が生じたらしい。


 勿論他所の国からは自分達には全然関係の無い内輪揉め程度の話にしか見えないのだが、本人達や国交を持つ国は過去の偉人の言葉を引用する時に『ペンネ◯世』と言うと『どっちの』と言う事を一々説明しなければ成らないと言う面倒臭さが有ると言う。


 とは言え本国の四世が可也凡庸な王でしか無かったのに対して、此方の四世は数々の歌劇や名曲を残した『作曲家』で有り、此の劇場だけで無く賭場(カジノ)闘技場(コロシアム)に歓楽街を整備したりと大きな功績を上げた名君として知られている。


 其の為、本国でもペンネ四世に限っては態々注釈を入れずとも此方の四世を指していると言わしめる程だ……と、目の前で演じられて居る歌劇で謳われて居た。


 どうやら此処の劇場で行われている公演(ショー)は先程見たフレンチカンカンの様に性的な物だけで無く、スタンダップコメディと呼ばれる様な話芸から始まり、踊り(ダンス)に続いて今見ている歌劇……多分ミュージカル? と続いている。


 残念ながら前世(まえ)の俺の趣味に観劇は無かった為、歌劇と言ってもオペラとミュージカルの違いも禄に解らないが、学校の授業で見たオペラとは趣が違う様に思えるので、恐らくコレはミュージカルなんだと思う。


 兎角、劇を見る限り先程のフレンチカンカンは曲も踊りもペンネ四世の作品がそのまま今でも使われていると言う話なので、恐らく彼は向こうの世界から来た転生者の類だったのでは無かろうか?


 じゃなけりゃあんな前世に聞いた事の有る曲が、此方の世界でもそのまんま演奏されているとか有り得る訳が無いと思うんだよなー。


「「「うぉぉぉおおお!」」」


 と、そんな事考えながらペンネ四世の伝記とでも言うべき劇を鑑賞して居ると、只でさえ暗い灯火がフッと消され辺りが真っ暗に成り、その一瞬後には舞台の上を照らす集中光(スポットライト)が上から注がれる。


 多分アレは精霊魔法では無く錬玉術で作られた術具に依る光で、常時使用する事が出来る程安い物では無いのだろう、故に見せ場でのみ使われる……と。


 そんな光に照らされた舞台ではペンネ四世に嫁いで来た本国の貴族の娘が『本当に私の妻に成ると言うならば、その美しい肢体で観客を沸かせて見せろ』と言う台詞を受ける形で、歌いながら身に着けている衣装を脱いでいく……と言う場面が演じられて居た。


 うん、コレ完全に性風俗関連特殊営業劇場ストリップショーですよね、先程のフレンチカンカンが見えそうで見えない所謂『チラリズム』で魅せて居たのに対して、今度は少しずつ確実に脱いで居るのに肝心(クリティカル)な部分は見せない絶妙な技術で魅せて居るのだろう。


 前世の健康な大人の身体ならば俺も他の男性客に混じって興奮の声を上げる事が出来たんだろうけど、欠片もそ~言う欲求が湧いて来ないのが逆に辛い……。


 いや、女優さんは美人なんだよ? 米国西海岸側で作られた超大作映画に出てくる向こうの女優さんと比べても、全く見劣りのしない(レベル)容姿(ルックス)で、出る所は出て引っ込んでる所は引っ込んでる見事な体型(ボディ)をして居る。


 小学校や中学校にあんな先生が居たならば、大体の男子は同級生に目を向ける事が無く成るだろうとか、(ピー)TA辺りから『子供の性教育に良くない』とか意見(クレーム)が来ても可笑しくない感じの人だ。


 ……此れを見て武光が妙な方向に性的嗜好を歪ませなけりゃ良いが。


 そんな俺の心配を他所に舞台の上では更にその女優さんが露出度を上げ、最後の一枚……女性の神秘を隠す小さな布切れを固定する横の紐をゆっくりと引き去り、ソレが落ちそうに成った瞬間……再び明かりが落ちる。


「「「おおおぉぉぉぉ」」」


 悲嘆と落胆に塗れた男達の声と共に、先程とは違いゆっくりと灯火に再び火が入れられ、舞台が仄かに暗い明かりに照らし出されると、女優さんは元通り衣装を身に纏った姿で再度歌い出した。


 何ていうか、こう……男の心を解った上で焦らす様な演出だが、多分此れは前世の友人(ポン吉)が言って居たエロゲーの法則と言う奴なのだと思う。


 性的なご褒美を用意した電子遊戯(ゲーム)に置いて、遊戯部分は遊戯者(プレイヤー)圧力(ストレス)を与える為の物で、溜まった分だけご褒美に辿り着いた時の快感は大きく成る物だと言う。


 恐らくは此の劇場でご褒美は与えず、続きは娼館に行ってからね? と言う事なんじゃないかと思われる。


 実際火元国(ウチ)の連中も『此の滾ったモノをどう発散してくれよう』と言わんばかりの、すんごい表情(かお)をして居る者が大半だ。


 流石に未だ身体が御子様な武光の奴は其処まででは無い様だが、興奮の色を隠せない状態なのに変わりは無い。


 向こうの世界でも都内に有った性風俗関連特殊営業劇場では、館内での自慰行為は禁止されており、踊りを見て滾らせた後は近場の性風俗関連特殊営業の浴場に行くと言うのが定番だと聞いた覚えが有る。


 残念ながら俺の居た千薔薇木県にはそうした劇場は無かったし、都内まで行ってそうした見世物を見る趣味も無かったので、実体験として其れ等を経験した事は無いが、その辺の取締や立ち入りをした事が有ると言う警視庁の刑事(デカ)から聞いたのはそんな流れだった。


「芸神ミューズよ! 愛神ウェヌスよ! 我が舞と愛を照覧召されたか! 我が夫に神託を齎し給え!」


 舞台の方は丁度此処が山場(クライマックス)の様で、その肌を観衆の目に晒す事で自身の愛の証明を立てたヒロインが神々にソレが真実の愛だとペンネ四世に伝える様に懇願すると言う場面(シーン)だ。


 後から聞いた話だが此の街には小規模な物ながら舞台の上で名を挙げられた二神と博神キュリーの三神殿が存在しており、其れ等の神に仕える聖歌使いが常駐して居ると言う事なので、ワイズマンシティよりは此処の方が神々には近いと言えるだろう。


 ちなみに芸神ミューズは歌や踊りに音楽を司る神様で、愛神ウェヌスは恋愛成就や婚姻の守り神であると同時に娼婦達の守り神と言う側面も有るそうだ。


 そして博神キュリーはその名の通り賭博の守り神では有るが、彼女に祈っても勝ちを掴めると言う訳では無く、如何様に引っ掛からなく成ると言うのがその御加護だと言う、そう言う意味では公平な博打を守る神と言えるだろう。


 そんな訳で劇場と繁華街と博打で潤う此の街で、祀られるべき神々が綺麗に揃って居ると言う事の様だ。


 舞台の方はペンネ四世役の男優に先程の集中光が浴びせられる事で神の声を聞いたと言う演出が為され、二人が無事結ばれた事を祝福する歌をソレまでに出てきた全ての俳優が揃って大合唱をすると言う形で終焉(フィナーレ)を迎え劇場が拍手の渦に包まれる。


「いやぁ、火元国の芝居とは趣が違うが外つ国の芝居も中々に面白い物に御座るなぁ」


 客席に深く腰掛け軽く前屈みの姿勢のまま、そんな事を言って舞台を称賛する塩沢殿。


「然り然り、しかし外つ国では斯様な過激な演出まで許されているのか。まぁ火元国でも見世物小屋なんかに行けばもっと過激な物は見れるけど、此処は公爵家の直営ですよね? 開明的と言うか、は……何と言うか」


 恐らくは恥知らずと言おうとして、相手が火元国で言う所の公家それも可也上の官位を持つ者と対等の立場だと思いだしてその言葉を飲み込んだのは御前崎殿だ。


「まぁペンネ四世は此の国を軌道に乗せた偉人なのは間違い無いけれど、天才的な芸術家に有り勝ちな奇人変人の類だった事も又事実だからねぇ。此の劇は可也美化されているけれど本人の著書なんかを読むとクラクラするわよ本当に」


 そんな二人の言葉に微苦笑と共に身も蓋も無い言葉を返すお花さん、流石に長命種の彼女も本人に会った事は無いらしいが、その生き様を書物なんかで知る機会は有った様で、此の演劇を美化した物と断言する。


 しかしソレは俺達火元国の者達以外には殆ど常識と言って良い事柄だったらしく、彼女の言葉に頷く者の姿は有れど、否定の言葉は近くの席から一言も上がる事は無いのだった。

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