食べますか? 食べませんか?
ここは闘技場。
男たちが互いに筋肉を震わせ、戦う場所だ。
勝者は大量の賞金をもらえ、敗者は死、あるのみ。
観客はいつも満員御礼。もうすぐ筋肉ダルマのカミアと新人ミリトンの試合が始まる。
試合前、ミリトンは怪しげな研究員に声をかけられた。
「いいかね? この結晶を食べれば君はカミアに殺されずに済む」
「本当ですか?」
「ああ。ちょっとばかり副作用はあるかもしれんが、君はこれを食べれば死なないぞ。食べるかね? 食べないかね?」
ミリトンは頷いてしまった。
闘技場で賞金を稼がないといけないし、勝てるのならなんでもする。
渡された結晶を飲み込むと全身から汗が噴き出してきた。
審判の一人が、ミリトンを呼びに来たが、非常にゆっくり動いているようにみえる。
審判に連れられ、闘技場に上がる。
カミアは筋肉の塊ともいうべき男で、睨まれただけで心の小さいものは対峙する勇気を無くしてしまうだろう。
対してミリトンは貧弱。なぜ闘技場にいるのかわからないくらい痩せぎすな男だ。
勝負開始の鐘がなった。
カミアはその体を活かし、こちらに突進してきた。
やはりゆっくりに見える。
カミアの頭に向かって拳をつき出すと、カミアはそのまま吹っ飛んでいった。
頭の原型を留めておらず、即死だろう。
「勝者、ミリトン!」
審判の声が聞こえ、闘技場を降りる。
次の試合のカードがもう組まれたようだ。
一度待機室に戻ると、また研究員が声をかけてきた。
「もうすぐ効果が切れるが、また食べるかね? 食べないかね?」
ミリトンは頷いた。
食べなければやられてしまう。
結晶を食べる時、手をみてみると、手の爪が全て結晶と同じ色に染まっていた。
ここからは連戦連勝だった。
勝つ度に、待機室に戻って研究員に結晶をもらった。
食べる度に体の何処かが結晶と同じ色になっていく。
賞金の総額も目標とする額まではもうすぐだ。
「本日最後の試合を始めます。期待の新人、ミリトン選手に対するは、未だ無敗、百連勝まで後一勝のマルケン選手だ!」
簡単な紹介の後、これまでと同じように勝負開始の鐘がなった。
マルケンもカミアと同じ筋肉ダルマだ。
だが、試合が始まっても構えをとるだけで仕掛けてこない。
じれったくなったので今出せる最大の速度でマルケンに近づき、攻撃を仕掛けた。
しかし、マルケンに受け止められてしまい腕を捕まれた。
腕に感覚がない。
奇妙に思って見てみると、腕がもげてしまった。
腕の内部は結晶がキラキラと光っている。
そこからは泥試合だった。
攻撃されるたび、ミリトンの体は文字通りすり減らされていく。
だが、マルケンはだんだんと体を軽くしていくミリトンの攻撃についていけず、ついに殺された。
「勝者、ミリトン!」
そう言って審判がミリトンの腕を掲げたが、もげてしまい、そのままミリトンは倒れてしまった。
救護室に連れて行かれ、妻と子が心配そうにミリトンを見てくる。
賞金もすべて、救護室に運び込まれた。
「パパ、大丈夫?」
ミリトンは子供の方を向こうとしたが、首が動いてくれない。
そのまま上を向きつつ話すことにした。
「おまえの治療費はパパが稼いだからな? あとはお医者様に任せるだけだ。お金さえあれば、お前は生きられる」
妻と子の泣いている声が聞こえてくるが、まぶたが重く、そのまま閉じた。
「心肺停止しました」
救護室の医者が、無情に告げる。
その瞬間扉が開いた。
ミリトンに結晶を渡した研究員だ。
「君はミリトンの子供だね? この結晶を食べさせればお父さんを助けられるかもしれないけど、食べさせる?食べさせない?」
ミリカンは電子素量の人だ・・・予測変換ェ・・・